ドラえもん

ザ・ドラえもんズオリジナル:怪盗ドラパン編・セリーヌととらわれの館(その3)

さてみなさん、今回はいよいよドラパン編のクライマックスに差し掛かるわけですが、もともとのネタが藤子F先生の名作『TPぼん』の魔女狩りの巻から取ったもので、本当ならもっと大胆な表現となるところ、昨今規制もキビしい中で精一杯のイメージをお送りできればとも思っております。ともあれ捕らわれの身から抜け出し、ドラパンとともにガストン卿の陰謀をいかに討ち破れるかを乞うご期待といったところで、それでは、ごゆっくり。
 
屋敷の地下室にて、あられもない姿で壁に吊るされたセリーヌたち。そこにガストン卿と娘のミレーヌが現れる。
ミレーヌ「気分はよろしいかしら、お嬢さんたち」
セリーヌ「えっ、ガストン卿とミレーヌさん、これはいったいどういうことかしら」
ミレーヌ「これからあなたたちはインドでのお仕事に従事してもらいますわ。そのためのあなたたちの身なりを整えなければいけません」
追って目が覚めたソフィーとマイア、それぞれ今の状況をつかみかけてか、一斉に騒ぎ出す。
ソフィー「え、これ一体どういうこと、誰か助けてよぉ」
マイア「なにこれ、人をこんなところで縛り付けて、今すぐほどかないとこの部屋叩き潰すわよ、こんにゃろ!」
一斉に騒ぎ出す二人に見た目平静さを保っているガストン卿と、半ばウンザリしている表情のミレーヌは傍らの召し使いに指示を出す。
ミレーヌ「わずらわしいわね、だまらせなさい」
「へい」
すかさずソフィーの口を布でふさぐ。しかしマイアの方は暴れっぷりが強く手を出せないでいた。
そのうち、じっとガストンらを見つめていたセリーヌが口を開く。
セリーヌ「そういえば、今まで若い人たちが行方不明になっているとは聞いてたけれど、どうしてこんなことを」
ミレーヌ「どうしてって、すべてはこのフランスを再び偉大な国にするためですわ。あなた方はその礎となるのです」
セリーヌ「そんな、今は革命やら戦争やらの騒ぎがおさまって、ようやく立ち直ろうとしているのに、あなたたちは街の人たちを、そのインドなんかに売り飛ばしてお金儲けだなんて、人として恥ずかしくないのですか」
ガストン「だまれ小娘!」
突然傍らで二人のやり取りを聞き入っていたガストンが怒鳴り出す。
ガストン「お前たちには、わしの苦しみなど分かるものか。かつて革命で国を追われ、イギリスでは平民にもバカにされ、苦労して金をもうけて今の地位を取り戻したのだ。お前たちも祖国フランスの人民ならば、少しは力になってもいいではないか」
マイア「ふざけないでよ、だれが好きこのんでインドなんかに奴隷にならなきゃいけないのよ」
ガストンの言葉にいきり立ったマイアがさらに腕をばたつかせる。するとこれが功を奏したのか、吊るされた壁が地響きと砂ぼこりを巻き上げて崩れ出す。
ガストン「くっ、おのれ、誰かこの砂ぼこりをなんとかしろ」
セリーヌ「・・・マイアががんばったおかげで、どうやら自由になれたわね、そういえば、あの机の上に・・・・・」
砂ぼこりの中おそるおそる傍らの机を目指しておかれていた鍵束を手にして自分を縛り付けた手かせを外す。
セリーヌ「あとはドラパンと連絡が取れたら、こんな格好だけどなりふり構っちゃいられないわ」
残りの鍵をマイアたちの方に投げてから、セリーヌは部屋を後にする。
 
部屋を後にして、上の会談を目指しひた走るセリーヌ。途中召し使いと出くわし、相手がセリーヌの姿に戸惑っている隙に蹴り倒す。敵が持っていた棒を取り上げさらに先に進んでは出くわした相手を倒しつつ地上の階段を目指す。
ようやく階段を上ったかと思えば、今度は棒を持ったメイド頭と出くわしてしまう。
頭「あらあら、こんな格好で外に飛び出すなんて、いけない子ね」
セリーヌ「どうやらあなたとも戦わなきゃいけないのね」
セリーヌも棒を構え直してメイド頭と勝負を挑むのだったが。
 
一方マイアも砂ぼこりがおさまってから周りを確認する。
マイア「どうやら助かったわね、でもセリーヌも一人で逃げたのね」
ソフィー「どどどうしよう、マイア」
マイア「決まってるでしょう、あたしたちもここから抜け出すわよ」
と、傍らの机を持ち出して取り押さえんとする召し使いたちと立ち回る。
マイア「道を開けな、さもないとぶっ飛ばすわよ」
しかし突然、振り回した机が砕け散る。目の前には銃を持ったミレーヌが立っていた。
ミレーヌ「まったく乱暴な人たちね、でも私はお父様よりは甘くないわよ」
さしものマイアも銃が相手ではなす術もなく、そのまま縮こまってしまった。
 
