のび太のジゴクめぐり(その8)<ドラえもんオリジナルネタ小説>
今までのあらすじ
次なるジゴクは数多くのツミを自らの手でツグナうジゴクだった。そこの奥に崖に突っ伏して泣いている法王と出会う。法王は、正しい行いをした者でも、自分を省みることの大切さを教え諭そうとしたのだ。
第12章:賢者ゲリオンと大男アンタイオス
ホウオウさんの丘を越えた先、のび太くんは雪原にいた両脇にはいくつかの小山がそびえ立ち、そこをただひたすら歩いていたのだ。
「ブルルルル、だんだん寒くなってきたなあ。これじゃ釜ゆでの効き目もなくなっちゃうなあ・・・ハ、ハクション!」
突然、小山のひとつが動き出す。小山だと思ったのは巨人だったのだ。
「誰だ、人が気持ちよく眠っていたのにクシャミをしたやつは」
「わっ、巨人?」
「なんだ、ニンゲンか、ここはジゴクの底のすぐ先だ。こんなところにニンゲンが立ち入れる場所じゃあ・・・・・」
そんな時、小山の巨人より一回り小さい巨人が近付いてきた。
「おーい、この子は大魔王さまのもとへと訪れにここまで来ただよ」
「おお、アンタイオスか、それなら話が早いな」
「えっ、大魔王さんって、何のこと」
のび太くんの問いに巨人が応える。
「お前さんはエンマ大王さまから大魔王さまを訪れるように言いつけられたはずだ。ともかくここから先はこのアンタイオスが案内してくれる。こいつについて行きなさい」
「あ、はい・・・・・」
と、巨人に告げられるままにその小さい巨人アンタイオスについていくのだった。
「でもどうして、あの巨人さんはあんなところで埋まっているの?」
「うん、オラたち巨人は大昔地上で暮らしてただよ、そのうちに自分たちの土や木を使い尽くし、ニンゲンの分まで横取りしようとしたんで神様がこのジゴクに閉じ込めただよ。そんでその時幼かったオラがここの守り人となって、みんなの世話をしてるだ」
「うん、横取りしようとしたのはワルいことだけど、これでジゴクに落ちちゃったのか」
「こんなジゴクでもオラたちにとっては住みよい所だけどね、さあ、ついただよ」
と、のび太くんを地面に下ろす。そこには老人の頭の巨大なケモノがいた。
「ゲリオン様、この子がジゴクを旅してる子供だよ」
「おお、キミがのび太くんか、よく来たね」
そのケモノはのび太くんをゆっくりと見つめる。
「ええっ、怪獣!?」
「いやいや、こんな姿だが元はニンゲンなのだよ。わたしはゲリオンといって、イニシエの賢者とも呼ぶ者もいるがね」
「ケンジャ?」
「たくさんの知識を覚えてそれをまとめたから、そう呼ばれているのだよ。キミもたくさん勉強をすればわたしのようなケンジャになれるよ」
「ゲリオンさんのようにかなあ・・・・・」
「ともかく、わたしの背中に乗りなさい」
言われるままにゲリオンの背中に乗り、ゲリオンは大きな翼を広げて空を飛ぶ。
「今度はどんなジゴクに行くんだろう」
「うむ、キミはさまざまなジゴクを見てきたのだね。キミのみならず人には良い面もあれば悪い面もある。このジゴクは人の悪い面を戒め、生まれ変わってより良い生き方ができるようにするのが本来の目的なのだよ」
「僕がこのジゴクに迷い込んだのも、かな」
「それは間違いのないことだ。そもそもヒトのツミはカミやアクマのせいにしがちたが、それは正しくはない。あくまでもヒト自身の意思によるものだよ」
「ヒトのイシ、かなあ」
ふとのび太くんは『強~いイシ』のことを思い出す。
「キミも他人やモノによって強いられてコトを行ったことがあったのだね。しかしそれだったら結局身に付かなかったことだろう」
「え、はい・・・・・」
ゲリオンに心を見透かされてか、一瞬ドキッとしながら応える。
「結局はキミ自身の意思がモノをいうのだよ。今までだってここまでこれたのは確かにキミの意思、周りにせき立てられたこともそのきっかけにすぎなかったのだよ。それはこの先に進めば分かることだけどね」
「・・・はい・・・・・」
いつしかゲリオンは氷原にさしかかり、そこて降りたってしまう。
「さて、わたしが行けるのはここまでだ。この先はキミの目で、耳で、そして足で、キミ自身が歩んだ答えを確かめてきなさい」
「・・・はい・・・・・」
我ながら素直な返事だなと思いつつ、ゲリオンと別れる。
そのゲリオンの言葉に勇気づけられたのか、身を突き刺す寒さに耐えつつ、氷原を歩き続ける。
そして目の前には巨大な魔物の像が立っていた。
つづく
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