第15話:姫君と騎士たち・前編(その3)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>
さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、いよいよ安住の地を求めんと向かう難民たちに襲い掛かる集団。それらから彼らを守らんとするアルセス、リンダ、そしてジュドーが現地に向かわんとするいきさつをここにお送りする運びです。はたしてクセの強い感もある彼らはいかに任務を果たすことができるか。そしてその先にあるものは何か、といったところで、それでは、ごゆっくり。
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第14話:姫君と騎士たち・前編
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
アルセス、リンダ、そしてジュドーが、難民たちの保護と、金目当てで彼らの捕獲をもくろむ勢力の取り締まりのために動き出す。
それに先立ってジュドーは、軍事関連の情報を取り扱うアフリカ原住民の女性と連絡を取っていた。彼女は先の第一次ネオジオン抗争にてジュドーたちのダカールへの踏破行にて対峙するも、ジュドーの説諭で収まり、以後は情報収集と伝達を生業とする仕事に従事した。それについてはナイメーヘンのジルとカイ・シデンのとりなしもあることをここに記しておく。
ともかくも彼女からもたらされた情報は、時系列の誤差もわずかにあるとはいえ、多少の急務であることも知ることができた。
それでもジュドーにとってはそうそうあせるでもなく、今後立てられるであろう作戦についてあらためて構築せんともしていた。
「そんなに大規模な集団ではないからたしかに扱いやすいが、問題は同じく作戦にあたる連中だな、セイラさんやアルベルト氏の信任を得ているというのだが、欲を言えば役に立つかだな。まあ結局はこれもなるようになるしかないといったところだが」
ともかくもジュドーも指定された地点へと向かうのだった。
そんな折、荷物をまとめどこかへと向かう一団があった。
「ここまで来れば、あとは保護施設まであとわずかだ」
一段の誰もが疲れの表情を隠し切れなかった。そんな彼らを若い男が前進を促す。そんな時だった。
突然前方から何やらの機体の起動音がするではないか。
「しまった、もうかぎつけられた」
「そんな、あたしたちどうなるんだい」
「僕たち、死んじゃうの」
「そんなことないよ。ただおとなしくすれば」
一団の中で動揺が走る。しかし一団の中には武器を手に応戦せんとする者もいた。
そして彼らの目の前に、数機のMSが立ちはだかる。どこか統一されていない機体群は連邦軍の制式のものでもなく、ましてネオジオン軍のものでもない。いうなれば傭兵たち、というかチンピラたちといってもいい連中ばかりであった。
「おっとそこまでだ難民ども、おとなしく我々についていけばよし、さもなくば天国の家族のもとにご案内だ」
「くそっ、なめやがって」
一団の若者が銃を構えるが、ジム系MSの頭部バルカンから発射された弾が若者の足にヒットする。しかし撃たれた弾は実弾ではなくいわゆるラバー弾だった。しかし当たれば良くて捻挫は避けられない。
「こいつは警告だぜ、命が惜しけりゃ大人しくしな」
一団にどよめきが起こり、中には悲鳴を上げるものもあった。
同じ頃、現地に向かうリッドが何やらを察知する。
「どうした、リッド」
「う、うん、何やら悲鳴みたいなのを聞こえた気がするんだ、どうやら襲われたみたい」
「なんだと、まさかここまで早いとは」
「どうやら急がねばならぬようですな」
アルセス、マツナガの懸念から、リッドの不安が募り、ついにはジオングを突出させる。
「僕、先に行ってくる」
「お、おい、リッド」
レトーの制止を振り切り飛び出すリッド。しかしアルセスは、
「ここは行かせてやれ。どのみち俺たちが出遅れたんだ。ここで挽回しないと」
「でも、大丈夫かな、あの“もどき”の怖さには及ばないけど、あれだって結構な火力だっていうだろ」
ティクバも懸念の声をあげる。
「うむ、そのために手をチューンアップ、というよりダウンかな、ともかく調整したから被害も少なく済むはずだ」
「それはそれで不安、だと思うけど」
「ともかく俺たちも急ごう」
というわけで、ティクバの不安をなだめてから突出したリッドを追ってアルセスも現地へと急ぐ。
また一方でリンダたち、MSの一団と遭遇する。こちらも悪く言って寄せ集めのチンピラどもであった。
「あ、姐さん、て、敵です」
「そんなもん見りゃ分かるよ」
メンバーの一人の報告に舌打ち交じりで応え、やむなく戦闘態勢に入る。リンダが乗る“アッガイ”はかつての一年戦争で活躍したそれの外見をそのままに性能そのものはもちろん最近の技術を取り入れていて、並のMSももちろん遅れは取らなかった。それを証明するかのごとく、まず敵の一機を腕の一撃で打ち倒す。この時クローも引っ込んでいて貫通には至らなかったが、その衝撃は敵の無力化には十分だった。
続いてセシルの“カプール”も、リンダの戦いぶりから、あくまで敵の無力化をとの方針で自らの装甲を利用しての体当たりをメインに敵を打ち倒す。
そして残りのメンバーが乗る“ガズ”は、かつてグリプス戦役で活躍したガルバルディを発展した機体の量産機として開発されたものの、試作機段階で数機のロールアップどまりとなったものの、アルベルトによってリンダ隊に配備されたものであった。
こちらも一通りの武装だが、装備したランスで応戦せんとするも、いずれも及び腰の戦闘でやや押され気味ともなっていた。
それでも個々の程度こそあれ敵をよくよく押し返していき、リンダやセシルの援護でなんとか打ち倒すことができた。
そんな折、また一機のMSが接近してくるではないか。
「ようやく間に合ったな、襲撃が早まったと聞くが、さて俺の味方はどっちだ」
そのMSは周囲の状況を一瞥するや、
「“カブール”に“ガズ”か、どうやらアルベルト氏の言っていたのはやはりこちらか」
と、さしあたりセシルの“カブール”に近付いていく。
「だいぶ手こずっているようだな、しかしこんなところでとどまっている場合じゃないはずだ。本命が今ピンチだというからな」
そのMS“ディジェ”にセシルが呼び返す。
「それはそうと、あんた一体何者なの」
「おう、俺はジュドーという、しがないMS乗りだ」
その応えにリンダが驚きとともに返す。
「ジュドー、まさか第一次ネオジオン戦役の英雄のジュドー=アーシタかい」
「英雄かどうかは分からないがな、なるほど、あんたがアルベルト氏の言ってたリンダって人か。ともかく、あんたたちの力になろう」
と、ジュドーは未だ味方が手こずっている敵のただ中に飛び込んでいくのだった。
ミネバの期待に応えてか、アルセスが、リンダが、そしてジュドーが襲撃者たちを退け、やがてこの戦乱の収束に動き出していく。それは人類の新たな路につながると信じて。
次回・機動戦士ガンダム・クレイドルエンド
姫君と騎士たち(後編)
君は、生き延びた先に何を見るのか。
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