ガンダム・アレックスゼロ、ですか
さてみなさん、待望のガンダムシリーズ最新作として『機動戦士ガンダムRG XARX―ZERO』が来年度放映される運びとなりました。
宇宙に進出した人類は、とある事故で地球を離れざるを得なくなり、一人の少年を中心に道の敵に立ち向かうといったストーリーで、その主人公アズミ・レイが駆るモビルスーツ・ガンダムアレックス・ゼロと、どこかファーストのオマージュっぽいネーミングかもしれないけれど。
ともかくもこの新しいガンダムにもひとまずの期待を持ちたいとは思いますが。
さてみなさん、待望のガンダムシリーズ最新作として『機動戦士ガンダムRG XARX―ZERO』が来年度放映される運びとなりました。
宇宙に進出した人類は、とある事故で地球を離れざるを得なくなり、一人の少年を中心に道の敵に立ち向かうといったストーリーで、その主人公アズミ・レイが駆るモビルスーツ・ガンダムアレックス・ゼロと、どこかファーストのオマージュっぽいネーミングかもしれないけれど。
ともかくもこの新しいガンダムにもひとまずの期待を持ちたいとは思いますが。
さてみなさん、おなじみ機動戦士ガンダムをはじめとするガンダムシリーズが50周年を向けてのプロモートを展開するにあたり、まさに親子二代、ともすれば親子三代に連なるファンとの関わりともいえるプロジェクトともいえましょう。
そこでとある父親がかつてのファーストからV(ビクトリー)、Gから∀、SEEDからジークアクスと連綿と連なるシリーズを、今子供たちと一緒に見守るといったストーリーでプロモーションアニメが流れ、そのラストあたりで、光のはてに向かうとあるMSが最近のエピソードにも連なるかなといった展開もコアなファンの共感をもたらしたとか。
ともかくも今後のイベントや展開するだろう作品にも期待は持てるかもしれません。
さてみなさん、今回は80年代ガンダムの集大成的になるかもしれなかった、いわゆる幻の大作たる『ガイア・ギア』について軽めながらも語りたいと思います。それでは、ごゆっくり。
ガイア・ギアとは『逆襲のシャア』のすぐ後にて発表された小説で、宇宙世紀2、3世紀あたりを舞台に、いうなれば従来のガンダム世界から一新したストーリーにていまだ混迷を見せる世界に、シャアの遺伝子を受け継いだ青年アフランジが、生まれ育った地球から宇宙に上がりモビルスーツを発展した人型兵器マンマシーン“ガイア・ギア”を駆って世界の混迷に立ち向かうのだ。とまあさまざまな事情から詳しいストーリーは割愛して、問題なのはその後の事情、
制作した冨野カントクとしては逆襲やハサウェイまでのガンダムを“歴史”として、新しい物語を書きたかっただろうけど、その後のスポンサーやサンライズさんの意向にて『Vガンダム』のヒットを受けるも、その後のストーリーといえる『Gセイバー』が制作されたがどこか振るわなかった感もあり、その一方で『Gガンダム』以降のアナザーガンダムなどのリリースにて、まったく別の流れが生じてしまい、いわゆる宇宙世紀に連なるシリーズはターンエーやGのレコンギスタなどの後代シリーズに連なる形となり。近作では『ジークアクス』にてもう一つの宇宙世紀も描かれるに至る。
たしかにこれらの作品群のリリースされた手前、ガイア・ギアが振るわなかった点は本意ではなかったにせよ、今作にてもガンダムという世界観の広がりに一役を担ったのだ。
さてみなさん、ジークアクス追加シナリオ予想小説たる『ジークアクスT』もいよいよ最終、マチュが連邦のエースたるセイラに救出されたのと同じころ、裏面にうごめく陰謀も語られる運びとなります。それはこの世界の根幹を揺るがす事象にもつながることと前もって述べることとして、果たしてひとまずの結末をどう結ぶことになるかをこうご期待、といったところで、それでは、ごゆっくり。
なお前回までのストーリーはこちら
第1話:悪意は再び
第2話:神々の見えざる手
第3話:刻の泪(前編)
第4話:刻の泪(後編)
第5話:生きてやる!
番外編:テキサスの辺境
第6話:救出
といったところで、あらためてごゆっくり。
エピローグ:大いなる福音
サイド3内のとある密閉型コロニー、それは軍備拡張のために隠匿された、いわゆるダークコロニーのひとつであった。
そのダークコロニーの一基を戦後の軍備増強を隠れ蓑に表向きは老朽化のため廃棄されたといされていたが、実のところ移送隠匿とともにひそかに内装整備され、今では要人用隔離施設として機能していた。その施設に誰が隔離されているのかというと、
「貴公の言う通り、やはり毒を用いたかキシリア」
イオマグヌッソでの会見にてキシリアに暗殺されたはずのギレン=ザビが秘書付きでコロニー内に滞在していたのだ。そして今彼と会談しているのは、連邦開発局の要員たるシロッコでもあったのだ。
「ここはやはり影武者を用いたのは正解だったが、しばらくは死んだことにしたほうがよいかな。まあわたしとしても、そう何度も殺されるわけにはいかんからな」
「左様ですね、総帥」
そこで秘書のセシリアも言を発する。彼女もまた影武者を用いて難を逃れていたのだ。
「大将どのには気の毒な結果になりましたが、それに国家親衛隊をはじめア・バオア・クーがかの兵器にて消失せしめるとは、あれの暴走がなければ今頃ジオン本国はもとより地球圏もどうなることやらですわね。しかしキシリア閣下がその後の混乱で命を落とされたとか。その一方でシャア大佐が生存したことに加え、今や連邦を追われたセイラ曹長、そのお二人を担ぐ輩にも注意を払わねばなりません」
「キャスバルとアルテイシアか、ダイクンの遺児たちが我ら亡きあと台頭するか。やはりいい気分ではないな」
「いずれにせよこれからの身の振りはこのシロッコにお任せを」
と言って、シロッコは場を離れる。
「いずれにしても、我らも気をうかがうのもだな、あとはマ・クベ、そしてシャリア=ブルの動向に気を付けていれば」
と、あらためて腰を据えるギレンだったが、彼もまた己の運命のすべてを把握していないきらいがあるのだが。
「総帥もまたこちらの世界へとたどり着いた方だが、同志としては信頼に値うわけでもないか。しかし総帥がひそかに計画されたクローン兵計画、それに我が連邦の強化人間プラン、そしてGQXの量産化計画と合わせ、このわたしの“大いなる福音”が成されるのだ。それこそこの世界、ひいては人類があるべき姿のための新生がもたらされる。そのための布石もすでに打たれている。あとはただ静かに待つのみ、だな・・・・・」
と、シロッコもダークコロニーを後にするのだった。
ひとまずのグランドエピローグ
一連の事件起きた前後、航行中のソドンのブリッジに一つの知らせがもたらされた。
「艦長、地球から連絡が届きました」
「一体どこからだ」
艦長がたずねるも、オペレーターのセファは困惑気味に応える。
「それが、位置特定がままならない状態で、連絡先は、ランバ=ラルと名乗っているとのことです」
「何、ランバ=ラルだと」
ランバ=ラルといえばジオンの名門出身の軍人で、ザビ家との政争で家は没落、配下の兵とともに地球の前線へと放逐させられ、連邦の攻勢により戦死を遂げたとのことだった。
それが今になりソドンを特定してコンタクトを取り付けたのだ。艦長ならずともいぶかるのは必然だった、その上で平静を保つシャリアに視線が向けられるのもまた必然だろう。それはブリッジ内のエグザベ、コモリ、そしてニャアンがそれぞれ注目する。
しかし艦長は連絡について問う。
「それで、連絡というのはどんな内容だ」
「あ、はい「囚われの姫君、我らが姫が救出せり」とのことです」
「なに、どういうことだ」
「はい、続いて「現在我が陣営にて傷を癒し、然る後貴艦と合流せん」とのことです」
引き続きシャリアに視線を向ける。その表情には安堵の色が浮かんでいた。それに応え誰もが安堵の表情を浮かべ、特にニャアンは、
「マチュ・・・よかった」
彼女に流れる一筋の涙、それをぬぐったのは、先の件から仲直りしたコモリだったのだ。
続いてエグザベもふと、
「中佐、これもあなたの計画の内なら、僕もそれに力を貸します。だからあなたも最後まで責任を取っていただきますよ」
「・・・そうですね・・・・・」
半ば素っ気なさそうに、しかし確信をもってシャリアは応える。おりしもソドンは地球へと降下し次の任務にあたるのだった。
再び地球某所、通信室にて連絡を済ませた一人の女性、ランバ=ラルの内縁の妻、クラウレ=ハモンであった。そこに一人の女の子と、シイコの息子、そしてヴァーニとカンチャナが近づいてきた。
「マチュは、助けられたの」
