うる星やつら・オンリーユー2022(その4)
さてみなさん、このオンリーユー2022もいよいよ佳境に入り、女王エルが待ち受けるバラ星に舞台を移し、あたるもそのままエルとの逢瀬を過ごすかと思いきや、とんでもないハプニングに巻き込まれる様をお送りいたします。あと今回のヒロインたるエルの声は桑島法子女史にてお楽しみください。それでは、ごゆっくり。
ちなみに今までのお話はこちら。
ということになっております。それではあらためてごゆっくり。
「戯け者、余計な者たちまでも連れてきおって」
バラ族軍の母艦に帰還したロゼを待ち受けたのはババラの叱責だった。実はロゼが乗っ取ったシャトルはしのぶたちが居合わせた別室をスペースの関係で輸送庫に急きょ増設したもので、図らずもしのぶや面堂たちも一緒に連れられた形となったわけである。
「あ、これはその成り行きでしたので」
「まあよい、これはこれで使い道もあろう。とりあえず連れていくがいい」
こうして数人の兵士たちに捕まったまま、しのぶや面堂たちはこの場を後にする。
「さてムコ殿、いささかむさ苦しかろうが、我らが母星までしばらくはかかろう。控えの間でゆっくりとしていくがいい」
ババラの言に頷くあたるは、ロゼの案内で艦橋を後にする。
「さて話は前後するが、先に連れていった奴ら、まず白いのは王宮に、学ランとオカッパの娘、そして長い髪の娘は洗脳して我が兵士にするがよかろう。その他はそのまま冷蔵庫じゃ」
傍らの兵士に指示を与え、亜空間からワープアウトした先、バラ族の母星が映ったメインモニターに目をやるババラだった。
そのバラ族の母星、惑星規模のまさにバラ型の巨大なコロニーの花びらが開き、そこに母艦が入っていく。収容された母艦から折り鶴型のシャトルが飛び立ち、一路中枢へと飛んでいくのだった。
星の中枢、巨大な宮殿にて、沐浴を済ませ、侍女たちとともに着替えていく一人の女性がいた。
「エル様、間もなくババラ様がムコ殿をお連れするとのことです」
「・・・ええ、この日をどれだけ待ち望んだことか、まるで雲の上を歩いているみたいに・・・・・」
エルと呼ばれた女性は、そのまま中央謁見の間に歩を進め、謁見の間にてババラ、ロゼを両脇に引き連れられたあたると対面するのであった。
「・・・あたる様・・・・・」
自分を呼んだ声に、あたるも形式的なのか条件反射なのか分からぬが、言葉を返す。たしかにエルの美貌はこの世のものとは思えないところもあるのだが、どこか心を奪われるまでもない感もしたのだ。
「・・・や、やあ、久しぶり、だね・・・・・」
こうして二人の対面は、そのまま外の庭園にての逢瀬と移るのであった。
「いやぁ、まさか君がこの星の女王様だったなんておれも驚きだよ」
まずあたるがそっけなく声を掛ける。
「そうかしら、私にはそれが当たり前だったの。ほしいものはすぐに手に入り、誰もが私の命令に従ったわ。でもハニーは違う」
あたるの手を握りエルも返す。
「あなた自身の意思で私を選んでくれたのだから」
そうこうとあたるとエルの逢瀬は進められていく。しかし一人の兵士が二人に近付いてきた。
「エル様」
「何か」
先とは打って変わって少し冷ややかな口調でエルが問う。
「冷蔵庫にて件の荷の引見をとババラ様が」
「そう・・・・・」
兵士の報告を受けた後、やや甘えた口調であたるに告げる。
「それじゃあハニー、私はお仕事があるからまた後で」
兵士に軽く頷いた後、庭園を後にするエル。
「あのムコ殿、これより別室にご案内いたします。そこにてお休みのほどを」
「はーい」
やはり考えなしに兵士についていくあたるだった。
しかしその夜、あたるはこっそりと自室から抜け出して先の庭園から奥の間へと足を運ぶ。
「しかし何だな、この星でエルと結婚して、この星でハーレムを造るってのも悪くはないよなあ」
よこしまな妄想とともに足取りは軽い。あわよくばエルの部屋に夜這いを掛けようとしたりとも考えたりもしたが。
「おい、コラ、あたる」
背後の怒声に気付き、それがテンちゃんだと気づいたあたる。
