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第8話:老兵は語らず(その1)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、続いての任務に合わせてかつてのジオンの名パイロットとの戦闘を機に今一度戦乱の歴史に想いを馳せる様をお送りする運びです。それでは、ごゆっくり。
 
ちなみに前回までのストーリーはひとまずここに。
イントロダクション
第1話:ホワイトベース最後の勇者
(その1)
(その2)
(その3)
第2話:生きるということ
(その1)
(その2)
(その3)
第3話:継ぐものたち
(その1)
(その2)
(その3)
第4話:月で待つもの
(その1)
(その2)
(その3)
第5話:ガンダム、行きます!
(その1)
(その2)
(その3)
第6話:忘れられた地で
(その1)
(その2)
(その3)
第7話:古き友来たる
(その1)
(その2)
(その3)
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
 
 
インド洋上でのカイ=シデンとの接触を経て、ミネバ・アルテイシアの会談が今後の状況の打開に必要不可欠であり、その準備を双方が整っていることを知り得たキッカ。
その接触からほどなく補給のついで、体調を崩したカイの保護のためにオデッサの連邦軍基地に立ち寄った。
もともとがジオン軍の侵略拠点だったオデッサの基地を戦後連邦軍が接収し、以後改修に改修を重ね現在の補給基地と相成ったのだ。
現在のカイの身分は民間人のフリージャーナリストで、基地の医療施設を使用できるわけではなかったが、元軍人ということを活用してキッカ自身が口添えをしたが、何より基地の司令官が好意的だったのが功を奏し、医療施設の使用はすんなりと許可されたのだった。これも長年の人脈の功だとキッカは思ったが。
「カイさんの症状は連日の疲労の末の胃炎からなるものだと言いますから、医師の先生から数日は安静にするようにと。それから1年に1度は診断も受けるようにと言われていました」
「ここ最近はカイさんも一目置かれるようにもなっているから、もちろんいい意味でも悪い意味でも」
基地の医務室を後にし、TWへと戻るキッカとクム。ひとまず本来の任務、というよりもキッカそのものの目的がなきに等しく、ただ彼女の裁量で自由にやっている。ただこれまでの“彼女”との邂逅がキッカの行動の指針となっているのだ。
そんな中、ふとした想いが頭をよぎり、クムに話を一つ持ち掛ける。
「そういえばセイラさんで思い出したけれど。私としてもあの時の、セイラさん、ミライさん、そしてフラウのお義母さんの齢を越えたけど、まだまだ大人になっていないかなと時折思うのよ」
「まあこれも気分の問題だと思いますよ」
クムもひとまず本心で応える。子供っぽいといってもまんざらではないとも思っていたのだ。
「そういえばクムの頃でも女性の兵士の人がいたでしょ。その人たちと比べて・・・・・」
続いて問うたキッカだが途中で口を止める。クムの苦い表情を目にしたからである。実際クムも自分の子供の頃、グリプス戦役での思いに馳せていた。
「・・・そうですね、あの人たちは不器用だったんです。でなければ命も落とさずに、済んだんです」
クムもクムなりに言葉を選んで応えたつもりだった。カミーユやブライトは何も語らなかったが、たしかに激闘といってもグリプスの件は一年戦争に比べれば微々たるものだった。あの戦役も味方の多大なる犠牲のもとでひとまずの勝利をえたと聞いていたのだ。
そんなクムに少し困惑気味でキッカも返す。
「ごめんなさいね、イヤなこと思い出させちゃって」
「いえ、ともかく大丈夫だと思いますよ」
ともかくもお互いに苦い表情を解きつつ、艦への帰途に就く。
 
変わって近隣のダイナーで食事をとる一人の男がいた。齢は50歳前後、それほど老人という外見ではなかったのだが、やはり髪と髭の白さで一見そう見えてしまう。そこにもう一人の男が現れる。今や隠れた英雄ともうたわれるコウ=ウラキだった。
そのコウは男の傍らに座る。
「貴官も壮健のようだな。やはりいい仕事にありつけたのかな」
「いや、相変わらずだよ。ここ最近の後片付けで忙しくってね」
そっけなく応えたコウはふと、自身の近況を語りたくなった心境に陥る。
「実はあんたにだけは話したくなったが、その依頼主ってのは・・・・・」
この後は小声なのでよく聞き取れなかかったが、男の表情も次第に神妙になっていく。
「・・・やはりか、貴官もまた時代に選ばれたということだな」
「いや、俺としてもそううぬぼれてはいない。ただこの時代の徒花だけは摘み取りたいとは思っているけれどね」
静かに深いため息の後、男は感慨する。
「かくいう小官もこの時代の為に命を捨てる覚悟だったが、今は貴官が先んじたか」
「俺としてはその任はあんたの方がふさわしいと思っているが、あんたとしてもそれと名乗ろうにも踏ん切りはつかないか」
「・・・お恥ずかしいことだ・・・・・」
そんな二人のために、マスターがおごりと一杯のコーヒーを差し出す。そのコーヒーで口を潤しながら二人は息を整えあらためて会話に興ずる。
「はじめ俺も、ガトーへの敵対心から戦いを繰り広げ、その後の足踏みを経て連邦に対する鬱屈を抱えつつ自分なりにケリをつけようとしたんだ」
「時代へのケリか、なればこそ小官も踏ん切りをつけねばならないな」
「たしかに時間はそう多くはないかもしれない。いずれにしてもあせることはないかだろうけれど」
と言いつつ、コウは先に席を外す。
「俺もこの時代の行く末を見守りたくなった。その刻(とき)まで生き延びたいな」
「うむ、武運を祈っている」
と、男は背中越しに応えるのだった。
そんな時、マスターが何やらの連絡を受けてメモに書き記した。そのメモを男に手渡すと男は無言でそれを読み返す。
『・・・“国”は消えども“理念”は残る。その理念の為にあえて破壊を望まんか、しかし・・・・・。
カイ=シデン、貴殿の歩みもまた時代を作りしものならば、その歩み、あえて小官が護っていこう。
そして、ミネバ様・・・小官が御身にまみえるに値うか・・・・・』
そして手紙を懐にしまい込み、代わりにポケットからの少ししわが入った紙幣を差し出す。釣りは無用と言わんばかりに静かに席を離れ、ダイナーを後にする。それをマスターが無言での一礼で送るのだった。
 
TWに戻ったキッカとクム、すでに艦内の動きは慌ただしい。二人は申し合わせてからブリッジに上がる。
「何か変わったことはない」
「ああ、ちょうど君らが基地に赴いたのと同じく、近々オデッサを襲撃せんとするものたちありとの情報が入ったんだ。ソースははっきりしないがおそらくカイさんの知人のものなのは間違いない」
と、ノックスが応える。
「となれば、警戒も当然ね、でもこれまでカイさんのやってきたことも形になってきたといえば、あながち無駄なことじゃなかったかな」
ここはひとつ、キッカ自身も指示を出す。半ば自分自身に言い聞かせるものだった。
「ここは現在の状況を鑑みて第二種戦闘態勢を保ち基地との連絡を取りつつ、今後の動向を見守ります」
こうして多くの人々の思惑が入り交じり、オデッサ基地の攻防戦は静かに始まらんとしていた。

 

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