「ええ、セイラ様が直々彼らの基地に潜入して救出に至ったのよ。もっとも先方は無傷ではいられないけど、いずれにしても無事に助けられて、今かの機体ごとこちらに向かっているわよ」
セイラの応えにカンチャナたちも安堵し、女の子と男の子スガイがそれにならう。しかしそこにもう一人の女が訪れる。先の事件でイズマを離れ、地球に潜伏しているはずのアンキーだった。
「あらアンキー、やはりあなたも彼女のことを心配してるの」
「まあね、あの子も結構物分かりがいいから。あれからソドンの中佐の預かりになってると思いきや今度の連邦の件だ、あたしとしても気が気でならないからね」
「ともかくも今後の作戦にはあなたたちにも力になってもらうわ」
「まあ、乗り掛かった舟だ、あの子にも結構貸しがあるからね。そいつをキッチリと返させてもらうよ」
冗談交じりに応えるアンキー。どこまでが本心かは分からないが、彼女の協力はある意味頼もしいとハモンは思った。しかし背後の男、ラルはやはり気が気でない。
「しかしアル、いやセイラ様がご帰還なさるならそれに越したことはない、いやアマテ嬢も無事に助けられたなら尚更だが」
さらにもう一人の男、ウォンもまた。
「まあともかくも彼女には今後の作戦には役に立ってもらう。ジオンはともかく地球圏も秩序と平穏のために我々もいくらかの投資をしているからね」
「ええ、それも承知しているわよ」
ともかくも彼らもまたセイラとともにマチュを待ち構えるのだった。
そしてかの地へと接近する2機のMS、1機はセイラの新型たる通称“百式”、もう1機はご存じジークアクスであった。2機は施設のビーコンに従い、開けたゲートへとたどり着く。そこには二人を出迎える者たち、まず先頭の二人の大人、その傍らの女性、そしてその後ろのヴァーニとカンチャナ、そしてかのシイコの面影がある男の子とその隣の女の子。さらには事件の後地球へと落ち延びたアンキーたちカネバンの面々もいた。彼女たちの姿をまみえて、マチュは感慨込めて口を開く。
「ごめん、みんな、私にはまだ行くべきところがあるんだ。こんなにうれしいことはないよ」
そして2機は降り立ち、駆け付ける者たちを目の前にコックピットからマチュは姿を現すのだった。
さらに基地のはるか上空には、ソドンもまた降下していく。
こうして新たなる戦いの火ぶたはいずれ始まろうとしていくのだった。
といったところでこの『ジークアクスT』のエピソードはこれでひとまずの終結ということで、ソドンを中心とするジオン・ダイクン派と連邦有志の連合と、連邦特殊部隊とジオンの秘匿部隊との対戦がおそらく繰り広げられ、やがてもたらされる大いなる福音と大いなる破局にマチュのジークアクスが立ち向かうというストーリーも予想される、ということだけれど、ひとまず編者が描くのはここまでということで自分なりのジークアクスに一区切りをつけ、あとは皆さまの反響を待つのみですが。
ともかくも永い間のご拝読ありがとうございます。
さてみなさん、ジークアクス追加シナリオ予想小説たる『ジークアクスT』の第7弾、前回より囚われのマチュが、とある女性の助けを経て、いよいよ再起に乗り出す様をここにお送りする運びです。はたしてその先に行きつく先には何があるかこうご期待といったところで、それでは、ごゆっくり。
なお前回までのストーリーはこちら
第1話:悪意は再び
第2話:神々の見えざる手
第3話:刻の泪(前編)
第4話:刻の泪(後編)
第5話:生きてやる!
番外編:テキサスの辺境
といったところで、あらためてごゆっくり。
あの尋問からどれくらいの時が経ったのだろうか、ドアの向こうから声が聞こえてくる。扉が開き、入ってきたのは、強くおおらかな声に相応しき気高さを感じる女性だった。
「アマテ=ユズリハ、それともマチュと呼ぶべきかしら」
「・・・あなたは・・・・・」
あらためてマチュも女性に向き直る。その面持ちはどこかで見たような、そうイオマグヌッソ内部で会った青年の面影に近かったのだ。
「私は、セイラ=マス、あなたもお察しの通りシャアの妹といえばわかるかしら」
「赤い彗星の、妹さん」
マチュの察しに応えるかの如く、セイラも気が進まないながらもこう応えたのだ。
「ともかくここを抜けましょう、ついてこれるかしら」
手を差し伸べるセイラに、マチュも立ち上がろうとした。
「うん、なんとか、いたた・・・・・」
まだ体の痛みは残っていた。しかし体を動かすには支障はない。
「あと押収された帽子とスーツはこれでしょう。あと壊れた携帯も」
「うん、あ、ありがとう」
前もって手に持った帽子とスーツを渡されてから営倉から脱し、通路を駆けるセイラとマチュ、
「それにしてもひどくやられたわね」
「かえって叩き直された気分」
多少殴られるのは覚悟の上だったので、特に気を引き締めて応えるのだった。
「強いのね、あなた」
「ううん、まだ強くない」
「ともかく、ここを抜け出せればあなたのガンダムにも会えるわよ」
と、二人は通路を駆け抜けていく。途中誰何する兵士と出くわし、すかさず銃撃するセイラ、その躊躇ない銃撃にマチュも内心驚くも、これもまた覚悟していたのだが。
「テーザー銃よ、それに急所は外していたから死にはしないわ」
「・・・うん」
「ともかくあなたも生きることを考えなさい。それが明日にもつながるのだから」
再び頷きつつセイラについていく。そして駆け抜けた先のジークアクスにたどり着く。
「ジークアクス、大丈夫だったんだ」
マチュを待ち構えたがごとくコクピットを開くジークアクス、シート裏からハロも顔を出す。
「マチュ、無事カ、ケガシテルノカ」
「たいしたことじゃないよ、それよりここを抜け出そう」
「とりあえずは一人乗りね、表に私の機体があるから、とりあえずそこまで動かせる」
「うん、やってみる」
セイラを手にジークアクスを動かすマチュ。しかし異変に気がついたジェリドとヤザンも駆け付ける。
「やはりこうなったか、とはいえ面倒なことにもなったが」
「まあ俺たちはやるべきことをやるだけだ、ある程度はな。たしかにあれ以上シロッコの思惑に乗るのもやはり不本意だからな」
ふとジェリドは、独語交じりである感慨を述べる。
「俺たちもこんな世界に来ちまったが、だがそれなりに面白くなってきたな、あのお嬢さんとあんたが、そしてあの赤い男と薔薇の乙女か、はたしてどうかき回してくれるか、だな」
ある程度のやり取りを交えてひとまず見送る形となったが、彼らもまた来たるべき戦いに思いをはせずにはいられなかったのだ。
施設を離れジークアクスを駆るマチュ、途中指示されたMS〜軽キャノンとゲルググをベースに新たに開発された、アナハイム製の新型の機体が隠された地点につき、そのまま2機にて連邦軍有志が待ち構える拠点へと駆け抜けるのだった。
その途上、マチュはとある感慨に想いを致す。
「・・・宇宙は、哀しみに満ちている。
あの時、いやもうはじまりがいつなのかも分からない。あるいはもしかして、こことは別の世界、別の宇宙かもしれない。
それから今までどれくらいの命が落とされ、どれくらいの哀しみが起こったのかは分からない。
でもたしかなことは、その哀しみから、絶望から這い上がって希望を見出そうとする、それが人の歴史を紡いできた。
でもそれさえも新たな歴史の絶望の苗床にもなっていった。未来はもっと明るくて優しくあるべきなのに。
でも本当に恐ろしいのは、この世界をつくったのは誰かであるのも分かってる。
そしてそれは、あの男も気付いていて、それを自分のために書き換えようとしている。もしそうなればもっとも恐ろしいことが起きるかもしれない。
それだけはさせちゃいけない。世界は、宇宙は、誰かのために動くんじゃなく、ニュータイプ、ひいては人が人として生きるためにあるんだから。
だから私ももっと強くならなきゃいけない。あの男に、いやニュータイプ、人として生き抜くために。それはどこかでも今始まってることだろう。
私の、私たちの戦いは、今再び始まったのだから・・・・・」
マチュの決意とともにジークアクスはセイラのMSとともに地平線の彼方へと飛び去って行くのだった。
しかし、もう一つの思惑はもう一つの布石を敷いていたのだった。
さてみなさん、ジークアクス追加シナリオ予想小説たる『ジークアクスT』の第6弾
今回は少し視点を変えて今や宇宙の辺境となりつつあるテキサスコロニーにて、亡命した二組の家族の肖像をお送りいたします。やはり本編でも名が挙がっただけにこのままストーリーを流すのも何なのでここでお送りする運びです。それでは、ごゆっくり。
なお前回までのストーリーはこちら
第1話:悪意は再び
第2話:神々の見えざる手
第3話:刻の泪(前編)
第4話:刻の泪(後編)
第5話:生きてやる!
