ザ・ドラえもんズオリジナル・怪盗ドラパン編:セリーヌと産業革命(その1)
さてみなさん、今回のザ・ドラえもんズは、怪盗ドラパン・セリーヌと産業革命の第1回目をお送りいたします。
フランス革命から時が流れた頃、イギリスの産業革命のあおりを受け。セリーヌたちも騒動に巻き込まれる様をお送りする運びで。今回はそのさわりをお送りすることとなります。まずはセリーヌの産業革命に対する想いをお楽しみください、といったところで、それでは、ごゆっくり。
その日もセリーヌとソフィー、マイアたちはソフィーの知り合いが経営する近所の工場で洗濯仕事に精を出し、ドランことドラパンは工場の荷物の積み下ろしに従事していた。
それからややあって作業を切り上げ、工場長がセリーヌたちを労う。
工場長「いやあご苦労さん、ティータイムの前に汚れた体を洗いたまえ。隣に浴場があるから」
工場長の言葉に従ってセリーヌたちは少しぬるめのシャワーを浴び、体を清める。ついでにソフィーがドランの体を磨いていく。ドランもこれは苦手だが、きれい好きなソフィーの言いつけだからあまり文句も言えない。
その後で工場長夫人の主催でささやかなティータイムが催され、小さなマフィンと淹れたお茶でひと時を楽しんだ。
そこで工場長がある話題を切りだす。
工場長「最近となりのイギリスで工業などが著しく発展したという話題を耳にするけど」
ドラン「うん、それは産業革命ってやつか、むぐっ!」
心なしか口に出したドランの口をセリーヌがふさぐ。
セリーヌ「ちょっとドラン、ここでこの話はまずいでしょ」
ちなみにセリーヌもドランことドラパンが未来の世界のロボットであることを知っていることから産業革命のことはある程度分かっていた。だからこそここで産業革命という言葉を切りださされてはまずいと思ってのことだったのだが。
工場長「うむ、そのネコ君の呼び方は結構うまいな、いや革命という言葉も物騒だが、国民の生活が豊かになることは喜ばしいことだよ。たとえば洗濯にしても荷物運びにしても、イギリスで導入される機械の力があれば君たちもそう苦労しなくても済むだろうがね」
セリーヌ「あ、はい、でも、私たちも生活のためにお仕事も欲しいですし、あまり楽になるのも考えもの、だと思います、けれど」
工場長「そうだね、まあその時はその時で考えればいいさ、何せ君たちも若いから。さあさあ、お茶が冷めるから早めに飲みなさい。代わりのお茶も用意しているからね」
「あ、はい・・・・・」
というわけで工場長のはからいでお茶会の後に夕食にも招待され、ドランの先導で帰路につくのだった。
ソフィー「工場長さん、感じのいい人だったね」
マイア「でもセリーヌの言うことも一理あると思うよ。あたしだって体動かしたいし、家族の為にもおカネも欲しいしね」
セリーヌ「おカネねえ、でもそれだけで生活が豊かになるとも限らないからね」
マイア「へえ、いいこというじゃない、たしかにいい服と食べるものさえあればあとはそういらないからねえ」
ソフィー「そうねえ、おカネさえあれば何でもできる、ってわけじゃないから。でもたまにはパーッと使ってお遊びしたいからねえ」
セリーヌ「これもソフィーらしいわねえ、でも今は次の仕事をどうしようかを考えていきましょう」
帰路話に花が咲く三人をよそに、ドランも物思いにふけるのだった。
ドラン(でも産業革命か、たしかにこの時期に差し掛かっているけど、このフランスでも何かの動きがあるかもしれないな。でもその時はその時だし。そろそろ僕らの仕事も欲しいな)
ドランもドランなりに考えを巡らせつつ家路につくのだった。
次の日、セリーヌの部屋に届けられた新聞が二人の話題となった。
ドラン「なになに、イギリスのマイルス男爵が来訪。新たに開発した機械を紹介する。だって」
セリーヌ「そういえばドランが言ってた産業革命の機械の紹介ってところね。結構面白そうね」
先日の仕事で幾分懐が温かくなり、少しユタカな朝食をとることができた二人。食事をとりつつも新聞の話題に花を咲かせ、それに伴っての“次の仕事”に話題を移そうとした時だった、
ソフィー「ねえセリーヌ、マイルス男爵の機械の展覧会についてだけれど」
ピエール「今度の休日にぜひ一緒に行かないかな」
なんとソフィーとピエールが一緒にセリーヌたちのもとを訪れたのだった。
セリーヌ「そ、それはいいけど、めずらしいわね、二人一緒に訪れるなんて」
ソフィー「そもそもピエールがセリーヌ目当てで訪れたからね」
ピエール「え、いや、それは・・・・・」
ドラン「おおかた展覧会のことセリーヌに伝えようとしたら途中ソフィーにつかまったのか、ばかだなあ」
セリーヌ「そんなこと言うものじゃないわよ」
ドランを小突きながらもセリーヌが返す。
ピエール「ほら、せっかく僕も休暇をもらったからね。セリーヌも一緒にと思ったんだ」
セリーヌ「うん、でもたまの休日なら今回はみんなで行きましょう。最近仕事ばかりだったからね」
ソフィー「それじゃあ決まりね、マイアにも伝えておくから」
と、一足早くマイアのもとに駆け付けるべく部屋を後にするソフィー。
ピエール「僕も支度をしてくるから外で待っていて」
ピエールも部屋を後にする。
セリーヌ「行っちゃったわね」
ドラン「でも今回は機械の展覧会だから“仕事”はお預けかなあ」
セリーヌ「これもしょうがないわよ、さあ、私たちも支度をしよう」
というわけでセリーヌたちも外出の支度をしてピエールたちを待つことになる。
しかしこの展覧会でセリーヌたちもとてつもなく恐ろしくも恥ずかしい目にあうことは今はまだ知らないのであった。
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