一方メイド頭と対することとなったセリーヌ、たくみな棒裁きでセリーヌと渡り合い、対するセリーヌも果敢に応戦するがいかんせん相手の方が一枚上手だった。こうしてみるみる追い詰められるセリーヌ。しかしメイド頭が何かに吹き飛ばされひとまずは難を逃れた。そこには“空気大砲”を片手にドラパンが立っていた。
ドラパン「大丈夫、セリーヌ」
セリーヌ「ああ、待ってたわよ、今までどこほっつき歩いてたのよ」
ドラパン「何だよ、せっかく呼び出しておいて、って、でもこの格好はいったい何なの」
セリーヌ「ああ、そうだった」
セリーヌが今の恰好に気が付き、軽く手を体にやるしぐさをする。
ドラパン「とりあえず動きやすい服に着替えなきゃね」
と、空気砲を被っているハットにしまい、代わりに“きせかえカメラ”を取り出す。セリーヌの姿に戸惑いながらも、何やらのヒーローっぽい服を着せる。
セリーヌ「え、なにこれ、でもなんかかっこいい」
ドラパン「名付けて“セーヌ川の騎士”だよ。あとこれも“ライトニングレイピア”」
説明しよう、この“ライトニングレイピア”は“名刀「電光丸」”の姉妹品で、どんな相手にも的確に渡り合う剣なのだ。
しかしそのうちにメイド頭も起き上がる。
セリーヌ「あら、メイド頭さんも起き上がっちゃった。とりあえずお宝の方をお願いね。この人は私が相手するから」
ドラパン「うん、気を付けてよ」
といってこの場を後にするドラパン。
頭「やってくれたわねお嬢ちゃん。今度は容赦はしないよ」
セリーヌ「ええ、こっちも頭に来てるんだからね」
と、騎士姿のセリーヌとメイド頭の対戦が再び始まるのだった。

 

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人間藤本弘の死、漫画家藤子・F・不二雄の死補足:ドラえもんにおける死と生<本当は怖いドラえもん>

かつてこのタイトルで、作者の藤子F先生がドラえもんのお話においてユメを伝えることができなくなったこと、ついで先生の死期と重なったこと、それがのび太くんの災難や苦労となって降りかかったことを述べたことがあった。
たしかにそれらの苦労や災難はやりすぎとも受け止められるが、それでも本当に苦しんではいないともドラえもんあたりは言ったことだろう。『のび太もたまには考える』然り『ドラえもんが重病に』然りと。
では本当の意味でのび太くんは苦しんだことがあったのかといえば、ひとますはそうだともいえる。
これは皮肉なことにあの当時本当の意味でユメを伝える役目を負った大長編の作品にそれらが描かれたのだ。まず海底鬼岩城ではバギーの自爆、鉄人兵団やふしぎ風使いではリルル、フー子の消滅である意味キャラクターの死が描かれ、日本誕生やブリキの迷宮、夢幻三剣士やらでは死地を乗り越えて目的を果たすというシチュエーションが描かれた。
これには80年代中盤あたりの藤子F先生の健康事情もあり、内外の圧力みたいなものが先生を追い詰めた、とまあこれまた言い過ぎながら指摘しておいて。
加えてお話を創るに際して締め切りに追われる日々は売れっ子やベテランとなった頃でも変わりなく、ストーリーの簡略化、悪くいえば安直化がなされ、繰り返しつつも結局のび太くんにお話の重みがのしかかり、それが先生のお体に障ったと述べておきたい。
それでも先に述べた事情からある種の使命感が以後のお話、ここでは日本誕生以降の大長編の創作につながったこともここで述べたい。
そして先生ご自身の死後『ねじ巻都市』以降の作品で藤子スタジオのみなさんに想いを託したのだと。編者に言わせれば一抹の不安もあるけれど、この意味でも今でも藤子F先生は想いとともに今でもドラえもんの中で生きているのだと思いたい。

 

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ドラえもんオリジナル:超大作特撮映画『スペースしずかちゃん』

さてみなさん、今回は急きょ特別編ということで、昨年末放映されたドラえもんの大晦日特番の1本『宇宙大魔人』の巻にて何故かカットされたしずかちゃんの衣装について、かくいう編者としても昨今の規制がキビしい中やむを得ないといった大人の意見の一方でちょっと細かいかなという往年のファンの意見もあるけれど。
今回はそんな意見を尊重し、実際しずかちゃんが大活躍、といっても原作の『魔女っ子しずかちゃん』の巻をベースとしたお話となっておりますが、その辺についてはご了承のほどを。それでは、ごゆっくり。
1  
ある日めずらしく、ドラえもんとのび太くんが出木杉くんの家に呼ばれてまた映画を作ろうと持ち掛けられる。
今度は先の宇宙大魔人のお話とつながりながらも、ひとまずは別のお話、いわゆるスピンオフの作品を創ろうということだ。
またドラえもんが主人公のヒーローかと乗り気でないのび太くんに、出木杉くんも今度はしずかちゃんをヒーローに据えるという。
早速しずかちゃん家に赴く出木杉くんたちだが、先の件でジャイアンに見つからないようにと、しかし途中スネ夫には見つかり一緒に連れていくことに。
家について早速しずかちゃんに計画を持ち掛けるとしずかちゃんもこころよく引き受けてくれた。
そこでヒーローのデザインを決めることになるが、スネ夫が出した案は恥ずかしくて着られないとしずかちゃんが突っぱねるも、出木杉くんの手直しでようやくまとまった。
そこにドラえもんが実際に空を飛べて力が出せるヒーローの衣装にしようと持ち掛ける。その際のび太くんがあの“フクロマンスーツ”と同じかと口を滑らせ「あのヘンな怪人はのび太さんなの」と咎めるもひとまず出木杉くんがなだめるのだが。
そんなこんなでいつもの“きせかえカメラ”にヒーローアダプターを取り付け、ヒーローのしずかちゃん“スペースしずかちゃん”となったのだ。
こうして映画製作に取り掛かるのだが、しずかちゃんがせっかくのヒーロースーツなのだから実際役に立てようと持ち掛ける。こうしてドラえもんの撮影でしずかちゃんの活躍を記録するのだ。
まず業者に頼らず荷物の積み下ろしをする人の手伝いにはじまり、迷子の子供の親を探したりとひとまずの活躍を見せるのだった。
ところがそんなしずかちゃんの活躍をジャイアンが見つけ「あいつらまたおれを仲間外れにして映画を作ってんな」と撮影をしているドラえもんを見付けて「おれもまぜろ」とおどして迫る。
そこでしずかちゃんがジャイアンをつかみ上げ、これ以上の乱暴をやめさせるようにとこらしめる。
こうしてジャイアンを大道具係にしてさらなる活躍をとろうとした矢先、どこかしずかちゃんのスーツに調子がおかしくなった。やがては失速、つまり空を飛ぶ機能が変になり、このままでは墜落してしまう。いつもの空き地に堕ちようとするしずかちゃんをドラえもんたちが受け止めようとするも結局土管に激突してしまう。ドラえもん、のび太くん、ジャイアンは多少ダメージを負うもしずかちゃんは無傷だった。ところがばつが悪いことにのび太くんのママ、しずかちゃんのママ、そしてジャイアンの母ちゃんがその場に居合わせて、その一部始終を目撃してしまった。
はたしてのび太くんとドラえもん、ジャイアン、そしてしずかちゃんはそれぞれママのお小言を受けることになり、それを出木杉くんがみんなに詫びてお話をシメたそうな。