といったところで、あらためてごゆっくり。
テキサスコロニー
地球のヤシマ商会が開発した観光用コロニーだったが、ここ最近の戦乱で観光客が減り、管理も疎かになりつつあるも、多くの別荘地が細々と管理され、最近はもっぱら要人の亡命先としても利用されてもいた。
そのような事情から昨今ではサイド6を範とする中立コロニーとして認知される。
そんなテキサスでは、その亡命者の子弟が牛馬の水飲み場で水遊びをしていた。そこに一人の女の子が仲間に加わろうとしていたのだが。
「私を仲間に入れてくれないのか」
「だって、お前えらそうだもん」
「私はおじいさまや父上のような誇り高い生き方を目指しているんだ。それに恥じぬ生き方や、しゃべり方はいけないのか」
「いっけないよーだ」
と、子供の一人が女の子に水をかける。女の子の方も少しふくれっ面をするもそんなに動じない。そこに一人の男の子が割って入る。
「い、いじめちゃ、ダメだよ・・・・・」
「なんだバナージ、別にいじめてないだろ」
女の子はさらににらみつける。むしろその視線はバナージと呼ばれた男の子に向けられていた。しかしそこに一人の若い女性が現れる。
「あら、ミネバ様、お友達と喧嘩をしてはいけませんよ」
「あっ、イセリナお姉さま」
「ああ、イセリナ様だ」
その女の子、ジオン公国の将軍だったドズルの娘ミネバはもちろん、子供たちにもその女性は顔はきいているようだ。
そのイセリナという女性、もとは地球の名家の令嬢なのだが、騒乱に巻き込まれるも、とある事情で軍を退いた恋人ともに難を逃れ、その恋人の姉の手引きのままにここテキサスコロニーに身を置いていたのだった。
イセリナが抱えた籠いっぱいのリンゴを子供たちに渡し、特にバナージにはミネバ自身がリンゴを手渡す。
「私も別にいじめられたわけじゃないぞ、このリンゴを受け取りなさい、次に会う時はおまえは私のともだちだ」
「う、うん・・・・・」
そうこうと子供たちとの別れもそこそこに、二人は自邸への帰途につく。
「ジオンは戦争に勝ったけど、人々の生活は一向に良くならない、キシリアおば上やギレンおじ上がいがみ合って復興どころではない。その上さらに戦争を起こそうとするのはどういうことなのか」
「キシリア様にはキシリア様のお考えがあります。こうして私たちをこのテキサスに亡命させたのはほかならぬキシリア様です。決してぞんざいには扱わないでしょう」
「そうだとよいが、あ、ガルマおじ上。誰かとお話をしておるのか」
「そうですね、あれは地球のユズリハ大使次官ではありませんか」
「ご存じなのですか、お姉さま」
「はい、父とは何度かお顔を合わせたこともありました」
と二人はガルマたちに顔を合わせる。
「ああ、イセリナ、それにミネバ」
「おじ上、それに、ユズリハ殿、ご機嫌よう」
お堅いながらも恭しくミネバが挨拶をする。
「これはイセリナ様、それから、ミネバ様もご機嫌麗しく。わたしどもも当面この地にご厄介になっております」
とユズリハも挨拶を返す。しかしふとイセリナが家族のことを問おうとするも。
「あ、はい、妻は今家の方で臥せっておりまして、あと娘は、その、別の場所に・・・・・」
「あ、ああ、二人とも今日は遅いから早く戻ることにしよう。それではユズリハ殿、ご機嫌よう」
と、ガルマが割って入るように二人を家路に連れ帰るのだった。
その夜、ユズリハ夫妻は自邸~ブライト、ことに妻のミライのとりなしであてがわれた別荘のひとつにてたたずんでいた。あの事件以降そのまま直行したユズリハの方はともかく、妻のタマキの方はカムランの計らいでテキサスに向かい、そこで夫と合流し今に至ったわけである。ちなみに二人とも辞表を提出したが、そのまま預かりとなって公式には休職という扱いであった。
ことにタマキは先の騒乱を受けて軍警に事情を聞き出そうとしてもらちが明かず、同僚は気遣っているものの次第に居づらい状態が続き、何より肝心な娘アマテとの連絡もつかずじまい。テキサスに落ち着いたものの先の事情で憔悴の色を隠せずじまいだった。
そんな妻を気遣い寄り添うユズリハは、
「先にイセリナ様からリンゴを頂いたんだ。何か食べないと体ももたないよ」
「・・・ねえ、あなた・・・・・」
「うん・・・・・」
「私たち、これからどうするの、まさか、アマテがあんなことになるなんて」
「ああ、だからブライトさんがお力添えをしてくれて、いずれその嫌疑も晴れるから、僕たちは・・・・・」
夫の気遣いを感じ入り、荒れんとする感情を抑えてタマキは応える。
「私も、アマテの幸せを想って、いろいろと気を配ったつもりだったの。それが、どうしてあんなことに」
やがて嗚咽も混じり、淡々と自身の想いを打ち明けるタマキだったが。
「あの子は、僕たちが思っているよりも、先を見ていたかもしれないんだ。だから、踏み入れた先で迷ってしまって、先の事態に巻き込まれたんだ」
実はユズリハも裏の事情~ブライトから聞いた、アマテがジオンの軍施設に保護されている~を聞きだしていた。しかしそれをタマキには伏せていたのだが。
「とにかくアマテのことは、僕たちも信じて待つことにしようじゃないか」
「あなた・・・・・」
タマキも今はただ夫に寄り添うしかなかったのだった。
同じころ、ふと目が覚めたミネバは、外の風に当たろうと部屋のベランダに顔を出す。そこで隣の家の薄明かりに気が付き、そこから誰かの嘆きを感じる。実はガルマ邸のすぐ隣がユズリハ邸であった。
「たしかユズリハ殿のお住まいだったな。そういえばご息女が行方知れずと聞く。更に聞けばサイド6にてテロリスト事件が起こって、一人の若い女が関与して、って。もしそうなら、これは許せぬな。
いやこれはユズリハ殿の問題だ。今私は、私たちはおじ上に守られている。そういえば夢で父上がおじ上を頼れと、あと戦場での仇を求めるな、とも言っていた。
守られるのはいいけれど、そんなおじ上を、私たちで支えなければならない。そのために今は私もまた強くならなければ、いけない・・・・・」
とふと眠気を覚えたミネバは部屋に戻ってベッドにて寝床につく。
そしてガルマはイセリナの胸の中で眠りにつき、イセリナもまたガルマをいとおし気に抱き寄せ眠りについていたのだった。
さてみなさん、ジークアクス追加シナリオ予想小説たる『ジークアクスT』の第5弾
ついに連邦情報部にとらわれたマチュ、かつての遠き日の夢を見た末の目覚めから本格的の尋問を受けることになった。果たしてある意味最大の危機に、マチュはどう切り抜けるというのか、といったところで、それでは、ごゆっくり。
なお前回までのストーリーはこちら
第1話:悪意は再び
第2話:神々の見えざる手
第3話:刻の泪(前編)
第4話:刻の泪(後編)
といったところで、あらためてごゆっくり。
17年ほど前、サイド6のとある産婦人科病院にて、一人の女の子が産まれた。
「おめでとうございますユズリハさん、元気でかわいらしい女の子ですよ」
と、病院に駆け付け、待ち受けた看護師に連れられるまま、病室で寝入っていた妻のタマキと生まれた赤ん坊のもとに、その青年は顔を合わせた。
