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第6話:忘れられた地で(その3)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、旧都心にて不良グループと対峙するキッカたち。ことにキッカとまとめ役の少女との対戦を中心にお送りする運びです。それでは、ごゆっくり。
 
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第6話:忘れられた地で
その2
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
 
 
少女のハイザックと対峙するキッカのニュープラス。あくまで取り締まりの一環として機体の確保を優先とするだけに、キッカも取り押さえんとしても少女も地形を利用して避けつつも翻弄する。
「このセシル様に喧嘩を売ろうだなんて、連邦の精鋭だか何だか知らないけど身の程知らずだな」
実際喧嘩を売ったのはその少女セシルの方だったが、対するキッカも少しあせりを覚えてか、
「どうして、こんなことをするの」と返す。
「知れたことさ、あんたら連邦の人間が戦争をやめようとしないからさ」
「・・・なん、ですって・・・・・」
セシルの応えを受けるキッカ。実際その応えには間違いなかった。たしかに一年戦争からの歴史を鑑み、ジオン、デラーズ、ティターンズ、そしてネオジオンと、連邦は仕掛けられた側だったが根本的には連邦の体制にあるのだというのはキッカでも理解はできる。その意味でも連邦が戦争をやめようとしないと思うのも理解はできる。
その上でセシルの言はなおも続く。
「宇宙移民だか何だか知らないけど、邪魔な人間を宇宙に飛ばして自分たちお偉いさんだけが楽な生活を送って下の市民は貧乏暮らし。その上戦争で半分の人間を殺しまくっても戦争をやめようとしない。その結果があたしらみなしごがこんな苦労をしなきゃいけないんだ」
セシルの言にふとキッカ自身の過去の想いが脳裏に浮かび、それがセシルの憤りを重なりキッカの中に何かがくすぶったかに思われた。
「だからここで力をためて連邦の奴らにひと泡吹かせてやるのさ。ここまで来れば間抜けな日本支部の奴らは何もできやしないさ」
その上でキッカの中に、何がしかの火がともったかに感じられた。
「・・・要するに、甘えて駄々をこねてるだけなのね、あなた・・・・・!」
「な、何だよ・・・・・」
ν+が突進し、セシルのハイザックにシールドをぶち当てる。
「軍隊が悪い、世の中が悪い、時代が悪い、と、恨み言ばかりを言って、結局は何もせずに暴れているだけ」
「それが、どうしたのさぁ!」
態勢を立て直し、ハイザックの肩のアーマーでニュープラスにぶち当たる。しかしこれはあまり効いていないようだ。
「結局やってることが、ジオンやティターンズやらと何も変わっていないということよ。あなたも、このようなバカなことをしていないで、自分の意思でこの世の中を何とかしないと思わないの!?」
「おまえだって軍人のくせに、いちいちあたしに指図するなぁ!」
「いいかげん聞き分けなさい。死んでしまったら文句すら言えないのよ!」
キッカの一喝が、一瞬セシルを圧倒した。しかし半ば激昂したセシルがニュープラスに飛び掛かる。
突進するゲルググをニュープラスが軽く受けたかと思えば、ニュープラスが倒れざまにハイザックを後方に投げ飛ばす形となった。たとえMSといえど受け身が取れない身になって結局背面の衝撃からしばらくは動けない。一方キッカも幼い頃からハヤトの柔道の業を見て、それが士官学校で見様見真似ながら武道実習に活かされた。そして今になってのMS戦での応用になろうとは。
「まさかMSで格闘戦をするなんて、私も堕ちたわね」と実際落ち着きを取り戻しつつ自嘲する。