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それにつけてもおカネのほしさよ:しあわせいっぱいお年玉<本当は怖いドラえもん>

さてみなさん、今年のお正月はいかがお過ごしでしたでしょうか。
やはり今のご時世で三が日中家でのんびりと過ごしていたという方もおられるでしょうが。
一概にお正月といえば、童謡に歌われる「凧あげや羽根つき」などで遊ぶのは今は昔、レジャーや娯楽が多様化するご時世では先立つものはやはりおカネ、正月でおカネといえば何といっても“お年玉”でしょう。今回ドラえもんにおけるお年玉にまつわるお話を紹介してからのまとめ話をお送りしたい。
 
はじめに挙げるべきは“お年玉ぶくろ”。この道具は何かいいことをしたり、災難に遭ったりとすればそれに準じたおカネが得られるけれど、それらの反対のことにあえばそのお金を失うといった。ある程度の融通が利いた、言ってしまえば割に合わなさそうな道具でもある。その詳しいお話は別の記事に譲るとして、
そのお年玉の使い道で“もしもボックス”で物価を下げて自分がというをするお話や“フエール銀行”で残ったお年玉を殖やそうとしてかえって損をしたお話やらと、これまたお決まりの融通が絡んだお話となっている。これもまた別の記事で述べられたけれど。
それらは結局「おカネが欲しければちゃんと働いてから、その前に勉強をしろ」といったこれまた文句に行きつくのだからある意味始末が悪いともいえるけれど。
お年玉についていえばもうひとつ、“オトシ玉”なる道具があり、これはお年玉をくれそうな人、この場合は親戚の人たちだろうけれど、その人の近くでこの球を引くとお年玉をくれるといった道具で。その玉で金持ちのくせにケチな親戚からお年玉をせしめようとしたが、親戚のケチで頑固なところが反映して玉がすっかり重くなった。そこで怪力ロボットを出して玉を引いたまではよかったが。お年玉はロボットがもらったそうな。
このお話については、お年玉をもらうためにオトシ玉を引っ張るためにロボットを使ったが、自分がもらうならスーパー手袋を使ってもよかっただろう。それでもこれはおカネが絡んだお約束や融通云々よりも初中期のズッコケ話と読んでもいいかもしれない。ちなみに旧アニメ版ではケチなお金持ちから貧乏な若者に変えられて、玉を引いてからのお宝探しのお話に転んだこともウンチクとなっているけれど。
やはりここは素直に、お年玉については一気に使うのではなく、日頃のお小遣いと同様に、本当に欲しいものを見極めながら使うのが一番利口な使い方だと、これもまた大人の意見ながらも述べたいと思うけれど。

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ザ・ドラえもんズオリジナル:怪盗ドラパン編・セリーヌととらわれの館(その2)

さてみなさん、今回のドラえもんズはいよいよ貴族ガストン卿の邸宅にて仕事を行わんとまずセリーヌがお仕事を兼ねての屋敷の調査に行くところをお送りいたします。
後半に至ってここでの物語の核心に至るわけですが、それについての詳しい説明は後日に譲り、はたしてどのようなことに相成るかひとまずはこうご期待と述べることにして、それでは、ごゆっくり。
 