「ああ、あなた、この子が、私たちの子ですよ」
「ああ、僕たちの子どもだ。こんな時代に、いやこんな時代だからこそ、この宇宙(そら)の架け橋になってほしいな。そうだ、今日からこの子はアマテ、アマテ=ユズリハだ」
青年はその赤ん坊、アマテを抱き上げ、アマテも笑顔で応えるのだった。
それから1、2年後、ユズリハ家を一人の青年官僚が訪れる。
「あら、ようこそカムランさん、少し窮屈ですがゆっくりしてください」
「それではお言葉に甘えて、ところでご息女はどちらに」
タマキに導かれカムランは、父親と遊んでいるアマテのもとを訪れる。
「ああ、これはカムランさん、ようこそいらっしゃいました」
「いえ、たまにここを通りかかり訪れたのですが。ところで」
カムランはふと膝を置きアマテのほうに目を移す。
「お嬢ちゃん、お名前はなんて言うのかな」
「・・・・・」
カムランの問いにちょっと人見知りをしたのか、アマテは何も応えない。
「ほら、パパやママはなんて呼ぶのかな」
父親が続いて問いかける。
「・・・、あ、あまちゅ!」
と、元気に自分の名前を応えるのだった。
「・・・そういえば、子供の頃は、マチュが本当の名前って思ってたんだ・・・・・」
夢見の中そう思いつつ、自分がどこか固いベッドの上で寝ているのを感じていた。しかしそこにある男の声が響く。
「ゆっくりと眠れたか、アマテ=ユズリハ、いやマチュと呼ぶべきかな」
部屋に入ってきたジェリドに呼び掛けられ、ゆっくりと体を起こすマチュ、しかし自らの出で立ちがねずみ色の下着なのに気付いた。
「ああ、押収の際に着替えさせてもらったよ」
一瞬マチュは赤面する。着替えさせられたということは、
「ちなみに着替えさせたのはうちの女どもだ」
それでも自身の体を見られたことには代わりはないのでやはりいい気分ではない。そういえば女性の声で「いい体してるじゃないの」という声が聞こえた気がした気がしたのだが。
「さていきなりで悪いが、これから取り調べの時間だ。ついてきてもらうぞ」
ソドンの時よりは重く不快な気分を味わうも、ひとまずは従うことにする。あまり抗っても意味もないと思ったからである。
取り調べのために別室に連れられたマチュ、そこにはさらに好戦的な面持ちの士官が待ち構えていた。
「おう、早かったなジェリド、これがソドンの秘蔵っ子か」
「ああ、なにせ灰色の幽霊のお墨付きだ、わざわざシロッコが直接相手になるだけのことはあるからな」
取り調べ室の椅子に座らされ、というか自分から腰を下ろすマチュ、あらためて二人の士官に視線を向けつつ、尋問を受けることになる。
「さてと、尋問までは時間があるが、まずは俺たちに付き合ってもらおうかな」
「あんまりやりすぎるなよ、ヤザン」
「ああ、分かってるさ」
「別に、何も言うことない・・・・・」
マチュに向き直ったヤザンに、そっけなく応える。
「そう言うと思ったぞ、しかしうちの大将、おっとまだ少佐だったな、あのお人にかかればどうなることになるやら」
「・・・・・」
なおも睨みつつ沈黙するマチュに、おもむろに平手を打つ。ぶたれたマチュも軽く睨み返す。
「・・・!」
「ほう、ただの甘ったれたお嬢ちゃんじゃなさそうだな」
「・・・お父さんにも、ぶたれたことはなかった・・・・・」
とはいえ、マチュとしてもこれは予測してのことだったが。
「こいつは警告だ、バスク少佐にかかりゃどうなることが、こいつは見ものでもあるがな」
「おいヤザン、お出ましだぞ」
ジェリドの呼び掛けに奇妙なゴーグルを付けた巨漢の士官、バスク=オムが数人の兵士を伴って入室してきた。
「アマテ=ユズリハ、連邦付き元大使次官と監査局元部長の娘か、そしてなによりかのジークアクスのバイロットだという」
「・・・・・」
高圧的なバスクの物言いに無言で応えるマチュ、それに対しバスクも表面上平静を保ちつつなおも続ける。
「単刀直入に言おう、新設される我が連邦の特殊部隊に入ってもらおう」
「イヤだ」
マチュの素っ気ない応えにバスクのこめかみの血管がわずかに走る。
「はじめに言っておくが、貴様には拒否権はない。今やかのジークアクスとやらは我が機関によって掌握され、これにより開発される新型のMSの開発をはじめこれからの戦力となろう。もちろん貴様にはそれを指揮してもらう。これで我が連邦の覇権もなるというとこだ」
「ヒゲマンはそんなこと言わなかった、モグラオヤジ」
マチュの口ごたえについに忍耐を脱してかバスクも拳を振り上げる。
「口のきき方に気をつけ・・・!」
バスクの鉄拳制裁にすかさず避けるマチュ、こればかりはひとたまりもなさそうだったからだ。
「避けるな!」
「よけるだ、ろっ!」
さらに逆撃の頭突きを繰り出す、その一撃でバスクのゴーグルは外れ、そのまま後ろのジェリドを巻き込んで倒れ込む。
すかさずジェリドに駆け寄るヤザン、一方で倒れざまのバスクも、その時差し込んだ光に剥き出しの裸眼が照らされて絶叫し、苦悶のうちにのたうち回る。かつてジオンの捕虜となり、キシリアの拷問を受け、まともに光を受けられなくなった名残りであった。
「やっぱ、モグラだったんだ・・・・・」
軽い感慨を覚えるマチュ、しかし次の瞬間数人の兵士がマチュに襲い掛かり、殴る蹴るの暴行を加える。
「やれぇ、やってしまえぇ・・・・・!」
バスクの怒号とともに打ちのめされるマチュ。しかしそれを体勢を立て直したジェリドがヤザンとともに制止せんとする。
「いかん、やめろ、やめないか!」
「やめろと言っている!」
ジェリドが袋叩きの兵士たちを引き剥がし、殴り掛かった兵士をヤザンが殴り飛ばしてようやく暴行は収まった。しかしマチュの方はしこたま袋叩きにあい、息も絶え絶えにも見えた。
「しかし大したお嬢ちゃんだぜ」
「ああ、敵に回しゃ恐ろしい女だぜ」
「それでこそ落としがいもあるってもんだな」
「とはいえ、これからシロッコがどう動くか、これも見ものだな」
再びジェリドたちがマチュを抱え、営倉に連れていき、残りの兵士もバスクに駆け寄るも、その手を振り払いつつやがてバスクも部屋を後にする。
「ほら、せいぜい壊れてくれるなよ」
営倉に戻されたマチュ、ジェリドたちから放れ力なく倒れるも、ややあって全身の痛みと身体の軋みに耐えつつ起き上がろうとする。
「くっそー・・・・・」
マチュは一瞬自分の力の無さを呪った、しかし今は生きている。これからどのような仕打ちを受けるかは分からない。それでも今生きている自分に鼓舞するかのごとく呻くようにつぶやく。
「・・・今のままじゃ、ダメだ。生きてやる、どんなことがあっても、生きてやるんだ。そして、誰にも負けないよう、強くなるんだ」
マチュの苦い怒りが今の彼女を動かし、それが生きる意思につながるのだった。
さてみなさん、ジークアクス追加シナリオ予想小説たる『ジークアクスT』の第4弾
連邦軍特殊部隊の介入で深い傷を負ったソドン部隊。その重い帰途の中、残された者たちも新たな路を模索せんとする。そしてそれにかかわる人たちもまた動き出さんとする。果たしてその先には何があるというのか。といったところで、それでは、ごゆっくり。
