ザ・ドラえもんズオリジナル:ドラニコフ編・サーシャとふしぎな森(前編)
さてみなさん、今回のドラえもんズのオリジナル小説は、ドラニコフ編、サーシャとふしぎな森の前編パートをおおくりいたします。
もとはドラえもんの原作『森は生きている』の巻とロシア民話とを合わせ、ドラニコフにてのしずかちゃんのポジションたるサーシャ、
彼女について元は別の名前で先のお話を進めたのですが、これまた先の映画にて同じ名前のキャラクターが登場したいきさつもあり、今回サーシャと名前を変更した次第です。
ともかくもこのサーシャを中心に村はずれの森にてどのような不思議な出来事が起きるか、またそれをどのように解決するのかをお送りする運びです。それでは、ごゆっくり。
ある日の午後、学校帰りのニコラとサーシャは家路途中のしずかな森にさしかかる。
ニコラ「こうしてサーシャと一緒に帰るのも久しぶりだね」
サーシャ「え、ええ、そうね・・・・・」
ニコラ「うん、どうしたの、サーシャ」
サーシャ「え、うん、この森にいるといつも心地よい気分になって・・・本当なら一人でいたかったけれど・・・・・」
後ろの部分は小声になってニコラには聞こえなかったが、この森についてのサーシャの心地いい笑顔が後に忘れられなくなった。
ニコラ「それじゃあ、またねサーシャ」
サーシャ「うん、またねニコラ」
サーシャといったん離れ家に帰ったニコラは、さっそくドラニコフに話を持ちかける。
ニコラ「というわけで、サーシャのためにみんなが楽しめる森にできないかな」
するとドラニコフは了解の意を示してポケットからハート型の固まりを取り出す。
ニコラ「これが“心の土”っていうの、これを森にまけばいいんだね」
ドラニコフはうなずきつつ、ニコラのすそをつかんで何かを伝えんとする。
ニコラ「あっそうか、サーシャが使わなきゃいけないんだね」
再びドラニコフがうなずき、一緒にサーシャの家に向かう。そのサーシャの家にはちょうどフョードルも訪れていていた。
ニコラ「というわけで、この“心の土”を使って森をみんなが楽しめる場所にしたいんだ」
サーシャ「えっ、そんなことができるの」
サーシャも心が踊りつつニコラとドラニコフの言葉に耳を傾ける。しかしフョードルは少し頭を傾けて疑問を呈する。
フョードル「でも大丈夫かな、あの森は村々をつなぐ道が通っているから、それをふさがれやないかな」
ニコラ「大丈夫だよ、みんなのためになるなら村人のみんなのためにもなるはずだよ」
フョードル「それなら、いいんだけど」
なんとかフョードルを納得させてから、森のところどころに心の土をまいていった。ドラニコフが言うには、願いを込めて土をまけば、その通りの森になるかもしれないとニコラを通じて告げられ、サーシャは自分が胸にいだいた願いを思い浮かべる。
サーシャ(森にはそこを守る妖精たちがいるから、一緒に遊べる森にしたいな)
ついでにニコラとフョードルも土のひとかけらをもらってそれぞれまいていった。
こうして村通りの森は明日にはみんなが楽しめる森になる、はずだった。
はじめのうちは、ニコラたちが訪れたとき、木々がひとりでに下がり木の上へと招いて上空の景色を楽しませたり、木の上で昼寝に興じたり、その際においしい木ノ実をごちそうしてくれたりと結構役には立っていたのだ。
しかしその一方、サーシャが訪れるときには、はじめニコラたちと同じもてなしだったが、ある日森の中にきれいな泉が開けたかと思いサーシャもぜひ入ってみようと泉に近づくと、木々の葉が周りをさえぎって壁を造り、ちょっとした浴室ができたのだ。
サーシャ「お風呂なんて久しぶり、ありがとう森さん」
こうして少し温かい泉の水浴を楽しんだサーシャだった。
ところが、一方のニコラたちは少し不安げだった。
フョードル「でも大丈夫かな、どこかサーシャにばかりもてなしているようで」
ニコラ「うん、心の土は一番使った人の願いをかなえるようにつくられたから」