パリ郊外の屋敷、そこに住んでいる貴族のガストン卿。一時期先の革命のあおりでイギリスに亡命、つまり逃げ延びてから現在、帰国がかない様々な事業に力を注いでいた。
そこにセリーヌら女の子たちが家事手伝いのために訪れてきたのだ。
はじめソフィーのアパルトメントにて馬車で迎えられ、屋敷へと向かうのだ。
やがて馬車が屋敷につくと、屋敷の中から話し声がする。
「なんだこれは、器量がいいのは一人だけ、あとはクマとネズミではないか」
「でも、働けるならなんたっていいでしょう」
と、そのようなことはつゆ知らず、屋敷からセリーヌより少し上の年頃の少女を伴って恰幅のよい紳士が現れた。
「よくぞ参られた、わたしがここの主にしてガストン家当主、アンドレ=ガストンである。こちらが娘のミレーヌである」
セリーヌ「は、はい、私がここでご厄介になるセリーヌです。こちらがソフィーとマイアです」
セリーヌのあいさつに、ガストンも堂々とした態度で応える。
ガストン「昨今の国内外の状況をかんがみて不景気な中、人々のためになんとか生活のための働き口を提供したのだが、そこにそなたたちが参られたことは実にありがたい」
ガストンの高説(ある程度のえらそうな演説)を半ば聞き流しつつ、セリーヌはまず屋敷の外観を見やっていた。
ガストン「・・・ところでセリーヌ殿、何か気になることはあるかね」
そこに娘のミレーヌがたしなめるように話す。
ミレーヌ「お父様、きっとお仕事の場が気になられているのでしょう」
ガストン「おおそうか、ここでせっかく働かれるのだ。我が家と思ってゆっくりとされるがいい。もちろん入ってもらっては困るところもあるがね」
セリーヌ「はい、今後ともよろしくお願いします」
と、返しつつもセリーヌは心の中で「あぶないあぶない」とつぶやいた。
その先日にガストン邸での仕事について、セリーヌが家事仕事ついでに屋敷の全容、つまりすべての間取りを調べるのだ。
ドラパン「それはちょっと危なっかしいんじゃないか。部屋の間取りだったら僕のスパイ衛星で」
セリーヌ「せっかく表の仕事にありつけたのよ、ちゃんと働かないとつまらないでしょ。それにあんまりふしぎな道具に頼りっぱなしじゃいられないからね」
ドラパン「そうかなあ、それじゃ何か危険な目にあいそうだったらこのブローチで呼んでね」
と小さなブローチを手渡す。花の形のそれは真ん中のめしべ部分を押せばドラパンを呼び出せるのだ。とはいえ胸に飾るのも贅沢に見えるので、ひとまずはポケットにしまうことにする。
ともあれセリーヌたちも屋敷の家事全般の仕事につくこととなった。メイド頭の指導のもと、掃除、洗濯は一通りこなすも、やはり料理については絶望的だったが。
それでも仕事をなんとかやりとげられ、ガストン卿のはからいで夕食前のティータイムに招かれたのだ。
ガストン「これははるかインドから取り寄せたダージリンの紅茶だ、遠慮なくいただきたまえ」
ソフィー「はあい、いただきます」
と、三人は紅茶とマフィンに舌鼓を打つ。しかしセリーヌは少し思うところがあるかのようだった。
ガストン「うむどうしたね、セリーヌ殿」
セリーヌ「あ、いえ、この紅茶に何か気になる香りがして」
ガストン「そ、そうかね、これはインドの民が心を込めて摘み取ったものだ。彼らの想いを感じればありがたい」
心なしか応えたガストンの笑顔の口元が少しぎこちない。
ガストン「ささ、紅茶のおかわりはどうかね、マフィンの方もまだいっぱいある」
セリーヌ「あ、はい・・・・・」
いささか強引にガストンが紅茶とマフィンをすすめ、仕方なくマフィンと紅茶を口に流し込む。
そのうちにメイド頭とミレーヌとの談笑(言葉を弾ませてのお話)に興じ、場も和んできたかと思いきや、みるみるソフィーとマイアが眠りこけ、ついにはセリーヌも眠りに落ちた。
セリーヌ(・・・まさか、あの紅茶かマフィンに、眠り薬が、でも・・・・・)
三人が眠りに落ちたのを見計らい、ミレーヌは召し使いの二人を呼ぶ。
ミレーヌ「それでは、手はず通り運びなさい」
「へーい」
その一方で別の召し使いがガストンに一通の手紙を差し出す。
「旦那さま、門の前にこのような手紙が」
ガストン「何だと『今夜当家ご自慢のお宝を頂戴致します。怪盗ドラパン』か、ううむ」
「い、いかがいたしましょうか」
ガストン「たかだか盗人風情は放っておけ。あと警備隊には知らせるな。奴らにあれを知られれば面倒だからな」
と、召し使いをさがらせてからややあって部屋を後にする。
どれくらいの時間が経ったのか、セリーヌたちは気が付けば地下室の壁にあられのない姿で吊るされていたのだ。
「・・・な、なにこれ、一体どういうことなの」
多少うろたえつつも、セリーヌは自分が眠らされて捕まったことを認識していった。
一方、別の部屋では召し使いの男たちが脱がせたセリーヌの服を物色して(何か金目のものがあるのかを調べて)いた。
「やっぱり何にもないか」
「待て、こいつはなんだ」
と、セリーヌの服ポケットに入っていたブローチを取り出す。
「なんだ、金目のものかと思えば安物のブローチか」
「やっぱりこんなものだな」
と、ブローチを床に捨てる。その際はずみでブローチのスイッチが押されていった。
そのスイッチの信号を受信した目覚まし時計に驚き、昼寝から覚めたドラパン。
ドラパン「わっ、まだ夕方じゃないか。でもセリーヌの身に何か起きたんだな。ちょっと早いけどこうしちゃいられない」
すかさずポケットからマントをひるがえし、怪盗のスタイルへと姿を変えていった。
ドラパン「今行くよ、セリーヌ」
同じくハットから出した額縁『どこでもキャンパス』に入り込み。ガストン邸の外庭に移動するのだった。
ところが、パリ警備隊の本部にて何やら動きが慌ただしくなってきた。
ピエール「あれ、どうしました隊長」
マルマール「ううむ、どうも胸騒ぎがするぞ、おそらくあの怪盗が現れたとわたしの第六感が告げているにちがいない。直ちにパトロールに行くぞ」
ピエール「あ、はい・・・・・」
と、ピエールとマルマールが本部から出動していくのだった。

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モノ社会の宿業:ユメがいっぱいクリスマス<本当は怖いドラえもん>