なお前回までのストーリーはこちら
第1話:悪意は再び
第2話:神々の見えざる手
第3話:刻の泪(前編)
といったところで、あらためてごゆっくり。
もともとがイオマグヌッソの件に介入せんと乱入した連邦軍特殊部隊、
しかしいざ対してみるとジオンのエース格ともいえるシャリア、エグザベ、さらにはニャアンといずれも翻弄しつつ時間を稼ぎ、残るソドンの秘蔵っ子ともいえたマチュのジークアクスが、シロッコのG・O:ジ・Oに鹵獲され、そのまま離脱していったのだ。
もちろんイオマグヌッソの件は内部の暴走による自爆と片付けられるも、より深刻なのがギレン、キシリアがその暴走に巻き込まれて行方不明となった事実、それがジオン国内に多大なるダメージを与えることは何よりも明らかなことでもあった。
そのような小さからぬ損害を受け、ソドンは生き残った要員を回収し、一路グラナダへと進路を進める。
そんな中ソドン艦長ラシットは激務の疲れからか、休息をとるべく操舵長にブリッジを任せ、自室へと足を運ばんとする。
その途中、コモリが先にブリッジを離れドックへと足を運んだことに気が付き、自身もそのドックへと向かおうとする。
そのドックではエグザベのギャン、シャリアのキケロガ、そしてニャアンのジフレドが帰還していた。あとはすべて連邦特殊部隊MS群の餌食となったのだ。
はじめコモリはエグザベに話しかける。
「エグザベ君・・・・・」
そういえばイズマの任務以来彼とはあまりよく話をしていなかったのだ。そんなコモリにエグザベも心身ともに疲れ切った中気丈に応えんとする。
「ああ、コモリ少尉、僕は大丈夫だ、それよりもニャアンのことが心配だ、彼女に話しかけてやってくれないか」
「あ・・・はい・・・・・」
自分より元気がなさそうだったコモリを励まそうとしたエグザベの気づかいだったが、それがかえって彼女に失望を与えた。純粋にエグザベを励まそうとしたのにである。
仕方なく向こう側のニャアンに近付こうとする。そういえばエグザベが引き取って以来彼女にも話をしていない。それにマチュもシュウジという少年~後に赤いガンダムのパイロットだったと分かった彼とともにニャアンのことも心配をしていたのだ。そのマチュは今連邦の手の内にある。しかも虎の子のジークアクスとともに。
コモリの目の前のニャアンは、ドックの傍らで泣きじゃくっていた。コモリが声をかけんとしたが、ニャアンが口にしたのは、
「・・・キシリア様、シュウちゃん、シュウちゃん・・・・・」
コモリの中の何かが弾けたかと思えば、次の瞬間、勢いよくコモリの平手がニャアンを張り飛ばし、壁に弾けたニャアンをそのまま掴みかかり壁に押し付ける。
「あなたね、マチュが心配しているのに、あの子のこと何も思ってないの」
「ああ、わ、私、私・・・・・」
そこにドック出入り口から艦長が飛び込んで二人を引き離す。
「やめろ、彼女のことでやり切れないのはおまえだけではない!」
コモリを壁に押し付け、叱り付けるように諭す。そのあとで引き離されたコモリもニャアンはほぼ同時に勢いよく泣き出してしまう。その様をただ見ているだけしかできない艦長に、オペレーターのセファが話しかける。
「あの、艦長、本国から連絡が」
「今取り込み中だ、少し待っていろ」
「あの、ですが、マ・クベ中将が直接連絡をと、あとシャリア・ブル中佐も一緒に今後の対策について話し合いたいとのことです」
「・・・そうか、今すぐブリッジに戻る」
後にシャリアにも連絡を告げ二人はそれぞれブリッジに向かう。そんな中艦長はやり切れぬ怒りをブリッジの戻り際に吐き捨てるのだった。
「連邦の奴らめ、もし彼女に指一本触れてみろ、貴様ら全員の首をねじ切ってやる」
ブリッジに戻った艦長とシャリア、シャリアは至急の連絡ということでパイロットスーツのままだった。
「だいぶ憤っているようだな、艦長」
「あ、いえ、そんなことはありませんが」
形式上落ち着いた艦長と、一連の騒乱の内容をつかみかねる中で平静を保つシャリア。二人それぞれにマ・クベの言葉を待つ。
「・・・ギレン=ザビ総帥はイオマグヌッソの暴走に巻き込まれ事故死、キシリア=ザビ閣下はその後の騒乱に巻き込まれ戦死を遂げられた。後に閣下がご搭乗なさったチベの残骸も発見された」
一瞬息をのむ艦長と、沈黙のまま重く受け止めんとするシャリア。
「おそらくはイオマグヌッソの暴走により国家親衛隊も、守備に回ったア・バオア・クーとともに消滅した。我々としても中枢と主力を失い、内外において不利な状況に陥ったことは今更言うまでもない」
「・・・・・」
それぞれ沈黙をもって重く応える。
「そこで我々もこれからの混乱を防ぐ形で、戦力を立て直す必要がある。まずはキシリア閣下の旗下は小官が取り仕切ることとし、さしあたり貴艦も小官の指揮下に入ってもらう」
「・・・はっ・・・・・」
二人は敬礼で応える。
「・・・やはり、疲れているのかね」
マ・クベも艦長に呼びかける。
「はっ、申し訳ありません。小官も少し落ち着きたく思います」
再び敬礼とともに、艦長もブリッジを後にする。それを見守ったシャリアに、あらためてマ・クベは言を告げる。
「貴官としても、この事態は半ば臨んだことではなかったかね」
「いえ、それは・・・・・」
「今の状況の中で新たな旗頭も必要だ。貴官としても心当たりがあるのではないのかね」
「さて、そのような方がおられるか」
シャリアもあえて言をはぐらかす。しかしマ・クベもその真意は半ばはかっていて、ひとまず結ばんとする。
「いずれにしても、我々も待つのみだな」
そしてシャリアもあらためて敬礼で応え、マ・クベも一旦通信を切り、ブリッジも一瞬沈黙に包まれ、ソドンも虚空の中を進み、一路グラナダへと向かっていく。
「ここは、どこなんだろう」
マチュは今、あのキラキラの中にいる。しかしその以前の記憶によれば、あのシロッコのジ・Oの攻撃によって自分はジークアクスごと捕まってしまった。その上でそのキラキラの中にいる。
これもシロッコの力によるもの、ちがう、その直後に感じた、どこかの世界、どこかの戦場で感じた戦いの記録、そしてそれらで落とされた命と泪の記憶だった。
その涙が、2、3の人の形をとる。その中のひとつがマチュに語り掛ける。
「君も、刻を見た人なんだね」
「・・・あなたは、あなたたちは・・・・・」
続いてもう一人の“かたち”がマチュの問いに応えるかのごとく語り掛ける。
「私たちがなんであるかは今は意味をなさない、あなたが感じる、そう私たちは“記憶”」
「・・・“記憶”・・・・・」
「私たちも、かつてこの世界の戦いに巻き込まれ、その果てに命を落とし、世界に泪を落とした。世界の混迷をもたらしたことへの“泪”を」
「・・・それが“刻の泪”・・・・・」
「そのあとで、私たちは、それぞれの世界が元に戻らんと願った」
「そう、でもその願いは、叶ったけどね」
「それは、どうして」
「継ぐ者が、いたの。それもまだ、完全じゃないけど」
