« 今週の神様20年度46号:時には開き直りも大切だの巻 | トップページ | ep26:Re:RISE<今更ながらビルドダイバーズRe:RISEレビュー> »

第7話:古き友来たる(その3)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、逃走のカイを助けんと奔走するライエルたち。その後もたらされた情報とともに現在のカイの状況を知ることになるでしょう。それでは、ごゆっくり。
 
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第7話:古き友来たる
その2
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
 
 
海上のカイを中心に、やはり海上のジO、そして海中の敵機と、絶妙な配置での追討戦がまさに繰り広げられんとした。カイはひとまず敵味方の位置を把握して後、お互いの間合いを見計らって、時折閃光弾を投入しつつボートを進めていく。
それらの様をTWのブリッジにてキッカとノックスらが見守っていく。そんな中、カイの舵さばきをノックスがつい感嘆する。
「敵を翻弄しつつライエルをよくよく導いていくな、流石はカイさんだ」
「ええ、でもまだ予断は許せないから」
キッカの不安に誰もが同意する。そうこうしているうちに敵の増援も近付いていくのだ。無論それらの対策の為にアレンたちのリ・ガズイが当たっているが、いかんせん敵は海の中、すべてを倒しきれるわけではない。
カイも無論ニュータイプではない。しかし一年戦争の後に軍から離れもっぱら取材等で世界を転々としているうちに、いわゆる勘が鋭くなった。戦術等はブライトに~もっともブライト自体も戦術に長けていたわけではないが、操縦等はかつての連邦軍内ではひとまずの実力ながらもアムロたちに劣るが、人生の年季がカイを鋭くしたのだ。先にノックスが評した通りにそのボートさばきで戦況を導き続けていく。
そしてカイにとっては戦術上重要な要素も備わっていた。すなわち戦場の引き際というものを。
「やはり逃げきれるものじゃないな、こいつは。しかしどこかでターニングポイントも現れるだろうからな」
やはり水の流れと盛り上がりから、はるか前方に敵の機体が現れるだろうとかいは踏んでいた。
はたして前方1キロを切った時点で、敵のズゴックが浮上してきた。
「こちらカイ=シデン。キッカからは俺が言っておくから、できれば回収してくれ」
と近くのライエルに向けて通信を送った後にカイはボートから飛び降り、残されたボートはそのままズゴックに突っ込んで爆散してしまう。
「カイさん!」
ブリッジにて思わずキッカが叫ぶ。対してトーレスが指令を下す。
「すみやかに敵を排除しつつカイさんを救出せよ」
トーレスが代わりに指令を下したことで、キッカも落ち着きを取り戻す。
その指令をあらためて受け、ライエルも周囲の状況を図りつつ戦略を立てる。
「敵が動揺している。やはりそちらもカイさんの確保が目的のようですね。こちらも、カイさんの動きに気を付けながら敵にあたって下さい」
「了解!」
ライエルの指示で、水中の敵をミサイル等実弾系の武器で応戦しつつ敵を着実に撃破していく。
そうこうしていくうちにアレンのリ・ガズイがカイに近付き、ワイヤーを降ろしていく。カイがそれに足をかけてしがみつく様を見届けてから引き上げる。
それを見届けてか、未だ残っている敵機もあきらめたのか、撤退を始める。
一方でライエルのジOもエネルギー切れか、徐々に海中に沈み始めていく。
「エネルギーが少なくなっております。しばらくは浮いていけますが、出来れば早く回収をお願いします」
「了解」
応答の末、ライエルもリ・ガズイ2機に引き上げられ帰還の途に就く。
 
