悪党の愛すもの<今更ながらルパンレビューPART6>
対峙するルパンとマティア、迫りくるマティアの刃をかわしつつ機をうかがわんとするそぶりのルパン。そこに次元たちも駆けつけトモエの真意を問う。不二子もトモエに心を奪われたことをふがいなく思いつつもルパンを案じる。
実は撃たれた後ですでに次元たちも駆けつけていて、トモエの真意を探るべく一芝居打ったのだ。多少の無理を押しつつもトモエの計画は綿密だったが、しかしルパンもルパンでトモエの暗示の中にはすでに五エ門、次元、そして不二子が中に入っていて、それがルパンの暗示を解いていったのだ。
おそらくは永い、大泥棒稼業にて出会った相棒の次元、五エ門、そして不二子、言ってしまえば宿敵たる銭形も、これが今のルパンを形成したといってもよかった。それに比べれば、マティアをはじめとする今までのヒロインたちは所詮は行きずりの女たちだったのだ。
さておきトモエの本当の目的、一族の秘宝たる匣、それに到る宝物庫のありかを聞き出さんとしたが、意外にもその宝物庫を開けたのは他ならぬルパン自身だった。そしてその匣の中身はルパン一族のルーツそのものでもあった。すべてはルパン自身を手に入れるために。それが叶わぬ夢であっても。
激昂するマティアがトモエに手を駆けんとするもその直前、ルパンがトモエを撃った。これもまた自分自身に決着をつけんとするために。しかしトモエも愛する息子:ルパンの手にかかることに満足を覚えつつこと切れるのだったが。そしてルパンも過去の因縁を一つ断ち切ったことになる。
しかし収まらないのはマティア。刺客としての生を植え付けられ、人生をゆがめられた鬱憤を晴らせない今、ルパンにもその刃を向ける。ルパンもマティアの殺意を受けて立つことにするのだが。
再び対峙するルパンとマティア。屋上での死闘をよそに傍観を決め込まざるを得ない次元たち。一進一退の攻防もやがてはルパンが押し返していく。その上で悪党としての生を背負ったマティアに悪党としての心構えを諭していく。その生がトモエの暗示だとしても、背負った罪を負って生きることこそが悪党の生、そして美学であるということを。
そこに現れたのが銭形、今までの推理と何より刑事のカンがここまでたどりけたというのだ。マティアの検挙の際に自身が手にかけたアリアンナが生きていていたことを告げる銭形。その上でルパンもマティアの応えを聞き出さんとする。対するマティアも自身の悪党としての生を受け、自分の意志で生きることを告げる。こうしてマティアは連行され、一連の騒動は一応の解決を見たのだった。
しかし肝心の一族の秘宝、ルパンの過去に関するものが残されており、厳重なセキュリティをかいくぐりつつ、ついには大金庫へとたどり着き、その扉を開く。しかしそれ自身が最後の罠で、これもひとまずかいくぐり屋敷を後にする。しかし秘宝は他の場所にある。思案に窮するルパンに考えすぎと諭す次元、そのうちに何かに気付いたルパンは、倒れたトモエの懐に、ようやくお目当ての匣を手に入れるのだが。
炎の中に燃えゆく屋敷を前に、トモエが匣に込めたルパンへの愛情。それだけはトモエの本心であったのが確かだった。ルパンもその匣を開けるやすかさず炎の中に投げ込む。いずれにしてもルパンの過去もトモエの愛情も、その箱とともに、おそらくはルパンの心の中に消えていくのだった。
一族のルーツが何にせよ、それがルパンを縛るものであるのならそれを絶ち切った今、新たなる仕事と冒険、それに挑むのみである。
以上がルパンに関わる女たちの事件簿となった後半のストーリーだったが、前半のメインとなるホームズやモリアーティ、言ってしまえば前作のキャラたちもいずれは何らかの形で再登場するだろうか。これも以降のシリーズを待つしかないけれど。
ここにルパン三世の歴史がひとまずの一区切りをつけられ、また新たなる歴史の1ページも刻まれることは、これまた述べるまでもないだろう。それまではしばしのお別れということで、この記事をしめることとしましょう。
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