「彼らが世界を元通りにしようとしたの。私たちの願い通り、いえそれも完全じゃないけど。彼らがいる限り、私たちそれぞれの世界も、これからも、生き続けるの」
「そして君はまだ生きている。そしてそれを表現するものとともにいる。だから、君の世界も、これからも存在し続けられる。そのことを君も願ってくれ」
そして3つの“かたち”はマチュのもとを離れていく。
「・・・ああ、待って・・・・・」
「大丈夫、世界は終わらない、人の想いがある限り。そしてあなたもまた、限りなく・・・・・」
そして再びマチュの意識は光の中に溶け込んでいく。
そして今、マチュはジークアクスごと特殊部隊とともに手配された艦船へと移送されていくのだった。
再び地球某所、そこから1機のMSが出撃せんとする。しかし建物の中から一人の幼い男の子がそのMSに駆け付ける。しかしそれをもう一人の10歳前後の女の子が引き留めんとする。
「待ってスガイ君、セイラさんだったら大丈夫だから、おとなしく待ってて」
そんな二人にそのMSに乗っているあの女性が呼びかける。
「ええ、お母さんの約束だったわね、大丈夫、あの娘も、そしてジークアクスも必ず助けるから」
かつての一年戦争時、親身になって付き合った友人の息子たる男の子、彼がマチュの危機を母シイコを通じて伝えられ、今回の作戦に踏み切ったのだ。
さらには二人の少女、先のカバスの件でセイラに助け出されたヴァーニとカンチャナが作業着姿で現れ、そしてあと一人の妙齢の女性も姿を現す。まず先の二人は、館の炎上に乗じてセイラが介入し保護されるも、ララァについてはカバスに連れ出されんとしたところ、前々から人身売買の容疑によって彼女に協力した連邦捜査局によってカバスが摘発され、彼女も解放されセイラが保護せんとするも、ある事情から比較的な安全な場所へと身柄を移すことになった。ちなみに最初の女の子はサイド7の難民の子で、同じくコロニーを追われたブライトの手引きで地球に落ち延びて以来セイラの保護を受ける。それから基地内ではいろいろ気が回るので後から来たヴァーニたちも一目置いているとか。
そして最後の女性が子供たちを取り仕切る形で呼びかける。
「さあみんな、お見送りはいいから戻りなさい、セイラさんは必ずあの子を助け出すから」
「ありがとう、マチルダさん、それでは、セイラ=マス、出ます!」
こうしてその女性、セイラがアナハイムの新型で出撃するのだった。その際に流れる『水の星へ愛をこめて』の曲とともに。
さてみなさん、今回の追加ストーリー予想小説『ジークアクスT』
いよいよジオン、キシリアの権力掌握及び地球粛清計画に介入すべく乗り込んだ連邦軍特殊部隊。ジオン随一のNT戦士エグザベとシャリアを向こうに回し、同じくイオマグヌッソの暴挙を止めるべく乗り込んだマチュにも今回の介入の黒幕たるシロッコが立ちはだかることになります。はたしてマチュ、そしてジークアクスはこの強大なる敵にいかに立ち回ることになるのかこうご期待、といいたいところですが、今回あまりに話が長くなったので、前後編に分けることになりました。ともかく気を取り直して、それでは、ごゆっくり。
なお前回までのストーリーはこちら
第1話:悪意は再び
第2話:神々の見えざる手
といったところで、あらためてごゆっくり。
地球某所、そこの地下施設のMS格納庫、おそらく新型のMSを前に一人の女性パイロットが出撃に臨まんとしていた。
しかし背後から一人の壮年の紳士が呼び止める。このMSを手配したアナハイム重工専務ウォン・リーである。
「あらウォンさん、また何か用かしら」
「今度はどこへ行こうとするのかね。先のカバスの件でもひと騒動になったが、今度もいかにかのMSが絡んでいるとはいえ、やはりジオンはともかく今連邦軍ともことを起こすこともあるまい」
「ええ、たしかに懸念はしていますが、今度の場合は連邦情報部と開発部が絡んでいます。もしも“彼女”が彼らに渡れば」
「我々もそれは考えないでもない。しかし君の立場というのもある」
そこにもう一人、口ひげの男が駆け付ける。
「姫様、またお一人でお出になられるのですか」
「ラル、その姫と呼ぶのはやめよと言ったはずです。今の私は一介のMS乗り、それ以上でもそれ以下でもありません」
「は、はあ・・・・・」
女性にくぎを刺され、ラルと呼ばれた男も力なく応え、それに続いてウォンも懸念交じりで応える。
「気持ちが分かるが、俺自身ももどかしくはあるがね」
どうやらその女性とウォンは知らぬ仲でもないようだ。
「ええ、いずれにしてもこれは“彼女”の願いでもあります。そしてあの子自身にも」
「ともかく、ここは機を見てからでも遅くはない」
「これも、分かっています」
と、その女性は目の前の新型MSをあらためて見上げる。それと同じくいずれ来る大乱をも予感せずにはいられなかった。
舞台は再び宇宙へ、まずはシャリア、エグザベ、そしてニャアンはそれぞれ特殊部隊と対峙、というより半ば翻弄されていた。
「どうした、さっきまでの威勢はどこ行ったんだ、幽霊さんよ」
キケロガのオールレンジ攻撃もジェリド、ヤザンの連携攻撃を前に半ば無力化されていた。
「たしかにオールレンジ攻撃といっても所詮は人が操りしもの、彼らはそれを熟知した上で、やはりMAVの連携も成されているのか」
「ああ、最初いけ好かない奴とは思ったがな、実際戦ってみるとお互い役に立ってるからな」
「これも腐れ縁ってやつだ、お前さんにも分かるだろう」
たしかにジェリドとヤザン、お互い信頼しきっているわけではない。しかし長年の経験がある種の連携を生み、ついには彼ら二人のMAVを形成した。もともとが彼とシャアが編み出した戦術上の方便であるのだが。
ともかくも、キケロガを翻弄し、それでいて相手の攻撃をひとまずかわしつつ、攻防は続いていく。
「こんなところで手間取っているわけにはいかない、マチュ君、そして大佐」
一方でニャアンの方もジフレドのビットを駆使して対するも、こちらもライラやマウアーのスティグマ攻撃を駆使しての攻勢でみるみる押されていく。
「あんたがもう一人の方なのかい、これでシイコや三連星を倒したっていうじゃないか、あの威勢はどうしたんだい、仔猫ちゃん」
「やはりクランバトルだけじゃ本当の実力ははかれないね、もっともあのバケモノ兵器を使ったのなら」
「まさか、あれって、何かの兵器なの、シュウちゃんに会うためじゃなかったの」
「まさか何も知らされていないってのかい」
動揺するニャアンにマウアーが先の状況を告げる。
「あれは正直肝を冷やしたわ、あのイオマグヌッソが光を発したかと思えば、月の裏側のア・バオア・クーが引っ張られてからそのまま消えたのよ。ともすれば月も地球も消し去ろうとしたかもしれない」
「まったく同じ女として空恐ろしいよ、キシリアって奴は」
「そんな、キシリア様は、そんなことを」
「さてあんたにはもうちょっと私たちと遊んでもらおうか、時が来るまで」
動揺しながらもなお二人に果敢にかかりつつ、やはりその構成に翻弄され続けるのだった。
