第8話:老兵は語らず(その2)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>
さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、オデッサ基地を襲撃する部隊に対するキッカたちに、さらに伝説のジオン軍兵士が成り行き上戦いを挑んでいく様をお送りいたします。それでは、ごゆっくり。
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第8話:老兵は語らず
その1
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
オデッサ基地の襲撃の報せを受け、キッカたち特務隊にも正式な出撃の要請が出る寸前に、ある話題がTW内で持ち上がった。曰く「キッカとクムが何やら言い合っていた」とのことだった。
まずライエルがそれを心配してクムに問い合わせたが、グリプス戦役のことを交えて説明をしてひとまずの安堵を得た。
「おそらく私の受け答えが反発に見えたのでしょうけれど」
「そうでしたか、何にせよよかったですが、僕たちもそれなり気を引き締めましょう」
ライエルの応えに合わせ、居合わせたギルダスたちも「はっ!」と応えるのだった。
その一方でトーレスはキッカにひとつ釘をさす。
「それは君が悪いな。グリプスの件といえば、カツのこともある」
それにはキッカも感じ入る。たしかにカツも戦場において、否カミーユや当のトーレスもみな不器用に振舞っていたのだから。あの時斃れた者、生き延びた者、ことに前者については軽々しく口に出していいものではなかったのだ。
「そうね、彼らの奮闘があって今の私たちもいるから。ともかく今回の作戦と合わせて一つずつこなしていきましょう」
トーレスの軽い頷きとともに、キッカも出撃の指示を待つ。
ともかくもオデッサ基地の襲撃部隊が基地のレーダーに反応し、第一種戦闘態勢をとるとともに、TWへ出撃要請を告げる。
そんな中、キッカが整備班のメカニックからニュープラスの装備についての報告を受ける。
「まだ、フィンファンネルの整備が済んでいないのね」
「はっ、通常のファンネルとは違って、地上でのミノフスキークラフトの推進制御が未だ整わず・・・・・」
申し訳なさげに告げるメカニックに、キッカは軽い笑顔で応える。
「他の武装なら大丈夫だから、それほど問題じゃないわね。たしかに慢心も禁物だけど」
恐縮するメカニックをひとまず安堵させ、待機しているクムたちに呼び掛ける。
「レーダーに反応している敵襲はそんなに大規模なものでもないわね。それでも繰り返すけれど、みんなも気を引き締めてね」
一同が「はっ」と応える。この時点では先の言い争いの懸念もほぼ払拭していたが。
(私もそうこだわっていないつもりだけど、それなりに戦い抜くつもりですよ、エマさん、レコアさん、それに、クワトロ大尉・・・・・)
シャア関してはあえてグリプス時代の偽名で呼び掛け、心の中でつぶやくクムだった。
ともかくもキッカたちはまずTW内で待機し、然る後に順次出撃をすることにするのだった。
その襲撃部隊だが、とある筋からの依頼を受け、軍の物資を奪うべく乗り込むのだ。つまりはかつてのトリントンの件とは目的と規模が大違いだったのだ。
しかしある程度部隊が基地に接近していくうちに、遠方から1機の反応が高速で近付いていくではないか。
そして部隊が基地に到達する。
「やはり基地の防備は手薄か、すみやかに物資を奪取する。基地の連中も応戦していくだろうが、なるべく殺すなよ」
隊長が告げ、部隊のMSは散開する。それを見計らってからキッカたちのMSもまた出撃していく。
「何だと、これは連邦の新型か」
「いや、今はそんな余裕はないはずだ」
「するとまさか、キッカ大佐の・・・・・」
そのうちクムのサザビーが部隊に立ちはだかる。
「くそっ、これじゃあ割が合わねえ。何とか切り抜けてずらかって・・・・・」
そこにクムのファンネルが展開する。こちらの推進機能はそれほど複雑ではなかったのだ。
「逃げると厄介だからね。こちらもやらせてもらうわよ」
ファンネルはほぼ襲撃部隊のMSを瞬撃する。とはいえ爆砕した敵はほとんどなく、すべてが手足と武装を撃ち抜いて戦闘不能にしたものだった。
「う、撃つな、直ちに降伏する。俺たちもただある筋から依頼されたものだ」
そこにキッカが告げる。
「それでは、直ちに機体から降り、隊員の指示に従ってください」
と、それぞれがMSから降りて、手を上げつつ降伏の意を伝える。その際にクムからの通信が入る。
「少し飛ばしすぎましたか」
「ううん、ここは出来るだけ早めに済ませたいから、でもまだまだ終わりそうにないわね」
軽く謝するクムのキッカもやはり軽く受け応える。しかしそのうちにもう1機の機体、白いザクⅢが基地に到達する。
「やはり、遅かったか・・・・・」
その出で立ちに、基地の司令官は驚愕を持って口を開く。
「まさか、シン=マツナガ大尉。あの白狼が・・・・・」
その言葉にキッカ自身も軽い戦慄を覚える。
「白狼って、ドズル=ザビの腹心とうたわれたジオンのエースパイロットの一人。まさに伝説じゃないの・・・・・」
その白いザクⅢはキッカたちを見据える。
「うむ、やはりキッカ=コバヤシ大佐か、あのホワイトベース最後の勇者の・・・・・」
その言葉に半ば呆然としていたキッカも多少我に返る。
「たしかに、あのザクⅢのパイロットがそうなら、私などはただの小娘、でも・・・・・!」
と、両手で自分の頬を叩く。
「ここはお互い退くべきだと思うけれど矜持にかけてはそうもいかないみたいだから、まして私自身叩き直さなければならないですね」
「お互い、不器用な生き方だ」
マツナガも自嘲気味に応える。その言葉にはTWのノックスたち、そして基地内の隊員たち。ことにMS部隊のキッカたちには重くのしかかる。
周囲はすでに二機を気にしつつも隊員たちが敵兵を連行していく。それにはキッカやマツナガも気にかけ、それぞれ申し合わせるかのごとく、それぞれの脚を進めんとする。
「これ以上の戦いは無意味だが、相手が相手だ。たしかに先方もそう思っているだろうが」
TWのノックスもこうつぶやく。すでに足組みは解かれ、ことの帰趨をトーレスとともに見守ることになる。
ここに伝説と勇者。キッカに言わせればかつての小娘が伝説に挑むのだ。いずれにしてもある意味時代が描かんとする勝負が始まらんとしていた。
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