« 坂田冬次<餓狼伝説EXCCELENT> | トップページ | 今秋の神様21年度4月号20号: »

第9話:リッド奮戦(その3)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、リッドのジオングとギルダスたちのリ・ガズイとの追撃戦が繰り広げられ、そこに1機のMSが介入する戦いの運びをお送りいたします。それでは、ごゆっくり。
 
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第9話:リッド奮戦
その2
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
 
リッドのジオングに近付いてくるのは3機の戦闘機。これには見覚えがあった。レトーやジョアンが対峙したあの戦闘機に可変するMS、リ・ガズイだったのだ。
「あれってリ・ガズイじゃない、てことは、キッカ大佐の」
先の戦いの教訓もあってか、すかさずリッドも逃げに入る。たしかに改良バーニアの効果もあり、大気圏内中でも十分な推力と飛行性能があり件の3体の機動力にも引けを取らない。加えて火力等の戦闘力もかの一年戦争で猛威を振るったシャア大佐の機体を凌駕している。しかし先の事情からひとまずは離脱せんとするのだが。
「あれ、こちらに気付くなり逃げてったぞ」
「敵の斥候かな、だったら落とすなり捕まえるなりして出鼻をくじくのもいいかもしれないな」
「まあ大丈夫だよね、こちらは3機だから」
というわけでギルダスたちも追撃に入る。
 
「リ・ガズイ3機、目標を補足」
オペレーターの報告をブリッジで受けるキッカ、すでに配備についているノックスとトーレス、加えてクムもひとまずブリッジに上がっている。
「・・・あれ、あの機体の感じって」
「なにか、感じたのか」
ノックスがクムに問う。
「はい、先に対した敵と同じ感じがしたのです」
「そういえば、先に対したザクのパイロットは子供だって言ってたわね」
「はい・・・・・」
クムの応えにキッカも一旦考え込んでからオペレーターに告げる。
「出撃してすぐだからすぐに帰還もできないでしょう、たしかにクムの言う通りの相手なら、勝ち目なしとみれば逃げに入るはずかもしれません。ここは頃合いを見計らって対処します」
ひとまずそう告げて正面モニターをじっくりと見守るのだった。
 
キッカの読みは当たり、リッドははじめから逃げの態勢に入る。しかし相手は3機、3方向からリッドを包囲せんとする。
対するリッドもやはりNTの感からか、3機の軌道を読んでジオングの動きをコントロールしていく。
しかしそれはギルダスたちも読んでいたか、MS形態とMA:ウェイブライダー形体と可変を繰り返しなんとかリッドについていこうとしたのだ。
もちろん砲撃を交えてのことだが、ギルダスたちはあくまで威嚇、対するリッドも応戦一方でやはり本気で当てる気はなかった。
「やっぱ読み合いはこちらが上か、しかしこちらも本気の上だ、捕まえるか、撃ち落とすかはたまた、いずれにしても覚悟を決めなきゃな」
「こうなることは覚悟していたけど、まだ戦争は終わったわけじゃなかったな。こうなったら一刻も早く離脱して兄貴たちに報告しなきゃ」
ギルダスとリッドの想いが交錯する中、ジオングとリ・ガズイの追撃はなおも続いていた。
 
一方の地上では、上空の4機の追撃戦を目の当たりにしたレトーのドムが岩陰から見守っていた。
「えっと、やっぱキッカ大佐の部隊かな。だったらこちらもなんとか援護して・・・・・」
レトーも乗り出さんとするのだが、
「引っ込んでろ」
と、いつの間にか姿を現した1機のMSがレトーを制する。それはグリプス戦役に猛威を振るった機体バイアランだった。そういえば先のトリントン戦のカスタムに比べ、そちらは旧型をリチューンした感があった。
ともかくもそのバイアランは飛び立っていく。その間レトーもそれから発した一種のプレッシャーに押されてか、身動きが取れないでいたのだった。
「あれ、大丈夫、かなあ」
いずれレトーも見守るしかなかったのだ。
 