「なんだ、ジャリテンじゃないか、お前どうしてこんなところに」
「わいもしのぶ姉ちゃんと一緒にこの星に連れてこられて、隙見て逃げてきたんや」
しかしその実、まだ子供だったので放っておかれただけなのだが。
「今姉ちゃんたちはどこかへ連れ去られて、面堂たちはいま冷蔵庫に閉じ込められとるんや」
「ううむ、面堂はもとよりしのぶたちは大変だな。まあ、あとでまとめて面倒を見て」
「何呑気なこと言うとるんや、お前ほんとにエルってのと結婚するんか、ラムちゃんというのがいながらほんまに、ええか、ラムちゃんはお前のことほんとに思っとるんやで、それがお前は来る日も来る日も他の女の人にちょっかいを出して、そのたんびにラムちゃんも心痛めてたんやで。それが今回も、どれだけラムちゃんが苦しんでるんか・・・・」
言い募テンちゃんをよそに、あたるは奥の間へと足を進めるのだが。
「人の話を聞かんかい、このどアホーっ!」
火を吹いてあたるを追い回すテンちゃん。しかしその様を兵士の一人が目撃する。
「まさかムコ殿、それにあれは鬼族の子供、しかし後日の式の手前、事を荒立てるのはどうか」
「これはあたしに任せてもらおうか」
そこにすかさずロゼが現れる。
「ああ、ロゼ様」
「明日の非番までのひと仕事だ、まあ、面倒は起こさないさ」
と、あたるたちの後をついていく。
その奥の間の一室、巨大な冷蔵庫の中の数本の氷の柱。その中には容姿端麗な男子が封じ込められていて、その中には先ほど冷凍された面堂の姿もあった。しかしその傍ら、まとめて氷の塊に閉じ込められたコースケ、サトシ、錯乱坊に温泉マーク、オヤジらは別室に運ばれていく。
ちなみにしのぶとサクラ、竜之介はあらかじめ眠らされ、軍の兵士へと調整された。
はじめ着替えマシーンでいつもの服から兵士の服へと着せ替えられ、あとは洗脳を待つのみだった。
「これでよし、あとは解凍してからの洗脳だな」
「さてと、私らも休むとしよう」
といったところで兵士たちの去り際、自然解凍を待つため室内の照明を落とす。
さておき冷蔵庫、新たに氷の柱となった面堂に、なんとエルが近寄っていくではないか。
「地球にも、なかなかの美形(イケメン)がおるようじゃの」
この時のエルは兵士の連絡を受けた時の冷ややかな口調と眼差しだった。
「愛は移ろいやすきもの、昨日の恋も興にも色あせていく。今まで私に言い寄るものはみな私を満たすに至らなんだ。ゆえにこの愛の冷蔵庫を造り、そなたらの愛とともにその美しさを保つのじゃ。ちょうどそなたで千人目、しかしハニーに比べれば、今のそなたらももはや月と鼈」
そこにババラが現れる。
「エル様・・・・・」
「なんじゃ婆や、お説教などは今は聞かぬぞ」
「はあ、なれば一言、何ゆえにあの男に執着なさるのですか」
「婆には分からぬ」
と、そっけなく応え、ババラもひとまずは引き下がる。
「今日はひとまず寝ることにする、朝まで起こしてはならぬぞ」
と、エルは冷蔵庫を後に、自室へと戻るのだった。
「む、ロゼか、うむ・・・・・」
ふとババラもロゼから連絡を受ける。
そして一方のあたる。テンちゃんとの悶着もあれ、奥の冷蔵庫までたどり着いたはいいが、先のエルのやり取りを目撃してしまい今驚愕の表情でこの場を後にしようとする。
「だ、ダメだ、こいつはハーレムどころじゃない。ともすればおれも冷蔵庫で、冗談じゃない。早くここから離れて・・・・・」
しかしすかさず背後に回り込んだロゼに鎮静ハンマーで肩にくっついていたテンちゃんともども眠らされる。
そこにすかさずババラが近付いてきた。
「わしらの一族はな、遺伝学上男が産まれぬ血筋でな、こうして他の星から男を集めるのが習わしじゃった。かつての来訪もその一環じゃ。エル様が初めてご自分の意思で選んだ男、お主には何としても明日の結婚式、受けてもらうぞ」
と、気を失ったあたるをロゼに部屋へと運ばせるババラだった。
つづく
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