さて今回取り上げる「ドラえもんとクリスマスとの関わり」を述べる前に「日本人とクリスマス」について語らなければならない。
元来クリスマスといえば欧米の宗教的儀式だったのを日本に伝わったときに「サンタクロースという老人がトナカイとともに空からやってきて子供たちにプレゼントを贈る」等のイベントとともにある種のお祭りとして広まったことだろう。
そこで今回の記事の題目も「お祭り」と「プレゼント」を中心に取り上げて述べたい。
まずお祭りとしてのクリスマスは、日本のお祭りということで、ドラえもんたちもパーティーに興ずる様が描かれ、加えて連載初期、昭和40年頃の生活事情もあいまって、それなりいかに楽しくクリスマスのパーティーを楽しむかもお話の幅を利かせたことだろう。
次にクリスマスのプレゼントについては次に挙げるお話を通じて述べたい。
 
『サンタえんとつ』
今年のクリスマスのプレゼントにどうしてもテレビゲームが欲しいのび太くんに、ドラえもんが『サンタえんとつ』を出して、それでテレビゲームと書いた紙を入れ、はたしてパパが知り合いの家で遊んだテレビゲームが面白かったので結局テレビゲームがプレゼントとして贈られた。
その後ジャイアンに取り上げられえんとつにマンガ本を頼んだが、逆に紙を入れたのでかえって母ちゃんに今あるマンガを取り上げられてしまったそうな。
 
『サンタメール』
今年クリスマスのプレゼントが参考書だったので、ほしいものとは違うとこぼすのび太くんに、ドラえもんが『サンタメール』なるはがきを出し、それでサンタからプレゼントをもらったが、続けてみんなにもメールでプレゼントを送ろうとするも、本来高価なサンタ切手が貼られていないメールだったので、その処理のためにあちこちプレゼントを贈るためにさんざん苦労をしたそうな。
 
まず前者のサンタえんとつは純粋に欲しいものを得る道具だったが、たしかに使い方に気を付けなければならないけれど。
続いてのサンタメールのお話は、やはり中期辺りのお話なだけにひとまずのび太くんが後半苦労したお話だった。言い換えればユメをもらい受ける立場だったのを、ユメを送る立場になったということで。ちなみに先述のメール処理について、どこかのガラクタをタイムふろしきで新品に直してプレゼントとしたものだったけれど。
ともかくもそれぞれのお話の程度こそあれ、クリスマスのお話としていずれも楽しめるものだと編者も思う。

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ザ・ドラえもんズオリジナル:怪盗ドラパン編・セリーヌととらわれの館(その1)

さてみなさん、今回のドラえもんズのオリジナル小説は、少し趣向を変えて原作本編のどちらかというと敵役の怪盗ドラパンをある程度のヒーロー性を醸し出すためにアレンジしたものですが。あとドラパンを支える、あるいは張り合う関連キャラクターもあわせて紹介します。
 
セリーヌ(のび太・イメージ的にはエスパー魔美のマミかチンプイのエリ):ドラパンが厄介になってるアパルトメントに住む少女。かつて中世の時代、魔女狩りにあいそうになるもタイムパトロールに助けられた少女の子孫にあたる。イメージボイスは三石琴乃女史か林原めぐみ女史か。
ソフィー(スネ夫・といってもパーマンのガン子に近い):大地主の娘で裕福な自分をいつも鼻にかけているが結構面倒見がいい。イメージボイスは小桜エツ子女史か。
マイア(ジャイアン):恰幅がいい雑貨屋の娘、両親と数人の弟と妹たちがいる。いささか強引なところもあるがみんなを引っ張っていくリーダー顔。イメージボイスは根谷美智子女史か。
ピエール(しずか・出木杉):フランス警備隊の隊員でみんなの憧れの的。イメージボイスは緑川光氏か。
あとドラパンの宿敵として、
マルマール隊長:フランス警備隊の隊長でピエールの上司。主にパリの裕福な家々の依頼により美術品等のお宝の警備を任されている。責任感が強いがどこか間が抜けているのが玉にキズ。イメージボイスは茶風林氏か。
といった面々がお話を彩っております。はたしてどのようなお話が繰り広げられることか。それでは、ごゆっくり。
 
