うる星やつら・オンリーユー2022(その3)
さてみなさん、年も改まりながらも今回のオンリーユー2022は、首尾よくあたるを連れ去ったはいいもののバラ星の戦艦に待ち受けられ全面戦争に至る様をここにお送りいたします。はたしてこの戦いの帰趨やいかに、ということで、それでは、ごゆっくり。
ちなみに今までのお話はこちら。
それではあらためてごゆっくり。
あたると仲間たちを引き連れ、ラムの宇宙船が向かった先は鬼族の宇宙母艦であった。
艦内格納庫にて物々しい装備の鬼族兵士が出迎えてきた。
「ご友人各位はこちらです」と、まず面堂やしのぶ、竜之助たちが兵士に連れられる。
「ところであたるはどうするんだ」
「ダーリンは星に付くまで冷蔵庫で大人しくさせるっちゃ」
ラムの言葉に半ば納得しつつ、あたるの両親はラムに連れられる。
その途中、おユキさんとランと出くわした。ラムは両親を先に向かわせつつおユキさんたちと対面する。
「ところでラム、あの手紙が来てどうなるかと思ったけど、よく決心したのね」
「うん、まあね」
ラムも軽く返事をする。そこからの長話をなるべく早く済ませようとあしらい気味に受け応えんとした。
「ラ~ムちゃーん」
しかし続いてランが馴れ馴れしく割って入ってきたのである。
「ラ、ランちゃん、どうしてここに来たのけ」
「もう、ダーリンと結婚するっていうから私もおユキちゃんと一緒に来たんじゃない」
「別におめえらを招待したわけじゃねえぜ」
つまらなさそうに弁天が返す。
「そんな、あたしとラムちゃんとの仲じゃないの。今さらそんなつれないこと言いっこなしじゃないの」
ランの受け応えにうんざりしたのか、ラムたちがこの場を離れんとするが、
「こおらラム、わしの話を聞いとんのか、わしは別におまえとダーリンの結婚を祝うつもりはないわい、ただエルって奴がでかい顔するのも気に入らんだけじゃい」
結局ランが強引に絡んでくるので大幅に足止めを食らってしまった。
一方あたるの両親はラムの両親と特設の団らんの間にて鍋を囲んでの和気あいあいの雰囲気に入っていた。
あたるの父はラムの父ちゃんに勧められるまま酒と鍋に舌鼓を打ち、母は母ちゃんとの世間話、本来母ちゃんは相変わらず宇宙語なので会話が成立し得ないはずだが、ともかくも話が進んでいったのだ。
さておきもう一方、面堂や竜之助らもそれなり宴会に興じていた。しかしドンチャン騒ぎに興じているのはコースケとサトシ、竜之助のオヤジと温泉マーク、そして錯乱坊だけで、他は大広間の片隅でうるさ気に佇んでいた。
「おい、メシのおかわりはまだか」
そんな中、サクラが出されだ弁当を平らげていった。次いでオヤジもまた、
「わしらももっと酒を持ってこい」
「へーい」
と、兵士たちがおかわりの弁当と酒を部屋に届けるのだった。
「まったく先生までも、ほんと騒がしいわねえ」
そこにおまるスクーターでテンちゃんが部屋に入ってきた。
「あかん、すっかり迷うてしもうた。あ、しのぶ姉ちゃん」
「あらテンちゃん、大丈夫よ、私がついてるから」
と、優しく抱き寄せるしのぶにテンちゃんも馴れ馴れしく顔をうずめるのだった。
しかし、そんな乱恥気騒ぎの合間に、停泊していたラムの宇宙船の片隅から蠢く何かが這い出してきた。
「ふふ、うまくいった。あとは婿どのの居所を突き止めるだけか」
それは一人の女性、彼女こそバラ星軍工作員、人呼んで“七化けのロゼ”だった。
宇宙船から這い出した後で、母艦の中枢へと忍び込み回廊の途中で兵士の会話から、あたるが冷蔵庫に閉じ込められていたことを突き止め、件の冷蔵庫の扉を開き、氷漬けのあたるを確保する。
途中足止めをする兵士をあしらいつつ、何かしらの機器に連絡を取る。
「こちらロゼ、蕾は摘み取った。繰り返す、蕾は摘み取った」
そして同じ時、艦内に警報が鳴り響き、団らんの間にて、兵士が異常事態を告げる。
「なんじゃ、騒々しい」
「大将、前方にエネルギー反応が、これは、何かワープしてきまっせ」
兵士が言うが早いか、母艦前方に巨大なバラ型戦艦がワープアウトしてきたのだ。
その艦内で、あのバハラがほくそ笑みつつモニター越しで見やる。
「あの小娘、思うた通り父親に泣きついてきおったか。そう思うて我らもこうして待ち伏せてきたのじゃよ坊や」
一方、艦橋に上がった父ちゃんも、
「あの婆さんが黙っちゃいるまいと思うたが、こうも容易く待ち構えていたとはのう」
そして艦内の全兵士に通達する。
「こうなったら全面戦争じゃ、全軍出撃、いてこましたれ!」
こうして、あたるをめぐっての鬼族とバラ族との全面戦争が繰り広げられるに至ったのだ。