TWのデッキへと帰還したアレンのリ・ガズィは掌に乗っていたカイをゆっくりと降ろす。そこにキッカたちが駆けつけてくる。
「おお、久しぶりだ、キッカ」
「お久しぶりですカイさん。でもあまり心配をかけないで下さいね」
キッカの敬礼に、カイもまた指二本の敬礼で応える。
「ああ、そうだな、でもあのチビすけが大きくなったなあ」
かつてブライトに投げかけられたのと同じような言葉にキッカも恐縮しながらも応える。
「さしあたってお部屋を用意していますので、落ち着いてから話をしましょう」
「うん、そうだな」
と、下士官の案内であてがわれた部屋に案内される。
30分後、ミーティングルームに集まった一同を前に、まずカイはアレンやライエルたちに目を向ける。
「そういえばこれがお前の部下かキッカ、みんないい面構えじゃないか」
カイが彼らに目を向け、代表でギルダスがやや緊張した面持ちで応える。
「恐れ入ります!」
「いや、本当のことだ。当時の俺たちとは大違いだ。よくキッカを助けてるじゃないか」
「いえ、まだまだですよ。それよりもご用件のほどは」
「おお、そうだったな」
こうして、ようやく本題に入ることになった。
「ラプラスやフェネクスの件でも分かるように、今地球圏は政治形態を統一化するか、ある程度の自治を認めるかで意見が分かれている。無論火星木星の移住計画も立てられているが、今の状況ではその開発自体も過酷なものだ。ましてそこに居住するとなれば」
「アクシズの二の舞になりかねないということですね」
「そんなところだな、無論前者にしても後者にしてもスペースノイドには負担のない、いや住まう場所によっての格差で新たな混乱を起こさないための条件を整えないといけない」
「そのためのスペースノイドとアースノイドの和解に向けての会談が必要だと」
キッカが代表でカイの意見に応え。頃合いを見計らってカイも結論を述べんとする。
「その会談に必要なのが、ミネバと、セイラさんだ」
スペースノイドとアースノイドの会談の要員たるミネバ=ザビ、そしてセイラ=マスことアルテイシア・ソム・ダイクン。この二人を会わせること、それによっての新たなる世界がより良きものとする。
それこそがある意味キッカたちの目的であるはずだ。
「先にキッカ。お前は“彼女”と出会い、会談の了承を得たといったな」
「ええ、あとはセイラさんの了承を得るのみですが」
キッカの言に、カイも軽く息を整えてから言を続ける。
「そうだな、彼女の方も異存はない。ただ俺の件でも気づいた通り、それを快く思わない者たちもいる」
カイの言葉は重い。キッカもそれに重く頷くのだ。
「もちろん“彼女”の方にも自衛の術はある。しかしセイラさんの方、すなわちアストライア財団はその自衛について心もとないのもまた事実だ」
「・・・そうですね、その“敵”の中に、いえ私たちの本当の“敵”がいるのか。それも見極めなければいけません。これは“彼女”たちがめぐりあうよりもいささか困難なことかもしれません」
そう言ってから一息つき、ふと周りを見渡す。皆が強い意志でキッカとカイの言葉に聞き入っていたのだ。
「望むところだ、と言いたそうだな。これから先は何が起こるか分からないが、お前さんたちなら大丈夫だろう」
と、ライエルたちに告げつつ、ひとまず自室に戻る。
しかし少し足取りが重いことにキッカが、おなじくノックスも気にしていた。
「大丈夫かな、カイさん」
「ええ、逃走の疲れもありますが」
「うん、大丈夫だと、思うけれど・・・・・」
誰もがカイの心もとなさを感じずにはいられなかった。
そんなカイも自室に戻るや、胸の違和感を覚えずにはいられなかった。
そしてそれを吐き出すようにせき込む。当てた手にはわずかに血が付いていた。
「・・・こいつは、ヤバいな。今までがむしゃらに働いた結果がこれか。ここで医者に診てもらわないとな」
少し息が落ち着いてから。ベッドに身を置く。
「・・・いずれにしても、俺はそうそうくたばらないよ、ミハル・・・・・」
カイは見上げた天井を見越して、かつて心を通わせた少女の姿を思い浮かべたかに見えた。
 
戦線を渡るキッカたちのもと、一人の傭兵が立ちはだかる。
それは、かつてジオンの猛将の片腕と称された男だった。対峙するキッカはあらためて戦争の歴史の重さを思い知る。
次回、機動戦士ガンダム・クレイドルエンド
『老兵は語らず』
君は、生き延びた先に何を見るのか。

| |

« 今週の神様20年度46号:時には開き直りも大切だの巻 | トップページ | ep26:Re:RISE<今更ながらビルドダイバーズRe:RISEレビュー> »

ガンダム」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 今週の神様20年度46号:時には開き直りも大切だの巻 | トップページ | ep26:Re:RISE<今更ながらビルドダイバーズRe:RISEレビュー> »