時はフランス革命が過ぎ、ナポレオン三世の時代、パリ郊外のアパルトメントに住んでいるセリーヌという一人の少女。そこに住んでいる大きなネコみたいな若者というか大きな雪ダルマのような生き物がいた。その名はドラパン(イメージボイス:鈴村健一氏か)。みんなは大きなセリーヌのペットだというが、人の言葉を話すので奇妙がりつつもいつもは働き者ながらも受け入れられていた。
しかしそんなある日、住んでいるアパルトメントの大家さんがセリーヌの部屋を訪れた。
大家「ちょっとセリーヌ。そろそろ家賃の方を支払ってもらわないとねえ」
セリーヌ「あの大家さん、今少し待っていただけないかしら」
大家「そう言われてもねえ、あたしの方も生活が苦しいからねえ。あんたたちだけを特別扱いするわけにもいかないんだよ」
セリーヌ「はあ・・・・・」
大家「こちらも悪くすればあんたに部屋を引き払ってもらわなきゃいけないんだ。それだけは覚えておいておくれ」
大家もひとまずは遠慮気味に告げ、部屋を後にする。それを申し訳なさそうに頭を下げつつ見送り、ややあって後ろで昼寝をしているドラパンににらみつける。
セリーヌ「ちょっとドラパン、あんた今の大家さんとの話、聞いていたわね」
ドラパン「え、どうしたんだセリーヌ」
とぼけて応えるドラパンに、頭を掴みつつにじり寄る。
セリーヌ「とぼけないで、最近不景気なので何とか働き口を見付けなきゃいけないのに、あんただけ怠けてばっかだから」
ドラパン「そ、そんなこと言ったって、僕の方も毎日家事ばっかりで」
セリーヌ「家事の手伝いばかりじゃちゃんとした仕事にもならないわよ。仕事しておカネをもらわないと意味ないでしょ」
頭を掴んでゆすり続けるセリーヌだが、じきに疲れてへたり込む。
セリーヌ「ううっ、ここ何日もろくなもの食べてないから、余計にお腹すいちゃった」
そのうちに外がやけに騒がしくなってきたので、とりあえず顔を出すのだが。
人だかりの中心を除きこむと、そこにはとある興行主がある勝負を持ち掛ける。
「さあさあお立ち合い、この牛乳缶ひとつ丸々飲み干した者には銀貨10枚を進呈しよう。さあ我こそはと思う者はいないか」
牛乳缶は約10リットル、大人の男でも飲めるか飲めないかの量である。しばらく眺めやってなかなかに名乗り出る者がいない。
「さあどうした、銀貨10枚だよ、10枚」
そのうちに何とセリーヌが名乗り出るのだった。
セリーヌ「この勝負、私が乗ってみようかしら」
興行主「おやおやお嬢ちゃん、そんな細い体で挑戦しようってのかい。失敗したら銀貨5枚払ってもらうからね」
ドラパン「ちょっとセリーヌ、やめた方がいいよ」
セリーヌ「ううん、よく見たら私もやれそうな気がしたの」
ともあれセリーヌの牛乳のチャレンジが始まった。おもむろに牛乳缶を両手で持ち、ゆっくりと牛乳を口に流し込む。心配げなドラパンとその周りの興味本位と半ば失敗を期待している周りの人々。そしていくらかの期待に胸を躍らせる興行主。
しかしやがて牛乳缶がみるみる持ち上がり、わずかなざわめきもやがて歓声に代わり、そしてセリーヌは缶の牛乳をすべて飲み干してしまったのだ。
セリーヌ「うっぷ、これで全部かしら。とりあえず約束の銀貨10枚を・・・・・」
興行主「いや驚いたよ、お嬢ちゃんがこれほどやれたとはね、ほら、これが約束の銀貨だよ」
ドラパンに支えられ、賞金の銀貨を手渡されるセリーヌ。民衆の拍手喝采の中。一台の馬車が後ろを横切る。フランス警備隊の隊長のマルマールと部下のピエールだった。
マルマール「何というバカ騒ぎだ。まったくこんな大変な時期だというのに」
ピエール「あれはセリーヌ、彼女が何かやったのかな」
マルマール「油を売ってる暇はないぞ、まったく。本部に戻れば仕事が山積みなんだ」
ピエール「はっ」
と、馬車はこの場を離れるのだった。
アパルトメントに戻りその足で大家のところに向かい、賞金を手渡すセリーヌたち。
大家「大変だったねセリーヌ、これで当分は大丈夫だよ。でもやっぱり不景気なのは変わりはないからねえ」
とまあ当面の家賃を支払い自分の部屋に戻る二人、大家の言う通りここ最近町は不景気でロクな働き口がない。それでいて裕福な家々はますます発展し、時の政府高官とも通じているものさえあるのだ。
自分の部屋に戻るドラパンとセリーヌ。とたんに顔立ちも鋭くなる。
セリーヌ「それで、次の仕事はどこにする」
ドラパン「さしあたり、1丁目のガストンの家にしよう。あそこはたんまりと財産をため込んでいるというから」
セリーヌ「それじゃあ決まりね・・・・・」
そこに誰かが階段を駆け上がる音がした。二人は警戒をしつつドアをにらみつける。入ってきたのは少し背が低い少女だった。
セリーヌ「なんだ、ソフィーじゃない」
ソフィー「なんだじゃないわよ、やっとお仕事のつてが入ったというから伝えようとしたのに」
ソフィー「それで、どんなお仕事なの」
セリーヌ「それが、1丁目のガストンさんとこで家事全般のお仕事よ」
ドラパン「へえ、あそこは結構景気がいいからいい仕事ができそうだな」
ソフィー「あまり当てにしないほうがいいわよ。ガストンさん結構ケチだからね」
セリーヌ「まあ、やれるだけやってみるわね」
ソフィー「頼むわよ、明日家の前で待ってるから」
と、ソフィーが部屋を後にする。それに合わせて、ドラパンとセリーヌがお互いにうなずき合うのだった。

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映画ドラえもん2021、ですか

さてみなさん、お待ちかねの映画ドラえもんのタイトルが決定し、来年春の公開に向けて製作中とのことです。
その気になるタイトルは『のび太の小宇宙戦争(リトルスターウオーズ)2021』
先に発表された大長編及び映画のリメイクということで、宇宙から来訪した小さな宇宙人パピと星を制圧した反乱者との戦いに巻き込まれつつドラえもんたちが大活躍するストーリーなのですが、気になるアレンジについては要所要所ほぼ現代風にアレンジしていて、編者的には物足りないといった点はないと思います。これもみなさまの受け止め方次第やいかにといったところなのですが。
ともかくも来年の春、本当の意味での春の訪れとともにドラえもんの映画を楽しみたいものですね。

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それにつけてもおカネのほしさよ・番外編:ロマンいっぱいお宝さがし(後編)<本当は怖いドラえもん>