その時であった、倒れざま天地が逆になった視界に1機のMSが降り立ったのだ。
「あれは・・・・・?」
降り立ったのは紅い機体、その肩のバインダーに何やらの既視感を感じる。
「あれって、クシャトリヤ、いえどちらかといえば、ガンダムタイプね、でも・・・・・」
一瞬ラプラス事変で勇名をはせた袖付きのMSを思い出したが、しかしそれとは違うガンダムタイプに近いそれ、そういえばグリプス戦役に先立つジオン軍残党の反乱事件があり、そこで使用された試作MS、あれと形体が似ているかもしれない。その機体のバインダーが少し開きかける。
「あれはまさか、ファンネル、待って、撃たないで」
態勢を立て直したキッカが止めようとするが、
『・・・心配はいりません』
その機体からどこか聞き覚えのあるような声が通信に入る。
機体のバインダーから“ファンネル”らしき物体が数個射出され、そのまま体当たりでハイザックの手足を貫き、ついで頭部をやはり体当たりで破壊する。
少し呆然としつつも、キッカは問いかけるようにつぶやく。
「まさか、ファンネルごとぶつけるなんて」
『機体の無力化を目的とした、メタルビットです。ちなみに“ファンネル”というのはキュベレイタイプのサイコミュ・ビットシステムからの俗称ですが』
その機体からの応えの後に胸部キャノピーが開き、そこからパイロットが姿を現す。ヘルメットを脱いで正体を現すも、夕日越しでシルエットしか認識しえないがそれはまさにキッカが会うべき人物の一人だった。
「まさか、あなたは・・・・・」
「はい、ですが今はオードリー=バーンとお見知り置きを」
「・・・ミス・オードリー、ねえ」
今となっては見え透いた偽名を名乗っている彼女、ひとまずキッカもキャノピーを開き話しかける。
「まさかあなたからコンタクトを取るとはね。あなたが私をどう見るかはひとまず問わないけれど」
「“ホワイトベース最後の勇者”その名はノックス中佐以外が称するのは憚られるながらも、その名の通りならアムロ=レイ、ブライト=ノアに連なる者たりえます。ソロモンの件は我が父も武人として彼らと対したのです。私としても遺恨は残しますまい。肝心なのはあなた方がセイラ=マスと呼ぶあの人、私が彼女と会うに値うべきか・・・・・」
今の立場を述べたオードリーに、ひとまずの同調の意を表しつつキッカも応える。
「あなたもまだやるべきことがあるはずだから、それは私も同様だけれど、ひとまずはそれをこなしてから、きたるべき刻に備えることとしましょう」
キッカの応答にオードリーもうなずいて承諾の意を伝える。それに続いて、
「それから、そちら側にミウ=ウラキがいると思います。彼女に伝えて下さい。御父上は元気だと、それでは・・・・・」
と、オードリーはそのガンダムに搭乗し、この場を離れる。
「また会う日までのお楽しみってところね、それよりも」
『大丈夫か、キッカ』
その直後にTWのトーレスから通信が入る。実はあらかじめ自分とオードリーの対話をTWにも伝えていたのだ。それはオードリー:ミネバ自身も承知してただろうと踏み、おなじく彼女の真意の一端を知ることもできた。ともかくもキッカは応答する。
「ええ大丈夫です。とりあえずお遊びの時間は終わったかしらね」
「さしあたり不良たちの違法機体も回収できたところだし、当分の間は静かになると基地の方も大戦果だとほめちぎっていたんだが」
「それは何よりね、肝心の不良たちはみんな逃げたようだけど、それは今後の基地の人たちに任せましょう。私たちが成すべきはまだまだ先だから」
「それも、そうだな。あと先方がミウの名を呼んだけれど。たしかにあの機体も、おそらくウラキ博士の作かもしれないかな」
「たしかにそうね、特に異常がなければ今回の作戦は終了とします」
と、ブリッジのノックスたちとの通信の後、各自帰投を命ずる。そういえばハイザックの残骸にセシルの姿はなかった。おそらく対話の際に脱出したのだろうか。
 
