新・禍福のアンバランス:幸運と不運とイマシメと<本当は怖いドラえもん>
さてみなさん、今回の本当は怖いドラえもんは、以前記した禍福のアンバランスを今一度文を組み直し、ひとまずは読める記事を目指して記載したものです。いずれはもう少し形になれることを期待して、それでは、ごゆっくり。
今までの記事でも述べたように、本来ドラえもんの使命はそもそもどん底の人生を送るはずののび太くんの運命を変えるべく手助けをするものだった。
その運命を変えること、まずはのび太くんの不運をなんとかすることがその第一歩でもあった。
しかしその不運について、まず自身が不運に打ち勝たなければ意味がないことは初期のうちからも述べている。
まずは『ラッキーガン』のお話から、
その日も何かとついていないのび太くんに“ラッキーガン”なる道具を使って幸運を呼び起こそうとするのだが、その後の紆余曲折、簡単に言えばスネ夫やジャイアンたちに幸運を取られ、結局のび太くん自身が不運を受けてしまいひどい目に遭ってしまったそうな。
このお話について努力よりものび太くん自身の度胸のなさが、せっかく与えられたはずの幸運を失い、かえって不運が降りかかったお話でもある。ともあれこの時期はそれ以前のオバQばりのズッコケ話ととらえても差し支えがなかったが。
ところが80年代半ばのいわゆる中期あたりから、次第に教訓じみたお話が露骨になっていく。
その代表と言えるのが『不運はのび太のツヨーイ味方!?』の巻(ドラえもん+1巻)である。
その日も何かと災難に陥ったのび太くん。しかしドラえもんは「もっとしっかりしていれば」とはじめ取り合わなかったが、途端のズッコケに根負けしたのか、結局“空中シューズ”を出してやることにする。
それで気をよくしてあちらこちらを飛び回っていたところを、ドラえもんはお仕置きとばかりに“連発型不運光線銃”を発射する。はたして回りの物に当たったりと散々な目にあい、満身創痍ののび太くんにここぞとばかりに説教をはじめるドラえもん。対するのび太くんも釈然としない中、聞き入るしかなかったそうな。
とまあ最後ドラえもんの胸先三寸でいらぬ災難に遭ったお話ということで、これが一番極端な例示だろうし、やはり話の進め方が卑怯だという感があった。そのいきさつからか、作者の藤子F先生も単行本に載せるのをはばかられたものを、後にドラえもん+でひとまず掲載にこぎつけられた。
はじめ道具を出ししぶるドラえもんを引き止めるつもりがわざわざ扉脇の壁にぶつけさせたり、シューズを使って空を駆けめぐったら銃を使ってのお仕置きである。
たしかにこのお話にてそんなに悪いことをしないのに、あれだけのお仕置きである。いくらギャグやら教訓やらと断っても、ここまでくれば流石にいじめと受け止められるだろう。
たしかにこのお話が極端な例だとして、総てがこういった具合ではないとはいえ、お話の中での諸問題の責任、言ってしまえば業までものび太くんに押し付けた感があり、どこか釈然としないお話が続いてしまった感がある。
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