前回いわゆるお宝さがしについての、いわゆる冒険とロマンについて語ったものだけれど、今回は対してお宝さがしに絡んだ欲望やら悪だくみやらの弊害と、それを指摘することの問題点を述べたい。
この問題について、本記事を通じて参考文献として活用した『「のび太」という生き方』(横山泰行著・ASCOM刊)の中の一論を取り上げ、その上であえて意見を述べたい。
その当書の記事の一つに“ドラえもんでもかなえられない夢”がある。そこでは“お宝探し”に関しての横山先生の意見を読み返してみたのだが、どうしても心に引っかかるものがあったので、暴言を承知で述べたいと思う。
この論で挙げられる『宝星』の巻(後述)を通じて横山先生は、宝探しのネタを欲望の集大成と表し、お話でのお宝さがしを“たくらみ”の言葉ではじめから“悪いこと”と見なして話を進め、シメとして「子供たちに叶うユメと叶わないユメを教えようとし、自分でコツコツと地道に努力することの素晴らしさ教えたかったにちがいない」と断じた。
しかし、ちょっと待ってほしい。確かにドラえもんのお話についておカネの欲が絡んだ話にてはたいてい骨折り損となるのだけれども。つまりはお宝さがしを通じておカネに対する執着を批判したのは間違いはないけれど。
そもそもお宝探しといえば、昔は手塚治虫先生の『新宝島』や宮崎駿カントクの『どうぶつ宝島』や『天空の城ラピュタ』など、今はさしずめ尾田栄一郎せんせいの『ONE PIECE』と、常に子供たちの夢とロマンをかきたててきたものであることは前編でも述べたところ。
それを欲望の一言で片付けるのはいかがなものか。たしかに冒険よりも欲望やら悪だくみ(これは少し言い過ぎか)が前に出たのを批判したのは分かるけれど。さらに言えば何の努力もなく安易にお宝を探そうとしたのも指摘していたのだろう。すなわち冒険も努力あってはじめて大成するものなのだから、たとえどのような結果に帰しようとも。
もっといえば『宝星』や『南海の大冒険』の巻にて「ユメみたいなことを忘れて勉強しろ」というくだりをまる写ししたような文句にも読めるかもしれない。
これも前回で述べたけど、冒険を絡めての宝探しのお話はほとんどか「ごっこ」に終始していた。
しかしながら冒険の要素を抜かし、さらにはイタズラを企んだとしても、最後には素晴らしいお宝を手に入れたお話もある。そこで次のお話を紹介したい。
 
『化石大発見(コミックス11巻)』
ある日、裏山の宝の地図を渡されるも、今日はいわゆる四月バカということで結局だまされて、さらには隣で化石の発掘をしている研究者のおじさんに邪魔だと追い返される。
そこでからかい半分で昼食の魚の骨やら燃えないゴミやらをタイムふろしきで化石を生成する。
その捏造化石をおじさんに見せ、狂喜するおじさんに流石に良心がとがめたか、そのタネを明かしてしまう。その折に何と新種の三葉虫が姿を現す。おじさんが言うには世紀の大発見ということで、結局はすばらしい宝を見付けることができたそうな。
このお話の場合は財宝ではなく新種の化石(それも現在によみがえらせたもの)ということで、学術的には貴重なお宝には違いはなかった。
 
さらに述べれば首尾よく実際のお宝にたどり着いたとしても、うまうまと手にいれるかというとそうでもなく、多少の後ろ髪を引かれる思いとともに(あとドラえもんもひとこと言うだろうけれど)そのまま放っておくだろう。
実際『のび太の大魔境』のお話にて、王国を救ったドラえもんたちにペコが国の財宝を贈ろうとするも、きっぱりと謝絶したのだ。
さらに言えば同書の記事でも『意外とのび太は欲がない』にても、のび太くんに限っても欲望に関してはある程度の限度があると横山先生も書いているのだ。
つまりは、大人のモノサシで大人の意見を述べ、子供のユメとロマンをそうそう壊してはいけないと思う。だいいち当時の子供たちだった今の大人たち(編者含む)がどうユメやロマンを教えようかと迷える時代ともいえるのだから、今は。
 
最後に当記事にて横山先生がカットしたパートを補完してシメとしましょう。
『宝星』
ある日テレビでお宝を発見した老人のニュースを見て、自分も宝を発見したいと、宇宙の宝星を探索せんと意気込むのび太くんたち、いさ見付けたとしても、小さな星のケシ粒くらいの宝や巨大な宇宙人の貯金箱やらと当て外れなものばかりで流石に諦めかけた。(ここまでが横山先生の引用の要約)
そんなゲンナリとした二人のもと、もう一つの反応が出てきた。
気乗りしない中現地へたどり着いた二人。そこは地球の原始時代の様式の星で、反応があった所を掘り返してみればやっぱり円形の石の固まりだった。
通りかかった現地人が言うには、その星のお金でそれもかなりの大金だそうだ。
とはいえこの星でしか通用しないので、とりあえずこのお金で土地と別荘を買い、当分の間セレブ気分を満喫することとなったそうな。

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ザ・ドラえもんズオリジナル:ドラニコフ編その1(後編)

その人影は林の中から出てきた。それは人ともケモノともつかない姿だが、時折かすれた声でうめく。
「・・・ク、クルシイ、ナ、ナニカ、タ、タ・ベ・モ・ノ・・・・・」
その後吠えるのみでさまよい歩き、いつしかどこか大きな屋敷の裏に差しかかかる。
そこの番犬が吠え立てるも、人影の遠吠えで何故か黙りこくる。そして人影は裏庭の納屋に入り込み、そこの野菜などの食材を食い散らかし、その後で人の姿を取り戻す。
「・・・ふう、ようやく落ち着いた。先のワクチンも完全には効かないから、時折腹がすいてからまたケモノに逆戻りだ。かといってもうこれ以上ここの人たちにも迷惑をかけたくないし、さてどうしたものか・・・・・」
と、人影の男は、屋敷を後に捨てそのまま林の中に去っていく。
 
