第10話:宿敵の刃(その1)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>
さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、いよいよティターンズ系の組織との抗争の末、かつての宿敵との対戦をいずれお送りする運びとなりました。はたしてその行きつく先は。そしてこのお話もひとまずどのような展開と相成ることやら、といった編者個人の不安を込めて、それでは、ごゆっくり。
ちなみに前回までのストーリーはひとまずここに(都合により一部割愛)。
イントロダクション
第1話:ホワイトベース最後の勇者(その1)
第2話:生きるということ(その1)
第3話:継ぐものたち(その1)
第4話:月で待つもの(その1)
第5話:ガンダム、行きます!(その1)
第6話:忘れられた地で
(その1)
(その2)
(その3)
第7話:古き友来たる
(その1)
(その2)
(その3)
第8話:老兵は語らず
(その1)
(その2)
(その3)
第9話:リッド奮戦
(その1)
(その2)
(その3)
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
話は月グラナダのアストライア財団支部から始まる。
元WBクルーの一人、セイラ=マスことアルテイシア=ソム=ダイクンが創設したこのアストライア財団は、はじめ戦災孤児の保護育成から始まり、やがては旧ジオン軍将兵の社会復帰と人材確保を目的とした非政府組織NGOであった。
しかし後者についてはかつてのデラーズ戦役~近年再議論がなされ始めた~とグリプス戦役後期に台頭したネオジオン軍の台頭により事業を停滞させることとなる。さらには総裁のアルテイシア:セイラの身にも危機が迫っている事態にも陥っていた。
支部を訪れたカミーユは、支部長のリイナと、元旧ジオン兵で本部のエージェントである“曹長”を交えて会談が行われた。
「ジオン兵の帰順についてはわたしが今更言うことはない。先のトリントンに惨劇が彼らの旗色を決めたのも事実だ」
まずカミーユが話を切り出す。
「それでも、いまだ“袖付き”残党をはじめネオジオン派が総裁を狙っているのも気がかりなことです」
「やはりミネバ様の件もありますが、それについてはキッカ大佐にお任せするしかありませんね」
返した“曹長”の言葉に支部長のリイナが応えつつ、肝心の話題について語り出す。
「ところで先の事件に合わせてか、連邦の不穏分子、いわばティターンズを中心とした反乱が活発化しています」
「・・・・・」
カミーユも沈黙で応えるも、リイナはあらためて懸念を伝える。
「でも、ネオジオンはともかくティターンズは、依るところはないはずなのに」
「そう、もはやジャミトフもシロッコもいない今、一部脱走してそのまま軍を抜けた者を除いて彼らが依るところはない。かといって原隊にも戻れず今に至った。俺が言うのも何だが彼らの妄動には責任もある。それに関してはあらためてウォンさんと相談してみるよ」
リイナも“曹長”も重くうなずく。
「こうなってしまえばキッカ大佐に頑張ってもらわなければ・・・・・」
言葉を詰まらせつつ“曹長”が告げるのを、了承の意を表情で伝えつつカミーユは場を外し会談は終了する。
連邦軍の臨時宿営地に到達したTW。
第2次ネオジオン抗争より再び活性化した旧ティターンズ系の動乱は欧州、アジア、そしてここアフリカと各地で勃発し、軍もその鎮圧に奔走させられるも、示し合わせられたかのごとくアフリカへと撤退をしつつ集結していったのだ。
ジオン系とは違い勝手知ったる間柄なだけに、というよりもそもそもグリプス戦役がアナハイム系列の出来レースだった要素も関わり、ラプラスの動乱にも乗らずに動向をうかがってきたのだ。
そんな状況の中でキッカたち特務部隊の介入と相成ったのだ。
「それでは、全体的にお互いに戦力不足でこう着していると」
「はい、そんなところで」
宿営地の司令官に状況を聞くキッカ。たしかに停滞していったのは事前に聞いていたが、こうも深刻だとあきれるどころか同情すら感じている。しかし任務が任務なのである程度収めなければならない。
「分かりました。こうなれば我が部隊が善処いたしましょう」
「はっ、ありがとうございます」
お互い敬礼を交わしキッカは司令部を後にする。
一方で残党軍の方も。
「我々の方もいずれケリを付けねばならない。今更ジャミトフ閣下や、シロッコ大尉への義理は薄い。かといって原隊に復帰するにしてももはや遅きに失している。もはや徒花となった我らの最期の部隊に恥じぬ戦いをするしかない。補給の件に関しては感謝にたえない」
残党の筆頭格の男が今回補給物資を送った“スポンサー”に告げる。そのエージェントの男も軽くうなずき了承の意を伝える。
「これで俺たちも英雄なり悪党なりと歴史に名を残すことができる。ましてや相手があの最後の勇者どのだ。はるかグリプスで散った英霊どもに恥じぬ戦いをしようではないか」
筆頭の言葉に他の仲間も歓声で応える。それに対しエージェントも皮肉と同情を込めての笑みとともに、一礼の後この場を後にするのだった。
「彼らに対する仕事はこれで済んだな。これも新たなる時代への架け橋に、はたしてなるかな」
荒野をかける地上車とすれ違いに、一機のMSが飛び去っていく。さしものエージェントも軽い戦慄を覚えずにはいられない。
「あれは、バイアラン。トリントンの新型とは違う改造型の奴だな。まさか今回の件を察知してか・・・・・」
ひとまずの懸念をよそに地上車は荒野を走り去っていくのだった。
そして件のバイアラン、そこに搭乗していたのはこれからティターンズ残党軍に対するキッカたちにとってまさに宿敵ともいうべき男であった。
それと同じ頃、月のグラナダではアナハイム本社の一室でたたずむカミーユが映し出された地球を見やりつつ独語する。
「やはりお前も、戦いつづけているのか、ヤザン=ゲーブル」
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