それにつけてもおカネのほしさよ・番外編:ロマンいっぱいお宝さがし(後編)<本当は怖いドラえもん>
前回いわゆるお宝さがしについての、いわゆる冒険とロマンについて語ったものだけれど、今回は対してお宝さがしに絡んだ欲望やら悪だくみやらの弊害と、それを指摘することの問題点を述べたい。
この問題について、本記事を通じて参考文献として活用した『「のび太」という生き方』(横山泰行著・ASCOM刊)の中の一論を取り上げ、その上であえて意見を述べたい。
その当書の記事の一つに“ドラえもんでもかなえられない夢”がある。そこでは“お宝探し”に関しての横山先生の意見を読み返してみたのだが、どうしても心に引っかかるものがあったので、暴言を承知で述べたいと思う。
この論で挙げられる『宝星』の巻(後述)を通じて横山先生は、宝探しのネタを欲望の集大成と表し、お話でのお宝さがしを“たくらみ”の言葉ではじめから“悪いこと”と見なして話を進め、シメとして「子供たちに叶うユメと叶わないユメを教えようとし、自分でコツコツと地道に努力することの素晴らしさ教えたかったにちがいない」と断じた。
しかし、ちょっと待ってほしい。確かにドラえもんのお話についておカネの欲が絡んだ話にてはたいてい骨折り損となるのだけれども。つまりはお宝さがしを通じておカネに対する執着を批判したのは間違いはないけれど。
そもそもお宝探しといえば、昔は手塚治虫先生の『新宝島』や宮崎駿カントクの『どうぶつ宝島』や『天空の城ラピュタ』など、今はさしずめ尾田栄一郎せんせいの『ONE PIECE』と、常に子供たちの夢とロマンをかきたててきたものであることは前編でも述べたところ。
それを欲望の一言で片付けるのはいかがなものか。たしかに冒険よりも欲望やら悪だくみ(これは少し言い過ぎか)が前に出たのを批判したのは分かるけれど。さらに言えば何の努力もなく安易にお宝を探そうとしたのも指摘していたのだろう。すなわち冒険も努力あってはじめて大成するものなのだから、たとえどのような結果に帰しようとも。
もっといえば『宝星』や『南海の大冒険』の巻にて「ユメみたいなことを忘れて勉強しろ」というくだりをまる写ししたような文句にも読めるかもしれない。
これも前回で述べたけど、冒険を絡めての宝探しのお話はほとんどか「ごっこ」に終始していた。
しかしながら冒険の要素を抜かし、さらにはイタズラを企んだとしても、最後には素晴らしいお宝を手に入れたお話もある。そこで次のお話を紹介したい。
『化石大発見(コミックス11巻)』
ある日、裏山の宝の地図を渡されるも、今日はいわゆる四月バカということで結局だまされて、さらには隣で化石の発掘をしている研究者のおじさんに邪魔だと追い返される。
そこでからかい半分で昼食の魚の骨やら燃えないゴミやらをタイムふろしきで化石を生成する。
その捏造化石をおじさんに見せ、狂喜するおじさんに流石に良心がとがめたか、そのタネを明かしてしまう。その折に何と新種の三葉虫が姿を現す。おじさんが言うには世紀の大発見ということで、結局はすばらしい宝を見付けることができたそうな。
このお話の場合は財宝ではなく新種の化石(それも現在によみがえらせたもの)ということで、学術的には貴重なお宝には違いはなかった。
さらに述べれば首尾よく実際のお宝にたどり着いたとしても、うまうまと手にいれるかというとそうでもなく、多少の後ろ髪を引かれる思いとともに(あとドラえもんもひとこと言うだろうけれど)そのまま放っておくだろう。
実際『のび太の大魔境』のお話にて、王国を救ったドラえもんたちにペコが国の財宝を贈ろうとするも、きっぱりと謝絶したのだ。
さらに言えば同書の記事でも『意外とのび太は欲がない』にても、のび太くんに限っても欲望に関してはある程度の限度があると横山先生も書いているのだ。
つまりは、大人のモノサシで大人の意見を述べ、子供のユメとロマンをそうそう壊してはいけないと思う。だいいち当時の子供たちだった今の大人たち(編者含む)がどうユメやロマンを教えようかと迷える時代ともいえるのだから、今は。
最後に当記事にて横山先生がカットしたパートを補完してシメとしましょう。
『宝星』
ある日テレビでお宝を発見した老人のニュースを見て、自分も宝を発見したいと、宇宙の宝星を探索せんと意気込むのび太くんたち、いさ見付けたとしても、小さな星のケシ粒くらいの宝や巨大な宇宙人の貯金箱やらと当て外れなものばかりで流石に諦めかけた。(ここまでが横山先生の引用の要約)
そんなゲンナリとした二人のもと、もう一つの反応が出てきた。
気乗りしない中現地へたどり着いた二人。そこは地球の原始時代の様式の星で、反応があった所を掘り返してみればやっぱり円形の石の固まりだった。
通りかかった現地人が言うには、その星のお金でそれもかなりの大金だそうだ。
とはいえこの星でしか通用しないので、とりあえずこのお金で土地と別荘を買い、当分の間セレブ気分を満喫することとなったそうな。
| 固定リンク | 0
「ドラえもん」カテゴリの記事
- ザ・ドラえもんズ・怪盗ドラパン編:セリーヌと産業革命(最終回)(2022.10.12)
- モノ社会の宿業:こわれやすい感性<本当は怖いドラえもん>(2022.09.21)
- ザ・ドラえもんズオリジナル:ドラニコフ編・サーシャとふしぎな森(その1)(2023.04.26)
- のび太のおとぎ話:映画ドラえもん・のび太のパラレル西遊記<本当は怖いドラえもん>(2022.08.24)
- 大長編ドラえもん・怪盗ドラパン編:セリーヌと産業革命(その5)(2022.09.14)
コメント