一方ニコラたちは件の犯人の手がかりをあちこち探し回っていたが、一向にその手がかりが見つからずじまいだった。そもそも肝心のドラニコフが見当違いのところをたどるばかりだったのだ。
そこに馬に乗った少年が近付いてきた。村の有力貴族の息子のフョードルである。
ニコラ「あれフョードル、いったい何しに来たの」
そのフョードルは馬から降りて応える。
フョードル「うん、君たちが犯人を捜しているのと同じく、僕も手掛かりを探しているんだ。でもなかなか見つからなくて」
ゴーリキー「なんだ、そっちも当てずっぽうじゃないか。頼りにならないなあ」
ソーニャ「そんなこと言うもんじゃないわ、フョードルも見当をつけて探しているから」
そこにフョードルの使用人が駆けつけてきた。
「た、大変です坊ちゃん、家の倉庫の食糧が」
フョードル「え、食糧庫が襲われたの」
ニコラ「ともかく行ってみよう」
と、フョードルの屋敷へとみんなが駆けつけていく。
屋敷の食糧庫はたしかに食い荒らされていた後で、警備に放された犬たちも元気がなくなっていた。
「犬たちが吠え立てたかと思えば急に黙りこくって、調べたところこのザマです」
フョードル「うん、これではっきりとしたね。ここでドラニコフの出番だよ」
「これに探させるんですか、あまり頼りにならなさそうだなあ」
フョードル「大丈夫だよ、彼の鼻は結構利きそうだから」
続いて匂いをかがせたドラニコフに励ますように告げる。
「作物や犬の匂いの他に何かが匂うはずだよ。それをよくかぎ分けて」
ひとまず励まされ、ドラニコフなりに入念にかぎ分け、うなずきとともに倉庫を後にする。ニコラたちもそれを追っていく。
 
一方件の男は先に腹を落ち着かせたかと思いきや、またもや苦しみだす。
「なんだと、先に食べて落ち着いたというのに、そういえば獣になっては食べて落ち着く間が短くなっていったような。すると、このままでは、いくら食べても、もはや・・・・・」
その苦しみから、やはりみるみるケモノになっていく。
「・・・ウ、ウ、ダメダ、コノ、ママデハ・・・・・」
そして咆哮をとどろかせる。しかしその吠え声がニコラやドラニコフが駆けつけてきた。
ニコラ「何やら吠え声が聞こえたけど、これってまさか」
「・・・ウ、ウ、ウ・・・・・」
次第にドラニコフが興奮していく。先にかぎ分けたのと同じ匂いを感じてのことで、あらぬ疑いをかけられた怒りを込めつつ目の前の狼男を睨みつけて更に興奮の度を増していく。
フョードル「やはりこの人が野菜泥棒の犯人だったんだ」
ゴーリキー「よし、とっとととっ捕まえようぜ」
しかし対するオオカミ男の方もドラニコフに負けじと吠え立てる。その迫力にさしものニコラやゴーリキーも近付けないでいた。
やがてオオカミ男とドラニコフが激突し、そのまま乱闘にもつれ込む。いつ終わるか分からない乱闘は、突然謎の穴が空間に開け、そこから黄色い人影が現れる。
その人影はドラニコフとオオカミ男に何やらの電撃銃を撃ち込み、はたして二人とも気を失ってしまう。
あっけにとられつつその人影に近付くニコラ。するとその人影はニコラに恭しく挨拶をしたのだ。
ニコラ「ええと、ドラニコフと同じような子だね、君は一体誰」
「はい、私はドラミといって、ドラニコフと同じネコ型のロボットです」
ドラニコフを気遣いつつもソーニャもドラミちゃんに話しかける。
ソーニャ「どうやら女の子のようですね、いったいどういうことなんですか」
ドラミ「はい、単刀直入に申しますと、この人はあなたたちがいう未来の世界の冒険家の人なんです」
ドラミちゃんもそのオオカミ男に近付いてボタン注射(未来の世界の針を使わない注射)のワクチンを打ち、みるみる男は元の姿に戻っていく。
ドラミ「この人はイワン=スカンレーという人で、とある星を調べているうちに行方不明になって、あとで調べていくうちに、何らかのトラブルでこの時代のここにたどり着いたんです」
そのうちにイワンと呼ばれた男も目覚め、自分が元に戻ったことを確認してから自分の身の上を話し出す。
イワン「かつてわたしはある星を調べているうち、宇宙のオオカミに似た生物にかまれたんだが、すかさず宇宙狂犬病のワクチンを打ったが、今度はその副作用でわたし自身がオオカミ男に変身するようになったんだ」
フョードル「それでそれを抑えるために、この村にたどり着いてから時折作物を盗み食いしたのですね」
イワン「今でもすまないと思っている。こうして病気が治ったからにはそのお詫びがしたいのだが」
そこですかさずドラミちゃんが何やらのカプセルを出す。
ドラミ「それだったら“趣味の日曜農業セット”。これでここの作物を作ることにしましょう」
ということで、近隣の畑を借りてドラミちゃんの道具を使って作物を作ることになった。種植えから収穫まで一通りの作業をドラミちゃんやイワン、ニコラやソーニャたち、もちろんフョードルもこぞって作業にあたり、はたしてイワンが盗み食いした料の数倍の作物を収穫することができた。
村長「これで今年の収穫分は確保できたよ」
ドラミ「はい、ここ数年はこの苗で当面の作物は確保できますよ」
村長「思えばこの人も病気だったとは、今まで追い回してすまなかった」
イワン「いえ、ご迷惑をおかけしたのも間違いはないので、これでも足りないほどです」
ニコラ「それじゃあ、その未来の世界に帰ってもお元気で」
イワン「うん、君たちも元気でいてくれたまえ」
イワンの言葉にニコラはともかくドラニコフも深々と頭を下げる。
こうしてオオカミ男騒ぎは元に戻ったイワンがドラミちゃんの力を借りて未来の世界に帰って無事解決した。
そしてニコラたちの村はドラミちゃんがもたらした作物の苗によって当面の間豊かになったそうな。

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