両艦無数の戦闘機を繰り出し、熾烈な空中戦を繰り広げた。そんな中、宇宙戦仕様にチューンアップした弁天の隆盛号はまさに宇宙を駆けめぐり敵機を次々と撃破していく。しかしそれ以外はほぼ五分五分の戦況であった。
鬼気迫る父ちゃん、それと対象的に余裕の笑みを浮かべるバハラ。
「そうか、蕾は摘み取ったか、なるほどの」
そこであらためて全軍に指令を伝える。
「全軍更に攻勢を強めよ。あの坊やと小娘に吠え面をかかせてやるのじゃ」
その後も戦力のぶつけ合いはしばらく続いたまさにその時である。
「大将、何者かが侵入し、ムコ殿を連れて行きました」
「な、なんじゃとぉ!」
鬼族の母艦内に凶報がもたらされる。しかし続いて。
「賊はシャトルの方に、ぐあっ!」
「やはり狙いはそこやったか、何としても取り戻すんや!」
父ちゃんの指令で全艦の兵士が守りを固めんとする。しかし大半の兵士がまさに敵軍の迎撃のために出撃していて内の守りがままならなくなってしまった。
そんな中、面堂たちの別室にては。
「お、おい、これってまるきし戦争じゃないか」
「大丈夫なのか、この艦」
「何をうろたえるか、こうなるのも覚悟の上だぞ」
心配気に窓の戦闘を見やるサトシたちを面堂がたしなめる一方で、
「面堂さん、私たち大丈夫なのかしら」
「大丈夫ですよ、僕がついていますから」
しのぶには優しくなだめるのだった。その一方で竜之助は、
「あの兵隊「ここが一番安全だ」って言ってたけどよ、本当に大丈夫なのか」
と、出入口の扉を開けようとするも、
「おい、開かねえじゃねえか、やはりおれたちを閉じ込める気か」
「なんだと、酒のおかわりはどうした」
「弁当のおかわりもどうした」
「今それどころじゃねえだろ」
「うむ、艦の内でも何事か起こっているに違いない」
サクラの懸念は的中し、あたるを連れ添ったロゼが兵士たちをなぎ倒しつつとある隔壁の前に差し掛かる。
「ここにシャトルとやらが、この隔壁の中だな」
そしてその隔壁を、なんと力任せにこじ開けるのだった。
「フッ、思った通りだ」
ロゼの前には大型の宇宙船がその威容を誇っていた。
「ぜ、全艦に連絡・・・・・」
ロゼに倒された兵士の一人が、事態をつげ事切れる。
「全艦に連絡、ムコどのがバラ星の間者に連れ去られ、シャトルで脱出をはかる模様。繰り返す、ムコどのがバラ星の間者に・・・・・」
「なに、どういうことだっちゃ」
先の連絡がブリッジに伝わり、それを受け艦内に通報が走る。その直後、艦内が激しく振動する。
「こらぁ誰じゃ、シャトル動かしとる奴は」
「ふっふっふ、我が名は七化けのロゼ。ムコ殿はたしかに頂いた、それでは、これにて御免」
母艦艦底が大きく口を開け、そこから一台のシャトルがまさに発たんとしていた。
「うちもこうしちゃいられないっちゃ、ダーリンは誰にも渡さないっちゃよ」
と、ラムもランたちの世間話もそこそこに艦内の格納庫に向かう。
格納庫にて戦闘機の1機に飛び乗るラム。整備員の制止をよそに機体を発進させる。
「ちょっと借りるっちゃ」
機体は宇宙へと飛び出し、やがて件のシャトルの姿を目にとらえる。
「あれがダーリンを連れ去った奴の舟だっちゃね、よーしフルスロットルだっちゃ・・・・・!」
機体の推進トリガーを引いたまさにその時、突然機体が爆発し、火球と化してしまった。実はラムが乗った戦闘機は整備不良でエンジンのトラブルを負っていたのだった。
「ラ、ラム・・・・・」
「ふふ、やはり気がかりでしたか」
解凍されラムの戦闘機の爆発に驚愕するあたるに、シャトルを操縦したロゼが声をかける。
その火球が収まった跡に、光の球~戦闘機の脱出カプセルに収まったラムの姿があった。
「一体、何が起こったっちゃ」
爆発のショックから立ち直り、気が付いたラム。そこに弁天が駆け付けカプセルを回収する。
「え、弁天、これはどういうことだっちゃ」
「こいつはしてやられたぜ、ここは引き下がるしかねえ」
すでに父ちゃんの指示で鬼族軍は撤退と相成った。
「そんな、みすみすダーリンを取り逃がすなんて」
「しょうがねえだろ、こうなったら次の手考えるしかねえ」
「やだ、ダーリン、ダーリーン!」
「ばっきゃろー、今はおめえの身が大事だろ」
悔しげに泣き叫ぶラムをなだめつつ、弁天の隆盛号は母艦へと戻っていった。
鬼族軍が全機撤退するのを見計らい、やがてバラ族軍の戦艦も母星へとワープインしていくのだった。
つづく
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