ギルダスたちとリッドの追撃戦はなおも続いていた。しかし小一時間続いた追撃はいずれもスラスターの燃料が底をつきかけてきた。
「わっ、もうすぐ燃料切れだ、このままだと地上に落ちちゃって、下手したらやっぱり捕まっちゃう」
「こちらも燃料切れか、何とか追い詰めればいいけどな」
そんな折、ギルダスにTWからの通信が入る。それはジオングの機体構造だった。
「・・・これは、何だって、敵のコックピットは頭部にあって万一撃っても頭が脱出できるんだな、それを早く言ってくれよ。でもこれで戦いやすくなるかもな」
といったところで最後の攻勢にかけ、ギルダスが追い詰めんとするのだが。
突然一筋のビームが、続いて1機のMSが飛来して割って入る。それはレトーを制し飛び立ったあのバイアランだった。
しかもそのバイアランから発せられたのか、それのパイロットのプレッシャーを感じてか一瞬リッドもギルダスたちも怯んでしまう。
そのうちバイアランはジオングと接触する。
「・・・わっ、捕まっちゃった」
しかしバイアランから通信が入る。
「大丈夫か坊や、助ける義理はないが、さしあたりここは逃げるとしよう」
「あ、え、うん・・・・・」
と、スラスターを全開するバイアランとともに戦場を離脱するリッド。
あまりの手際の良さにあっけにとられつつ、TWからの信号弾を確認するギルダスたち。
「ひとまず作戦終了か、仕方がない」
ひとまずギルダスも帰還の途につくのだった。
 
「申し訳ございません」
帰還してすぐにブリッジに上がり、代表でギルダスがキッカやノックスに謝する。
「相手が相手だからね。たしかに深追いは戒めるべきだから。しかし信号弾に気付いてくれてよかったよ」
「はっ!」
返すノックスに3人が応える。続いてキッカも意見を述べる。
「でもジオングだけじゃなくてバイアランも来たとはね。トリントンで活躍したものとは違う。前々からの機体に手を加えたものというから、それに関して気を付けなきゃいけないわね」
そしてトーレスが結ぶ。
「前にも言ったが、こちらも小言はここまでとして、君らも反省すべきは反省だけるだけ良しとしよう。それから次の任務に活かせればいい」
「はっ」
トーレスが頷いて後、キッカが告げるのだ。
「うん、それではそれぞれ自室に戻ってよろしい。本当にお疲れ様」
「はっ!」
こうして3人はブリッジを後にする。自らに厳しさを心がけつつ、穏やかながら重いキッカの言葉に3人もあらためて身を引き締めるのだった。
「でもバイアランのあのプレッシャー、あれほどの荒々しさ、あれが敵に回ればどうなるか・・・・・」
そういえば傍らのクムの内心の動揺、やはりただ事では済まされないことをキッカは悟った。
「大丈夫、クム」
「あ、はい、あの、大佐・・・・・」
「ええ、私も大丈夫。ここはいいからゆっくり休んでいて」
「はい・・・・・」
自分の想いも読んでいると踏みつつ自らの懸念を呑み込みながら、重い敬礼の後でクムもブリッジを後にする。
 
一方で通常移動で大地をかけるドムとジオング。
「無事でよかったな、リッド」
「うん、どうなるかと思ったけど、でもキッカ大佐の部隊だったなんてね」
「まあ、兄貴の言葉じゃないけどあの人たちとは因縁ってのがあるかもね」
「そういやあのバイアランの人は途中飛び去ったけど。もしかすると大佐の部隊と戦おうとするのかな」
「いずれにしてもただ事じゃないかもしれないからな。こいつは兄貴と相談しようか。おっとその前に」
「うん、データを言われた場所に届けなきゃね」
というわけで、リッドとレトーはこの場を去っていく。
 
こうして大いなる任務の前のささやかな戦闘は終わった。
 
今や叛乱の徒となったティターンズ部隊。それを収めんと乗り出したキッカたち。
しかしその前にかつての宿敵が立ちはだかるのだ。
次回、機動戦士ガンダム・クレイドルエンド
『宿敵の刃』
君は、生き延びた先に何を見るのか。

| |

« 坂田冬次<餓狼伝説EXCCELENT> | トップページ | 今秋の神様21年度4月号20号: »

ガンダム」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 坂田冬次<餓狼伝説EXCCELENT> | トップページ | 今秋の神様21年度4月号20号: »