禍福のアンバランス:逃れられないのが運命なのか<本当は怖いドラえもん>
繰り返しながらも元来のドラえもんの目的といえば、不運つづきでどん底の運命を送りそうなのび太くんを助けてより良い運命を歩ませるといったことであった。
それに関連してそもそも“運命”というものは「はじめから定まっているもので変えようもない」ことがある。その前提というのは『ミノタウロスの皿』やら『ノスタル爺』やらの運命を変えようとして結局ままならなかったといったお話から読めることだろうけれど、ドラえもんのお話についてもそれに近いお話がいくらか掲載されていて、それらを紹介してその問題点について述べたいと思う。
『あとから日記』
日記をつけようにも三日坊主でなかなか続かないのび太くんのために“あとから日記”を出して今までの行動を書くことができた。ところがこれから起こりうる事柄も書いてしまい、その中に「スキーですべってけがをした」という事項があり、何とかスキーでけがをするのを防ごうとスキーを部屋にしまおうとして、階段ですべって結局けがをしてしまったそうな。
『タイムマシンで犯人を』
その日のび太くんは学校の窓ガラスを割った犯人に仕立て上げられ、その無実を晴らそうとタイムマシンで犯人を見付けようとするも、隠れて見張った際にぶつけられたボールを投げ返した際に、結局自分がガラスを割ったことに相成ったそうな。
とまあ代表的なお話を挙げてみれば、結局初めにあげられた事柄の因果関係、つまりどのように起こってしまったかをつきとめるといったお話で、最初にあげられたお話よりは深刻なことになるまでもなく、分かってみれば「ああ、そうだったのか」と思った読者の人も少なくはないはずである。
それでも最悪の事態をひとまずは回避しようとするお話もある。その代表としてこのお話をば。
『災難予報機』
その日電話型の道具でジャイアンに連絡をしようとするも、受話器から「ふみつけられる」というメッセージが流れ、はたしてジャイアンは母ちゃんにお尻で押しつぶされてしまった。
これは誰かの災難を予報する道具で、しかもそれを回避することはできないという。それでもしずかちゃんの災難を知ることができ、何とか回避しようと見守ったところ、のび太くんがゴキブリの着ぐるみをきたタレントにぶつかったことでしずかちゃんの災難を回避したそうな。
といったところで「災難は回避できなくて、それを無理やり回避しようとすれば自分に災いが降りかかる」といったシチュエーションを描いたお話も終わってみればいつものズッコケオチにもつながるという、つまりは笑い話ということにもなり、先の悲壮感はそうそう感じ得ないものでもある。
そんなこんなで、日頃災難に囲まれがちなのび太くんでも、そうそう回避しえなくてもひとまずの努力次第でそのダメージを抑えられる。つまりは心がけ次第で悪い事態も防ぎえることができるというのが結果として描いたものではないだろうか。
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