第14話:父と娘と(その2)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>
さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、いよいよ中南米の組織に、キッカたち特務隊、そして隠された英雄たるコウが当たることになり、その様を娘のミウが見守るに至るいきさつをお送りいたします。それでは、ごゆっくり。
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第14話:父と娘と
その1
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
そもそも南米の裏組織については、前世紀の南北アメリカ大陸の経済の格差から非合法のビジネスを主な生業とした者たちが、いつしか中南米を支配するに至った。しかしそれら諸勢力は宇宙世紀開闢前後における国家間の統合を機として弱体化を余儀なくされた。
ことに宇宙帰りの若者が欧州を中心として裏社会を取り仕切ったかと思えばどこぞの財団に取り入り後の連邦政府と癒着を始めてからそれが一層拍車がかかったのだ。
そんな中後にジャブローの連邦軍基地が建造され、合法非合法を問わず彼らも連邦軍との癒着をはじめ、その勢力を盛り返すに至る。かと思えばグリプス戦役の前哨戦でジャブロー基地が破壊、破棄され再び停滞。それでも新旧ジオン、ティターンズの残党との癒着も続け多少なりの勢力を保ち今に至るも、ここ最近になってそれら軍事勢力がギャング団から離反し、今まさに存亡の危機にも繋がろうとしていた。
かといって彼らとて手をこまねいているわけではなく、ここ数年の戦乱の産物として、裏ルートで払い下げられたMSとその関連の機器をもって自勢力の装備を充実させ、加えて構成員のいくらかもパイロット崩れもはじめ、多少なりと軍事的な訓練を受けた者もいて、現在に至りいくらかがそれなりの勢力となっている。
そんな連中を制圧し、治安を回復させるのが今回キッカたちの任務である。
もちろん先の事情もあり、勢力的には必ずしも脅威ではないのだが、
「旧ジャブローも汚染された地区を除いて結構広大で、マナウス基地が調査しただけでも数知れない。その中でも先述の軍事勢力を抑えることで、この地区の取り締まりを容易にすることが前提でもある」
「どこまで信頼がおけるかは分からないけれど、マナウスが調査した各拠点を抑えるのを前提で作戦を進めます」
トーレスとキッカの意見に合わせ、
「あと今回の作戦を受けて、マナウスから兵員が派遣され、比較的小規模の組織の懐柔にあたるとのことです」
ライエルの報告にオペレーターが基地からの連絡を受ける。
「報告します、比較的中規模の諸組織が合同で訓練にあたるとのことです」
「やはり、私たちを誘おうってことかしら」
「その可能性は十分にある、たとえ罠でもこれに乗じてもいいかもしれない。もちろんくれぐれも気を付けて」
こうしてTWも戦闘配備に入りつつその合流地点へと向かう。
しかしその合流地点にてまさに風雲急を告げる事態が起こるのだ。
話を少し前にさかのぼる。
誰が言い出したかは今となっては不明だが、南米の組織で中規模のものたちが現在の状況を鑑みていわゆる軍事訓練を行おうとしたのだ。
「このまま手をこまねいてちゃ俺たちの破滅だ。こうなったら一旦我々も手を組んで連邦の奴らに目に物言わせてやろうじゃないか」
こうして各組織に2、3機、合計して30数機の集団が一堂に会し、日ごろの訓練の成果を見せる一方、自分たちを討伐せんとする連邦軍にも対するべく行動を起こすのだ。
訓練は順調に行われんとする中、いわゆる哨戒役の人員が、自分たちに近付くMSらしき存在を確認したのだ。
もちろんこれあるを予測したリーダーの一人が、
「よし、そのまま訓練を続けるとして、近付いてくる奴が敵なら袋叩きにしてやろう」
こうして自分たちに近付いてきたそのMSが有効射程に入るや、一斉に銃口を向ける。
