第12話:アルセス・リターンズ(その3)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>
さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、TW内で取りざたされるアレンとミウとの仲をキッカたちクルーの対応と、アルセス一党内にてこれからの事態に想いを馳せる少年たちとの会話をお送りする運びです。それでは、ごゆっくり。
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第12話:アルセス・リターンズ
その2
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
「なるほど、アレン少尉とミウが」
ブリッジ内にてノックスとライエルが先日二人が親しげに会話をしたのを話しあう。そもそもアレンとミウとの仲は前々から噂をされていたが、当の本人たちが万事控えめにいたこともあってあまり干渉をしないでいた。しかしここ最近その噂自体が大きくなりつつあるので、誰しもが少し顔を割ってみようという想いが浮かびつつあるのだ。
そんな中での二人の会話である。
「艦内でも結構噂していましたが、現在の状況もあって当の本人たちもそれをわきまえていますが」
「しかし俺たちも今どうこうとできるというわけではないな。もしそうならキッカが何かミウあたりに何かを言ってくるだろうが」
ノックスの懸念の一方でキッカもクムの自室を訪れ、
「・・・そのミウのことだけど、当面見守りたいのも正直なところね。まず動くとすれば・・・・・」
というわけでキッカとノックスもまずは黙認の形で見守ることになった。そんな折、アレンがふとギルダスに呼ばれることになったが。
変わってCRUB EDEN
その夜ティクバがめずらしく屋上で夜空を見上げたたずんでいた。いつもは夕食後すぐに自室に入ってからしばらくして寝入るところだが、今回に限ってこれからの自分たちの行動をおもんばかってか、ただ星空を見上げるのみだった。そこにリッドが顔を出してきた。
「どうしたのティクバ、空を見上げてて」
「うん、これからのこと考えてね、ジンネマン艦長やバナージ、それにみんなのことを思い出してね」
「やっぱり戦いになるならなるべくキッカ大佐の部隊とは戦いたくないしね」
それ以上にバナージのいるミネバが擁するガランシェール隊とも対峙はしたくはない。その想いはティクバと同じだった。
「もう一息で戦乱の時代は終わるかもしれないんだ。それに関して気合も入るけれど、それについて怖気づいちゃいられないけれどね」
「なるべく僕らが気を引き締めなきゃいけないよね」
というわけで、しばらく夜空を眺めている中、なんとマツナガが顔を出してきた。
「うむ、君たちも眠れないのかな」
「ああ、マツナガさん」
そこには老練なる元軍人よりも、多少気さくなおじさんに見えるマツナガの姿があった。
「かくいうわたしも、高名なるアルセス一党を頼りに赴いたが、やはり君たちのような子供までもが戦わねばならぬ状況とは、申し訳なく思っている」
「うん、怖くないと言えば嘘だけど、僕らも兄貴のため、それから平和のために力を尽くさなきゃと思っているんだ」
「もちろん、生き延びて、すべてが終わった後で、本当の意味で人々のために働きたいな。これも虫のいいことかもしれないけど」
「しかし、誰かがやらねばならぬこともでもあるな」
二人の決意を噛み締めるようにマツナガも応える。
「今は自分たちができることをする。それだけでも人々の歩みと成し得る。それを信じていければ、何も怖れることもないでしょうな」
その言葉に二人もうなづく。
「さて、今日はもう遅いゆえ、明日に備えて休むことにしようか、わたしが言うまでもないがやることは多いから」
「うん」
マツナガの促しに二人も中に入っていく。そんな様をアルセスが傍目で見守っていた。
また変わっていずこかの建物の中にて、何人かの人物がその薄暗い部屋にて会合を行っていた。
「しかしキッカ大佐もやってくれるものだな」
「たしかに、俺たちもやりにくくなっちまった」
「それにジオンのミネバって姫様と、シャアの妹が話し合いされちゃあどんなことになるやらだ」
「そういや、アルセスの小僧も最近名を上げたりして何かと調子づいてきたな」
「ああ、そういや先の一件でキッカ大佐の部隊は一兵でも手強いっていうからなあ」
「それはそうと、俺たちももうちょっとまとまらないと今後ヤバいぜ」
傭兵やチンピラの部隊の長たちが口々に現在の状況を憂いつつも話し合う。そのうち座長らしき人物が初めて口を開く。
「諸君らの懸念は聞かせてもらった。当方としてもこのまま妥協されては立場も危うくなってしまう」
その言葉に一同は黙りこくり、ややあって代表の人物が応える。
「そのために俺たちに協力しろというのか、いやそれは致し方がないが」
「それについての便宜ははかろう。あともう一つの懸念があるが」
「ああ、コウって奴もいたな、たしかアナハイムのウラキ博士の旦那だ。昔何かの事件で連邦の監視下にあったが、それが解かれたら妙に調子づいて今じゃなんとジオンと手を組んだって話だ」
「まったくやってくれるぜ。奴の軍人の誇りもどこへやらだ」
「・・・ともかくだ」
再び座長が言を発し、再び沈黙とともにそれを見守る。
「それらの動きを掣肘するために、あらためて君たちに協力を仰ぎたい」
一同が重く頷き了承の意を伝える。しかしその座長がわずかに口元をゆがめる。
(これでうまくいけば、連邦の地位も安泰だ、いやこの俺自身も・・・・・)
この世界をおおう闇を体現するかのごとく、男の笑みも深淵を見据えているかにみえた。
次回予告
この世界を覆う闇は未だ晴れていない、
その闇に挑むキッカのもと、彼の配下たるギルダスも闇の一端に挑まんとしていた。
次回 機動戦士ガンダム・クレイドルエンド
蠢くものたち
君は、生き延びた先に何を見るのか。
| 固定リンク | 0
「ガンダム」カテゴリの記事
- 第11話:地球の魔女<機動戦士ガンダム・水星の魔女レビュー>(2022.12.27)
- 第10話:巡る思い<機動戦士ガンダム・水星の魔女レビュー>(2022.12.20)
- 第16話:姫君と騎士たち・後編(その2)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>(2022.12.18)
- 第9話:あと一歩、キミに踏み出せたなら<機動戦士ガンダム・水星の魔女レビュー>(2022.12.13)
- 第8話:彼らの選択<機動戦士ガンダム・水星の魔女レビュー>(2022.11.29)
コメント