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第17話:未来への疾走(その1)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のGCEは、いよいよ世紀の会談に向けて準備も着々と進められる中、ささやかな脱出行に取り掛かることになりました。はたして敵が待ち伏せる帰途を、無事切り抜けられることができるのか乞うご期待といったところで、それでは、ごゆっくり。

ちなみに前回までのストーリーはひとまずここに(都合により一部割愛)。

イントロダクション

第1話:ホワイトベース最後の勇者(その1)

第2話:生きるということ(その1)

第3話:継ぐものたち(その1)

第4話:月で待つもの(その1)

第5話:ガンダム、行きます!(その1)

第6話:忘れられた地で(その1)

第7話:古き友来たる(その1)

第8話:老兵は語らず(その1)

第9話:リッド奮戦(その1)

第10話:宿敵の刃(その1)

第11話:望まれし子

(その1)

(その2)

(その3)

第12話:アルセス・リターンズ

(その1)

(その2)

(その3)

第13話:蠢くものたち

(その1)

(その2)

(その3)

第14話:父と娘と

(その1)

(その2)

(その3)

第15話:姫君と騎士たち(前編)

(その1)

(その2)

(その3)

第16話:姫君と騎士たち(後編)

(その1)

(その2)

(その3)

それでは本編をば、あらためてごゆっくり。


月のアナハイム本社
そこでアナハイム会長ウォンとビスト財団当主アルベルトが、技術部長カミーユとフロンティア社社長アルフレッドを挟んでとある重大な会談を行うのだ。
「すると、コロニー建造に関しては少し遅れ気味だが順調に進んでいるのだね」
「左様です、リー会長」
ここ20年来の戦乱で文字通り宇宙は荒れ果て、宙域に漂うデブリの汚染被害に対し、一般並びに軍用航路を中心にその宙域浄化のために莫大な費用と永い時間を要することは内外の調査で試算済みだった。
すでにそれに関する事業を中心に、ブッホ社が率先して執り行っているが、それでもその浄化に手間取っているのもまた事実である。ひとまずの想定内での事項と受け、早速次の事項に話題を移す。
「そういえば圏外圏への居住計画に先立つ技術的移住もめどが立ったと聞くが、問題はその要員を選ぶといったところか」
アステロイド、木星区域以降のいわゆる圏外圏の人類の居住を求めるべく、その居住地を建造する計画の先鞭をつけるために、調査のため派遣されたかつてのシャリア=ブルやシロッコ、そしてジュドーが赴いたこともあるが、この度居住区域の調査と居住区域、いわゆるコロニー建造のための技術者を本格的に移住させるのだ。もっとも本格的な移住そのものも、宇宙世紀初期の棄民政策関連なのも変わりはないのだが。
そこでカミーユ、そしてアルフレッドの二人が発言する。
「それに関してはわたしたちフロンティア社が先頭に立ちましょう。すでに社員にも話を付けておりますので、さしあたりは希望者のリストをここに」
と、前もって希望者を記したリストをウォンに手渡す。
「うむ、さしあたりは受け取ろう」
続いてカミーユも、
「個人的に自分がその移住に参加してもいいですが」
「おい、お前も木星に行くのか」
カミーユの提案にさしものウォンも驚いた。
「ええ、この地球圏で僕がやることもありませんから、すでにファたちも了承してますよ」
「うむ、それなら当社の希望者も任せてもらおうか」
「ええ、引き受けましょう」
ふとウォンも一つの事柄を思い出す。
「そういえばご当主、君の息がかかった、というべきか、リンダ一党とやらも何かと役に立っているようだね」
「あ、ええ、まあ、彼女も傭兵として身を起こしてからいろいろと活躍をしていたようですし」
幾分苦手意識を持ちながらもアルベルトも応える。もはや内外に彼が党首であると認められていたのだが。
少し繰り返しながらも曾祖母シャーラはサイアムの立場を考えて疎遠になり、祖母のイレーヌと先代カーディアスは軽めながらの付き合いと援助を受け、リンダとはひとまずの商用の形での援助を行っていた。皮肉なことに先のトリントンの件で協力しなかったことで名を落とさず、いずれ彼女自身も人類の未来をかけた戦いができるかとアルベルト自身も期待はしているのだが。
「ともかくも、彼女も今後の計画のために協力できればと思えば」
「まあいずれ、俺の最後の仕事としては上出来かもしれない。これも余計かもしれぬが、皆くれぐれも油断なきように」
一同が深くうなずき、会長室を後にする。そして後に残ったウォンも会長卓に腰を下ろし、深く息をしつつ独語する。
「俺も、永く生きすぎたかな、テム、カーディアス。しかしそちらに行くのはまだ先かもしれぬがな」
ウォンもまた天井を、そして上空の宇宙を見透かすかのごとく見上げるのだった。

走路は比較的交通量が少ない道、小型の軍用バギーを走らせる帰還中のミヒロと護衛役のクム。
約小一時間の走行は何事もなかったが、それがきたる争乱を予感せずにはいられない。
しかし「もうそろそろ」といった予感はお互いに感じていた。しかしミヒロはともかくクムの方も実弾銃とテーザーの両方を懐に備えていた。
「でもミダス艦長の方も近況はどうですか」
思わずクムが尋ねる、少しの不安を和らげるためもあったが、やはり半ば親しい仲でもあったのでおもむろに話しかけたのだ。
「そうですね、守りは難いのは変わりないですが、そうそうピリピリとはしていませんよ。むしろ不安でビクビクしてるよりはあくまで自然体でいこうというのが艦長の意見でしたので」
たしかに、あの時の争乱よりは今回はただの小競り合いでもある。しかし、否だからこそ防備も固めなければならなかったのだ。
「まあなんにせよ、基地まで無事でいければいいんですが・・・・・」
突然、前方に砲火の音が響き、直前が爆発する。しかしミヒロは巧みにそれをかわし、そのままバギーを進めていく。
「やっぱり、待ち伏せしていたのね」
「これって対人用バズーカってところね、こいつは本格的な戦闘ね」
「でもかといって本隊を動かすわけにはいかないから、そのためにあなたを寄越したのね」
「そう、ですね、きゃっ!」
何度かの砲撃のうちバギー近くに砲火が当たり、直撃こそが外れたがバギーは横転の勢い余り一回転の末近くの土手に転がっていく。バギー自体がフレームで固められ。横転しても運転手も脱出が容易になるような機能になっていた。それが幸いしクムもミヒロもほぼ無傷でいられたのだ。
「あいたたた・・・・・」
「これってシャレにならないな、焼きが回ったとはこのことね」
「幸いバギーはまだ動けるわ、クム少尉、早く体勢を整えて」
「はい・・・・・!」
まず二人して横転したバギーの大勢を直す。しかし小型のバギーにしてはやけに重い。そのうちに“ほろ”がかかった後部からハンドキャノンが一つ零れ落ちる。
「あの、ミヒロ少尉」
「ええ、これを使う時が来たとはね、ちょっと面倒だけどクム少尉、運転をお願いします」
「ええ、私でよければ」
一瞬ミヒロの周りに“意志”を感じた。
「私も、もう頭に来たわ」
「はい、行きます!」
こうしてバギーは再び走行する。ここに後世ささやかながら伝えられる“豆戦車の戦い”の幕が上がるのだ。

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