しかしいざ発砲するや、それを予測したかのごとくそのMS、ガンダムMk-Ⅲはそれを難なくよけつつ、肉薄した1機の手足をサーベルで切断し動きを封じる。
「まずは、1機か・・・・・」
「な、何者だ、貴様!?」
「待て、この声は、まさか・・・・・」
「元地球連邦軍少尉、コウ=ウラキ。もっとも今はしがないMS乗りだが、今となっては知ってる奴はそうそういるわけじゃないな」
「・・・コウ=ウラキ、デラーズ戦役にての隠れた英雄か・・・・・」
「ほう、知ってる奴はいたんだな、ともかくもお前さんたちには恨みはないが、あの人の、そうあの人たちのために大人しくしてもらおうかな」
と、マークⅢのサーベルを構えるコウだった。
一方でTWの格納庫では、キッカ、ライエルをはじめMS部隊が出撃を控えていた。しかしそんな中、
「戦闘が、始まっている!?」
「はい、組織のMS群に所属不明のMSが戦いを挑んでいるとの情報が」
整備員の一人がキッカに状況の連絡を告げ、それを傍から耳にしたミウが一時の躊躇の末、格納庫を後にし艦内に入っていく。それを見かけたアレン。
「ミウ・・・・・」
「アレン少尉」
「・・・はっ!」
しかしミウの様子をライエルも目撃し、まずアレンをたしなめる一方で、
「先輩・・・・・」
ブリッジ内のノックスに連絡を取り、ノックスもそれを受ける。
「ああ、そちらも大丈夫だ。引き続き任務にあたってくれ」
「了解」
戻ってキッカもそのライエルのやり取りを聞いてから。
「その乱入者はおそらくあの人でしょう。まず陣頭には私が立ちます」
「大佐」
「その上で速やかに現地に向かいます、まずアレンとライエルが援護に回って。あと各員も追って対処して」
「はっ」
「了解」
と、アレンとライエルが応答し、まずキッカのニュープラスがカタパルトに乗る。
「キッカ=コバヤシ、ニュープラス、行きます!」
こうしてTWからニュープラスが出撃するのだった。
「ミウ、コウさんは必ず助けるから・・・・・」
そのTWのブリッジにて、なんと格納庫から飛び出したミウが入ってきた。
「ほう、早かったね」
先にライエルから連絡を受けたノックスもこれあるを予測してか動じず、トーレスもそれに準じた対応をする。
「今は戦闘配備中です。関係者以外の立ち入りは禁止です」
オペレーターが叱りつけるも、
「さしあたり隣の席に座りたまえ」
ノックスが厳かに告げる。
「あ、ええと・・・・・」
「戦闘となればここも全く安全ともいえないからね、さあ急いで」
ノックスに促されるままにミウもキッカの指揮官席に座る。
「お父さん・・・・・」
「まあウラキ少尉も我々はともかくあの人たちにも大事な人材だからね。ああ念のためベルトを締めるといい」
トーレスに促されミウも席のベルトを締め、事の成り行きを見守ることにした。
そしてその現地にて、敵のMSを各個撃破で撃ち倒し、というかほとんどを手足を切断し無力化させ、残るは10数機とあいなったのだが、流石にコウの戦闘力を把握してか、無用な突出は避け各機で包囲する戦法を取るのだった。
「くっ、ここにきて敵も慎重になったか、奴らが一気にかかれば流石に俺も・・・・・」
実際マークⅢの装甲も激闘の末無数の傷が刻まれ、コウ自身も疲労の域に達していた。
「もはや俺たちもここまでだな、こうなったら刺し違えても貴様の首を討ち取ってやるぜ」
「こちらも殺る気まんまんだな、さしもの俺もここまでかもしれないか、いやしかし・・・・・」
マークⅢも武器を構え直し、
「ここでやられるわけにはいかん。俺には、妻や子がいるんだ!」
その時であった。
「よくぞ言ってくれました」
数条のビームが飛び交い、包囲した数機のMSをなぎ倒す。そのせつな、駆け付けたニュープラスが割って入るように姿をあらわし、マークⅢに接近する。
「なんだと、あんたは、まさか・・・・・」
「キッカ=コバヤシです。ミウとの約束のため、助太刀いたします」
本来なら反乱鎮圧の任務ためのついでではあるのだが、本来の目的の如くにキッカが告げる。こうしてコウとキッカの共闘がなし崩し的に始まるのだった。
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