「もう、今回も無事で済んだからいいですけど、今後何が起こるか分かりませんから今後は気を付けて下さいね」
「そうね、ごめんなさい」
全機帰還の後、クムが小言を述べる形で、無事の帰還を喜んでいた。その一方で何やら動揺を隠せないミウの表情を認め、そちらの方は今後話し合う場を設けることで同意する。
そんなやり取りの中、帰還したギルダスがキッカに呼び掛ける。
「大佐、俺たちも今は戦うしか能がありませんが、俺たちなりに大佐たちのお役に立ってみせますよ」
「ええ、お願いします」
クムのうなずきとともにキッカも了解し、今回の作戦を経てさらに部隊の結束も高まったかに思われた。今後はどうなるかは分からないが、今はその結束を信じてみようとも思うキッカだった。
 
しかしその夜、川崎基地の人員による事後処理の一環として今回の騒乱の首謀者たちの摘発が行われたが、騒乱を引き起こした不良たちは一人たりとも確保できなかった。もちろん基地の兵士たちはかつてのエージェントたちとは引けを取らなかった、にもかかわらず不良たちの逃亡を許したのだ。実際エージェントのほとんどがテーザー弾を受けて気を失っていた。
そのエージェントを退けたのが、黒ずくめの工作服に身を包んだあの女性だった。傍らには先にキッカと対峙したセシルもいた。
セシルは彼女が指示した場所へと導かれるまま足を運び、それを他の不良たちが待ち構えていた。彼らも彼女によって助けられたのだった。
「おおいセシル、無事だったか」
「だから俺もやめとけって言ったんだ。しかしあそこまでやられるだなんてな」
「しかも俺たちを懲らしめに来たのがあのキッカ大佐だなんてなあ」
もちろんセシルに対する文句もあるが今回の騒ぎであそこまでやらるたとは彼らも思いもよらず、今まで振り回されたことを差し引いても一番打ちのめされたセシルを本心で心配していたのだ。
そんなセシルも、仲間の目の前で座り込み応える。
「そうさ、あれほど強かっただなんてあたしも思わなかった。あの赤い奴だけじゃなく、キッカ大佐のガンダムだって。本気出せばひとたまりもなかったんだ」
セシルの本心での詫びに仲間も応え、その女性も一つ話を持ち掛ける。
「そこであんたたちに力を貸してもらいたい。このどうしようもない時代を少しでも変えるためにね。もちろんあたしらだけじゃ心もとない。ほかにも頼れそうな奴にもあたってみる。それから今の話には乗るか降りるかはあんたたち次第だ」
そんな女性の話にしばらく時を置き、セシルが厳かに応える。
「・・・あたしは、乗るよ。大佐の言うように、あたしはただ甘ったれて、暴れ回って駄々をこねてただけだった。その時代を変えるってのも、うまくいかないかもしれない。でも、本当に変えられるなら、あたし、やってみたい」
その言葉に他の不良たちも一時顔を見合わせつつも意見をまとめる。
「えっと、俺たちも乗ってみようと思う。どうせここにいても連邦軍に追われるだけだし、かといって他に頼るのもなさそうだから・・・・・」
「そうかい、なら決まりだね。近くにジープがある。少し狭いけどこれだけなら乗せられる。ここもかぎつけられそうだから長居は無用だ。さあ早く」
女性にせかされるまま一同はこの場を離れる。
「あ、そうだ、あたしはリンダだ、よろしく」
その女性、リンダの名乗りに応えつつ、セシルたち不良グループは夜の闇に消えるのだった。
 
そして後日、補給を済ませたTWは、日本を発ち次の任地へと赴くことになる。その一方件の酒場ではレツが勤務を早めに切り上げてビールを傾けていた。その隣に基地の司令が小休止と称して同席し自分のおごりとビールをふるまったのだ。
軽めの笑顔でレツがジョッキを傾け、司令と傍らの彼女がそれに倣い。他の客もそれぞれ厳かな面持ちでジョッキを傾ける。それぞれがキッカたちを見送る形で乾杯をするのだった。
 
 
キッカたちは一路セイラのもとへ向かわんとしていた。
しかしそこに懐かしい人物が訪れる。その男カイが告げたのは恐るべき報せだった。
次回、機動戦士ガンダム・クレイドルエンド
『古き友来たる』
君は、生き延びた先に何を見るのか。
 
・一応の機体設定
GP02クシャトリヤ:かつてのデラーズ戦役においてアナベル=ガトーが搭乗したGP02サイサリスをベースに、ラプラス事変で猛威を振るったクシャトリヤを接収後の機体データをもとにウラキ博士が4年をかけて性能を移植した機体であり、現在オードリー=バーンと名乗る女性の愛機となる。
特徴としては肩の4基のギミックアームから様々な装備に換装でき、今回はメガ粒子砲とビットシステムを使用した。

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