ドラえもん特別編:のび太とお嬢さま(前編)
さてみなさん、今回のお話の前に、一連のアニメ企画から今回の制作に至った経緯を述べたく思います。
まずドラえもんズのお話にてそれぞれの国のしずかちゃん的キャラをお送りする一方で、そのライバル的キャラと絡めたお話を二、三お送りし、その後ツイッターにてここ最近のアニメ放映にていわゆるモブキャラの子の描写も話題となり、それらを合わせて「はたして当のしずかちゃんにもライバルはいるのか」という想いが頭に浮かんだ。
それらを踏まえて一つの原作エピソードにたどり着いた。
それが『のび太が消えちゃう』のお話である。
そのお話はパパが今後も絵を続けていくことで、とある家の一人娘との婚約を条件に援助すると持ち掛けられるも、結局その援助を断っていくというお話だった。
そこの一人娘である金満兼子さん、彼女に娘がいればしずかちゃんのライバルにもなるかもしれない、といったところで考え出したのが後述の彼女、金満麗子だった。
もちろんこれは先述後者の立花さんたちと合わせて原作のお話を逸脱して(大きく離れて)いるとは承知しながらも、またこのお話も原作のドラえもんとは関係のない編者の創作だとことわっておいて、のび太くんやしずかちゃんとどうかかわって一つの騒動に話が転がるか、それでは、ごゆっくり。
ある日のび太くんが家から帰ってくると、何やらママの親し気な話声が聞こえた。何だろうと少し顔をのぞかせようとすると。
「まあ、あなたが玉子さんのお子さんね」
と、おそらくのび太くんと同じ年ごろの娘連れの身なりの良い女の人が話しかける。
ママ「のび太、この人はママのお友だちの金満兼子さんとその娘さんの麗子さんよ。のび太もご挨拶なさい」
のび太「あ、はい、こんにちは」
兼子「ほら、麗子もご挨拶なさい」
麗子「はい、ごきげんよう」
と、女の子の麗子の挨拶を受けて、のび太くんもひとまず部屋へと戻っていく。
兼子「ところで、のび助さんは相変わらず下手な絵を描いていらっしゃるのね」
ママ「まあまあ、それほどでも・・・・・」
との会話を聞き流しつつ、のび太くんも階段を上りつつふと思いをいたす。
のび太「でも、どこかで見た感じがするな、あの人」
部屋に戻るとドラえもんが待ち構えたかのごとく立っていた。
のび太「あ、ただいまドラえもん、でもどうしたの」
ドラえもん「のび太くん、ちょっとまずいことになったかもしれないよ」
のび太「えっ、どういうこと」
ドラえもん「かつてパパが画家になればと思って過去の時代に行ったことがあるでしょう。今家にいる女の人のがその時結婚させられそうになった兼子さんだよ」
のび太「あっ、そうか、でもどうして今になってうちに来たんだろう」
ドラえもん「おそらくパパやのび太くんのことで用があるかもしれないかもね」
そうこうと話をしているうち、ママが下から呼び掛ける。
ママ「のび太、ちょっと下りてきなさい」
のび太「あっ、はーい」
と、言いつけられるままに階段を降り、応接室に戻っていく。
のび太「なあに、ママ」
ママ「実はこの子が遊びに行きたいと言い出したから、のび太が連れて行ってきなさい」
のび太「えーっ、僕が連れていくの」
ママ「夕方まで兼子さんもうちに用があるから、遊んであげなさい」
麗子「ここ初めてで分からないところばかりだからよろしくね、のび太さん」
と、のび太くんは麗子を連れて外に遊びに行くこととなったのだ。
兼子「あらごめんなさいね玉子さん、この子も結構わがままなところがあって」
ママ「あらいいんですよ兼子さん、こう見えてものび太も結構ダメなところがあって」
兼子「でも玉子さんもしっかりしているから、のび助さんよりはよろしいでしょう。それに引き換えうちの人は・・・・・」
と、ママと兼子さんとのおしゃべりは続くのだった。
こうしてのび太くんが麗子を連れてまずはお散歩に回ることになった。そのありさまドラえもんも心配になって空から見守ろうとするのだが。
二人きりのお散歩と相成ったのび太くんと麗子。道行く人の幾人かが二人を見やり、それに気まずく思うのび太くん。
のび太「参ったなあ、こういうの誰かに見られたら・・・・・」
そんなのび太くんの懸念をよそに、すぐさまジャイアンとスネ夫と出くわしてしまった。
ジャイアン「おっ、のび太が女の子と二人連れで歩いてら」
のび太「わっ、ジャイアンにスネ夫」
麗子「あら、この人たちのび太さんのお友だち」
のび太「え、それは、その・・・・・」
のび太くんとしてもそうだと言いにくかったが。
スネ夫「あれ、どこかで見たと思えば、金満さんの麗子さんじゃない」
麗子「そういうあなたは骨川さんところのスネ夫さんね、今のび太さんとお付き合いしていますのよ」
のび太「いや、それは、その・・・・・」
麗子の応えにのび太くんも返答に困ってしまう。しかし当のスネ夫、そしてジャイアンは、
スネ夫「そうだったのか、それじゃあがんばれよのび太」
ジャイアン「がんばれよ」
と、のび太くんを送り出し、二人はまた先に向かう。その後でスネ夫たちはそれぞれ思いを述べる。
スネ夫「あの子何度か会ったけど、どこか苦手なんだよな」
ジャイアン「そうか、のび太も大変だな」
と、めずらしくのび太を気遣うのだった。
ジャイアンたちのもとを離れてややあって、今度は先生と出くわしてしまう。
のび太「あ、先生」
先生「なんだ野比じゃないか、こんなところで何をしている。また成績が落ちているようだから家に帰って勉強をしなさい」
しかしそんな先生に、麗子が近付いてなんと抗議をするのだった。
麗子「その先生というなら、学校でお勉強を教えるのがお仕事ではありませんか」
先生「あ、いや、何だね、君は・・・・・」
麗子「私などは学校でのお勉強はもちろん、家でのお勉強や習い事でも、家庭教師の先生が教えて下さります。それを生徒にお勉強を押し付けるなんて、あまりにも無責任ではありませんか」
あまりに強く押してくるので、さしもの先生も気押されてしまった。
先生「いや、わたしは、その、と、とにかく、がんばりなさい・・・・・」
麗子「さあ、行きましょう、のび太さん」
と、先に向かうのび太くんを、先生もただ見守るだけしかなかった。
先生「ああ、びっくりした。しかしあの子はうちの学校の生徒にいたのかな」
麗子のやり取りに、のび太くんもまた、
のび太「先生にここまで言うなんて、意外としっかりしてるんだな」
ともかくも麗子とのお散歩はまだまだ続くのだった。
つづく
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