ドラニコフもニコラを通じて「サーシャは優しい子だから、いつもみんなのしあわせを願ってるから大丈夫だよ」と応える。
フョードル「そうは言ってるけど、これってサーシャの願いというよりも、森の意思なんじゃないのかな」
そしてフョードルの心配どおり、数日後サーシャは家に帰らなくなってしまったのだ。
あくる朝、ニコラの家にサーシャの両親が訪れた。
サーシャ父「というわけで夕べからサーシャが戻って来ないのですよ」
サーシャ母「いったいどこにいるのか、以前はこんなことはなかったのですが、そういえばそちらにはニコラたちがうるから何か分かるかもしれないですね」
ニコラのパパ「うんそういえば、ニコラ、ドラニコフ」
ニコラ「どうしたの、パパ」
パパ「実はサーシャが昨日から家に帰って来ないんだ」
ニコラ「ええっ、それじゃ、まさか」
そこに近所の大人の人たちも訪れる。
パパ「おやみなさん、どうかしましたか」
「いえそれが、朝になっても荷馬車が着かないんですよ」
パパ「それでは物資も届かないですな、このままでは今後の生活が立ち行かないおそれもありますなあ」
そこにミハイルとゴーリキーもやってきた。
ゴーリキー「おーい、ニコラ、ドラニコフ」
ニコラ「ああ、二人ともどうしたの」
ミハイル「なんか村中が真っ白な霧に覆われちゃって、ここまで来るのに一苦労だよ」
ニコラ「え、ちょっと待って、とにかく裏庭に行こう」
と、ニコラたちは急ぎ足で家の裏庭に向かう。
パパ「これ、あたりは霧でいっぱいだ。あまり外に出歩いちゃいかんぞ」
パパもニコラたちに言いつけるが、ともかくニコラたちも対策を立てることにするのだ。
ゴーリキー「なんだって、するとこの霧は」
ミハイル「サーシャの森が起こしたっていうの」
ニコラ「うん、もともとサーシャにもっと森と仲良くさせたくて、ドラニコフに頼んで“心の土”を使ったんだ。それがまさかこんなことになるなんて」
ドラニコフも頭を抱えてうなりつつ悔やみ、ゴーリキーもそんなドラニコフを警戒しながら返す。
ゴーリキー「と、とにかくその森に霧を収めるように言わなきゃいけないだろ」
ニコラ「そうだよ、たとえ心の土を使ったのがまちがいだったとしても、それ以前にサーシャも助けなきゃいけないから」
ミハイル「うん待って、なんか家の中が急に静かになってない」
ニコラ「そうだね、ちょっと戻ってみよう」
こうしてニコラたちは家の中に戻るのだが、
ニコラ「あっ、どうしたの、パパ、ママ」
ゴーリキー「と、父ちゃん、どうなってんだ、これ」
ミハイル「み、みんな眠っちゃって起きなくなったの」
ニコラ「これも森のしわざなのかなあ、ってあれ、だんだんとぼくらも眠く、なっちゃった・・・・・」
ニコラたちまでも眠りに落ちそうになり、すかさずドラニコフが何かの袋を出す。これはどんな眠りでも目を覚ます“めざめの粉”なのであった。
ドラニコフがニコラたちにめざめの粉をふりかけ、はたしてニコラたちもしっかりと目を覚ましていく。
ニコラ「ああすっきりした。これで当分の間は大丈夫だね。ところでパパたちはこのままにしていこう。足止めされると面倒だからね」
こうしてニコラたちは霧が立ち込める中、一路森へと向かう。途中馬とともに眠りに落ちたフョードルも粉で起こして先に進むのだった。
| 固定リンク | 0
「ドラえもん」カテゴリの記事
- ザ・ドラえもんズオリジナル・ドラ・ザ・キッド編:のび太のガンマスター(その2)(2023.07.19)
- ザ・ドラえもんズオリジナル・ドラ・ザ・キッド編:のび太のガンマスター(その1)(2023.06.21)
- ザ・ドラえもんズオリジナル:ドラニコフ編・サーシャとふしぎな森(後編)(2023.05.24)
- ザ・ドラえもんズ・怪盗ドラパン編:セリーヌと産業革命(最終回)(2022.10.12)
- モノ社会の宿業:こわれやすい感性<本当は怖いドラえもん>(2022.09.21)
コメント