そしてエグザベもまた残りのハンブラビに翻弄されつつある。
「くっ、こいつら、まるで僕らを弄んでいるのか、まるで何かを待っているようだ」
エグザベの言に応えるかの如く、中の1機が応えるかのごとく言を発する。詳しい記載はないが彼らも原作にて名のあるパイロットであることをここに記しておきたい。
「俺たちもジェリド達には及ばないが、ここでお遊びに付き合ってもらうぜ。もうすぐお楽しみの時間が始まるのだからな」
「お楽しみだと、お前たち何を企んで、まさか、彼女か」
ふとエグザベは先にジークアクスとその乗り手の少女のことを想い出す。しかしなおも敵の攻勢は続くのだった。
しかし一方では、一つの事態がまさに起こらんとしていた。
事態の混迷化により戦場からの離脱を図るキシリアのチベ、そこに1機の機体が立ちはだかっていた。
「キシリア様、貴女はわたしにとっては姉のような存在だった。しかしあなたはザビ家の女としてその野心と権力に陥った。わたしとしてもやはり討ち取るしかない。これはわたしの手向けだ。この上は兄上と仲良く過ごすがいい」
そしてサラミスの残骸から偶然拾い上げたバズーカにてチベのブリッジを吹き飛ばすのだった。そしてその赤いガンダムはいずこかへ飛び去っていくのだった。
その様を感じてか、ニャアンは一瞬動きを止める。
「・・・キシリア様・・・・・」
そこにすかさずライラたちの攻撃も加えられる。
「ほらほら、よそ見は禁物だよ仔猫ちゃん」
その構成でひるむも、なおも体勢を立て直し、2機に立ち向かうのだった。
そしてジークアクスのマチュ、シロッコのジ・Oと対峙するも、その重厚な装甲でまず砲撃はほぼ防がれ、くわえてその重装甲に似つかぬ機動力に翻弄されつつある。
「なんなのこのMS,デカブツのわりに結構素早い」
「そう、もともとこのG・Oは木星下の重力にも対応するため数機のバーニア操作に特化した機体なのだよ。ゆえに通常宙域ではこのように機動力を誇れるのだ。しかしそれはともかくだ・・・・・」
しばらく銃撃戦に続くジークアクスの逃走劇に移行してから、シロッコがある言葉を発する。
「・・・君は、刻(とき)と見たことはあるかね」
「・・・な、なにを言っているの・・・・・」
「君もうすうす気づいているはずだ、この世界がある意図によって作られたということを、その目的がそのものが自身の理想の世界を作らんがためにもたらされたるものだった。かくいうわたしもかつて一度は斃され、巡り巡ってこの世界にたどり着いた。そのいきさつはわたしにも分かりかねるが、ここに至った以上、やることは一つだ」
「それが私と、何の関係があるの」
「そう、やることは一つ、このわたしの理想のため、この世界を作り替える。この世界、そしてこの世界に関わる全ての世界をね。そしてそのためには・・・・・!」
そしてジ・Oの機体を通じ、シロッコのオーラが発生される。
「な、なんなのこれ、あのときの、ヒゲマンの時とは全然違う」
「分かるかね、このジ・Oを通じて顕されるわたしの力が、君もまた真のニュータイプであればこそ」
ジ・Oから発せられるシロッコのオーラが、あらためてジークアクスのマチュに覆われる。そのオーラに恐怖を覚えてか、この場から離れようとするマチュだが、
「マチュ、ニゲロ、ニゲロ」
「・・・動かない、動いて、ジークアクス、お願い!」
「さて残るは君だけだ、大いなる御手にその身をゆだねたまえ」
ジOの装甲がパージされ、それが機体の周囲を周回したかと思えば、一斉にジークアクスに取り付き、その異様な風体を形成して電磁波を発生させる。
「あああああっ!」
電磁波に襲われたマチュは、悲鳴とともに意識を失う。しかし意識を失う一瞬、マチュの脳裏に幾層の記憶が流れ込む。
それは、かつてカバスのララァが語ったものとは違う、どこかの戦場で繰り広げられた戦いと、そこから流された涙、そう、これはガンダムが織りなした戦いの、哀しみの記憶。
ある時は戦場で離ればなれになった想い人と再会せんとした前で砲火に散った。
ある時は敵に味方に分かれつつも、最後味方を助けんと自分が敵の刃に斃れた。
ある時は人としての自由を勝ち取らんとするも、より大きな秩序の前に力尽きた。
「これがシロッコが、ララァが言っていた、刻(とき)、そしてそこから流れたのが、時の、泪・・・・・」
それらの記憶がマチュの脳裏に疾ったかと思えば消えていき、やがてはマチュもその意識を失う。
「これでよい、これですべての望みが叶う、そのための鍵が、今わたしの手に・・・・・」
ジ・Oの装甲に包まれたジークアクスがゆっくりとシロッコの目の前に近付き、それを見計らってジ・Oが指先から信号弾を放つ。
「おっ、シロッコめ、お姫様を捕まえたな」
「だったらお遊びはおしまいか、それじゃあ幽霊どの、ご機嫌よう」
ジ・Oの信号弾に気付きキケロガから離れていくジェリドとヤザン。
「くっ、まさかマチュ君が・・・・・」
すかさず追わんとするも、一方のソドンのこともありシャリアも深追いを避ける。
一方でニャアンと対したライラたちも。
「どうやらシロッコもうまくいったわね」
「じゃあね仔猫ちゃん、また遊びましょう」
ライラたちもまた離脱していく。
「まさか、キシリア様が、まさか・・・・・!」
ニャアンもただ茫然とその様を見届けるしかなかった。
そしてエグザベと対した残りの機体も、信号弾に応え離脱していく。
「奴らまさか、初めからジークアクスを目当てに、しかしどうして・・・・・」
こうしてジ・Oとジークアクスを先頭に、連邦特殊部隊のMS群は虚空へと消えていったのだ。
さてみなさん、今回の追加ストーリー予想小説『ジークアクスT』
今回は前回計画された連邦情報部特殊部隊の介入計画が展開されることと相成ります。はたしてそれら特殊部隊とそれを束ねるものの大いなる手に、マチュたちはどう立ち向かうかをこうご期待、といったところで、それでは、ごゆっくり。
なお前回のストーリーはこちら
第1話:悪意は再び
といったところで、あらためてごゆっくり。
本編に入る前、原作のあらすじを合わせて述べておきたい。
キシリア暗殺計画におけるサイド6、イズマコロニー襲撃を経て、マチュことアマテ=ユズリハはシャリア=ブルに保護ざれ、ソドンに拘留されるも、一旦は艦を離れ地球でのとある女性との邂逅を経て謎の機体“シャロンの薔薇”を発見するに至る。
その機体を核に地球環境の改善を目的とした太陽光照射装置たる“イオマグヌッソ”が配備され、その起動祝典がサイド6政府を交えて執り行われる。ジオン側として参加するギレン、キシリアが会談を行われんとするも、その場でなんとキシリアがギレンを配下の要人ともどもひそかに散布した毒で暗殺するに至る。
それと同じく、先の事件後に保護した難民の娘ニャアンが駆るMSジフレドによって、イオマグヌッソ本来の力により、ア・バオア・クー宙域に駐留するギレン派の戦力を一掃してしまったのだ。
そしてエグザベらギャン部隊が親衛隊のビグ・ザム部隊を襲撃する。その一方ソドンにては性急に進んだ事態の対処のため、マチュとともにシャリアも出撃する。
そして事態はサイド6軍警のサラミスから大きく動き出すのだった。
「予定どおりビグ・ザムは倒れたか」
「見掛け倒しとは言わんが、MSの方も結構やるな」
「ソドンから出たのは、あのMSね」
「やはりイオマグヌッソに向かうのね」
「むしろ好都合だ、我々も入るぞ」
「了解!」
軍警のサラミス内にて男女の会話がなされ、当のサラミスが戦場へと突出していく。
「軍警のサラミスが、突出します」
「なんだと、イズマの連中は何を考えてる」
ソドン内部でもサラミスの異変がしらされ、その対応に一時戸惑っていた。一方突出するサラミス内でも、
「前方にかまうな、できるだけ突っ込んでいけ」
「しかしヤザン、そのまますんなりと進めればいいが」
「たしかにな、相手はあのビグ・ザムを倒した連中と、かの幽霊どのだ」
「たしかに戦いがいもあるわね、でも本当はあのジークアクスと戦いたかったでしょうジェリド、ヤザン」
「それはお前たちも同様だろうライラ、なにせあのシイコや三連星を倒した連中だ、それをゲーツたちが代わりに対した結果幽霊に倒された。その際かの姫君をもかくまったというからな」
「いずれ幽霊とも戦わなければいけないけど、今はかねてからの計画通りにいきましょう」
「そうだなマウアー、どうやらこちらに気付いたようだ。奴らが撃って出た時に俺たちも出るぞ」
ギャンの1機が突出し妨害せんとするサラミスに砲撃するや、そこから突き破るかの如く、10数機のMSがそもそも自動操縦のサラミスの艦体から発進していった。
「なんだと、こいつはイズマ内部で暴れまわったMSの片割れの」
「やはり連邦の新型か」
エグザベとシャリアも、一連の異変に気付き、対峙を一時取りやめその新型に対することになる。
「どうやらやるってのか、面白い」
好戦的なパイロットのヤザンがまず突出し、数機がそれに倣う。
「相変わらず血の気が多いなヤザン、だがこの際派手にやれればいいからな、俺たちも行くぞ、ライラ、マウアー」
「OK!」
挑戦的なパイロットのジェリドも、女性パイロット、ライラとマウアーとともにギャンの一群に攻め込む。
「いいか、MSだろうが戦艦だろうが1機ずつ叩いて制宙権を確保するんだ。あと幽霊には気をつけろ」
他の僚機にジェリドが告げ、そのMS、ハンブラビの群れはギャンの群れに襲い掛かる。
まず1機の砲撃によりギャンの群れを散会させ、その中の1機を数機で取り囲み、機体から繰り出されるワイヤーで絡ませ、やがては数条のサーベルでとらえて撃破していく。
「こいつ、前のよりも反応が早い」
エグザベの驚愕とともにみるみる撃ち落とされるギャン。
「やはり、先とは違ってかなりの手練れのようだ」
シャリアもオールレンジで応戦せんとするも、やはりその反応速度でその砲撃を難なくかわす。
「それに機体の方も、前回よりも改良されている」
「そうだ、あの二人とは違うんだよ」
シャリアの懸念にヤザンが応える。一方で1機をとらえたマウアーたちもまた。
「シイコとは違うのよ、シイコとは」
かつてのシイコが得意としたスティグマ戦法をハンブラビの機動力を生かして駆使し、ほとんどのギャンを撃破し、残るはエグザベ機とシャリアのキケロガを残すのみとなった。
まさにその時、遠方からまた1機、件の異様なるMSがその姿を現す。
「・・・ふふ、すべてのお膳立ては整った、か。ならば・・・・・!」
そのMSの乗り手は、刮目とともにその異様な光を放ち、それがMSを通じ眼前のイオマグヌッソに向けて異様な光が放たれる。
そしてそのイオマグヌッソ内、そこから発する異様な光に包まれるジフレドのニャアン、キシリアと謎の青年との対峙に巻き込まれる形でそれに逃れる中でその異変に気付く。
「何なのこれ、まさか、シュウちゃんが、あの薔薇が発したの、でもどうして」
その一方、かの赤いガンダムに乗っていたのはかの謎の青年シロウズ、しかしその実体は行方不明だったシャア自身、そのシャアもまた、内部の異変に気が付いた。
「これはまさか、ゼクノヴァ、だと、今度は誰が起こしている。いや、彼女を無理やり起こしたというのか」
そしてジークアクスのマチュもまた、
「何なの、この光、まさかまた起きるっての、あの光が、いや、違う・・・・・」
その光の呼びかけとともに、乗り手の青年、連邦MS開発部士官、パプテマス=シロッコがイオマグヌッソ内部、シャロンの薔薇に呼びかけるように告げる。
「これでお膳立ては整った、その上で薔薇の乙女よ、君の役目も次へとお預けだ。あとはこのシロッコと、彼女に任せたまえ」
そして最後の念を送り、それをイオマグヌッソ、その内部のシャロンの薔薇へと送り込む。
「この光、これで、シュウちゃんのところに、いえ、違う・・・・・!」
その異様さに気付いてか、ニャアンも構外へと脱出する。
「誰の仕業かは知らんが、冗談ではない」
シャアもまたそこから脱出していく。
そしてマチュも、
「誰かが、ララァを操ってこんなことを、いったいどういうこと。でもともかく、ここを離れよう」
と、ジークアクスを駆りイオマグヌッソを離れていく。
そして計画を実行せんとしたキシリアも手負いの身をチベで脱出したまさにその時。
「これは一体どういうことだ、ニャアンか、いや誰が薔薇を動かしている」
ジークアクス、ジフレド、そして赤いガンダムがそれぞれ脱出したのと同じく、イオマグヌッソが巨大な光に包まれる。
「ミノフスキー粒子が増大していきます。これは、ゼクノヴァです」
「なんだとー!」
こうして一部を除いてイオマグヌッソが、中枢にあったシャロンの薔薇とともに虚空へと消滅していったのだ。
そしてその衝撃から、3機ともども飛ばされてしまった。
まずシャアの赤いガンダムは一時姿を見失い、ニャアンのジフレドは運が悪いのかよいのか、エグザベたちの戦場に飛ばされ、そしてマチュのジークアクスが飛ばされた先には、なんとかのMS、その異様なる巨体を誇るその機体が立ちはだかっていた。
「だ、誰・・・・・!?」
「お初にお目にかかる、アマテ=ユズリハ君、いや、クランバトルのミス・マチュと呼んだ方がいいかね。わたしはパプテマス=シロッコ。そしてこの機体は、人呼んでG・O、ジ・Oとお見知り置き願おう。いずれにしても、君を迎えに来た」
その名乗りにマチュもあらためて戦慄を覚えた。人が、ことに生物が持つ生きる上での戦慄を。
「何なの、こいつ、ヒゲマンやシャアとは違う、まるで底なしの、闇、だというの・・・・・」
その時マチュは思った。自分が今一番危険にさらされていることを。
同じころ地球、どこかのスラム街にてたたずんでいたララァは何かを予感し、誰かに語り掛けるように叫ぶ。
「いけない、彼に出会っては、彼は、世界そのものを、歪めてしまう。自分の、欲望のために・・・・・」
しかし空は何も応えない、ただ青空が広がっているのみで、その上の騒乱までも映し出してはいなかった。
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