第6話:忘れられた地で(その2)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>
さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、ふとしたことから東京旧都心に巣食う不良グループの取り締まりの協力を受けることになったキッカたち。そもそも軽い任務と踏んでいたが思わぬ苦戦を強いることになる。それに伴い周りの人々の姿も描く運びとなりました。ともかくそれらの様をお送りすることとなります。それでは、ごゆっくり。
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第6話:忘れられた地で
その1
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
川崎の連邦軍基地にて旧東京地域の取り締まりの協力を求められてそれを承諾したキッカは、アレンたちを交え、作戦の詳細を話し合うこととなる。
「今回、旧都心に巣食う過激派、というよりも不良グループの取り締まりの協力を要請され、ひとまず承諾と相成りましたが」
そこでアレンが意見を具申する。
「たしかに気が進まない任務のようですが、それだけに早めに済ませればいいですね」
「そう、その通りね、でも作戦そのものは要は地上戦だからいろいろと制約を受けるだろうから、まず私とライエルで出撃します」
それにクムが意見する。
「また大佐直々に出られるのですか」
「こういうのはある意味戦闘とまではいかなさそうだからね。相手勢力の無力化を中心とするならある程度の威圧も必要でしょう。あと何か質問は・・・・・」
アレンたちはともかく少し不安げなクムもひとまずは黙っていたので、そのまま解散し作戦の準備が進められる。
解散から程なくトーレスに呼び止められ、先にギルダスが発した言葉について告げる。
「・・・そうだったんですか・・・・・」
「まあ、みんなもみんななりに君の役に立ちたいと思ってるんだ」
「そうですね、たしかに一人だけでは何もできないのですから」
そこでトーレスも一つの疑問を呈する。
「まずは目の前の問題にかかればいいかな、ああそういえば、先に対した敵について、たしかランバ=ラルの息子と名乗っていたかな」
「ええ、そのようです。でもその事情はよく分かってないのですが」
「ことの真相はまだ分からなさそうか。まあとにかく、あまり結論は急がないほうがいいかも。後でノックスと相談しよう」
といったところでトーレスとの会話も切り上げる。
一方でニュープラス等MSの調整も済ませ、あとは出撃のタイミングを待つのみだった。
その旧都心にて数人の若者が廃ビルの一つでたむろしていた。件の不良グループだった。
この日もいつも通り市街地を走り回り、先に指定したターゲットの建物を破壊していく。いかに隔離地域とはいえたしかに違法行為及び破壊工作でもあるが彼らにとってはスリリングなスポーツみたいなものだろう。しかし今回ばかりは事情が違う。
「おい本当にやるのか、今港じゃあの新鋭艦が停泊してるって話だぜ。下手に刺激しちゃ何が出てくるか」
口々に不安を訴える不良たち。しかし一人の少女がそれらを遮るのだった。
「何言ってんだ、連邦の腰抜けどもに何ができるってのさ、むしろ一泡吹かせられるいい機会だ」
「それはそうだがよ」
「ともかく連邦の奴らが出てきてもいいようにそれなり仕掛けも用意している。ともかくこっちの思うつぼさ」
というわけで、今回の作戦というか悪さは、その少女の音頭で取り行われることとなった。
その一方、東京湾外の海底にて一隻の大型潜水艦が停留していた。その艦内では一人の女性がノーマルスーツに着替えとあるMSに搭乗しようとした。
「どうしても行かれるのですか」
そこに一人のエージェント風の女性が呼び止める。口調こそ丁寧だが意外と親しげなのが分かる。
「あそこにはキッカ大佐がいます。彼女の目的の一つが私なら、一度会わねばなりません」
と懸念する女性エージェントと、傍らで肩をすくめつつ見守るもう一人の男をよそに、彼女はそのMSに乗り込む。あとはキッカたちの動向を見極めるのみだったのだが。
戻って旧都心、不良グループのお遊びの時間が始まり、それを察知した基地の報せを受け、まずはライエルが、次にキッカ、そしてリ・ガズイの3機が出撃する。
まずはライエルのジO。脚部スラスターで疾走する様はまさに圧巻そのものである。もともとが木星の重力下でも活動できるよう、スラスター関連を強化したものでそれらの再現には時間がかかったが、かつてのシロッコの機体に引けを取らない。唯一オリジナルと性能が劣るのは操縦伝達のみであろうが、それはシロッコの卓越した操作能力が合いまった故のことで、一般パイロットなら十分すぎるほどの操作性能である。
ともかくも先行したライエルがサブモニターのコンソールを操作し、前もって基地の人員が調べ上げたいわゆるブービートラップの位置を割り出し、それをかいくぐり、時には排除をして切り開く。
そうこうしているうちに、ライエルの目の前に不良の一人が駆るジム系のMSが姿を現す。すかさずサブモニターに相手の形体をAI検索で各パーツごとの特徴を割り出し、それは各機体をより集めたカスタム機であることが判明された。
「悪くいっても“寄せ集め”ってところでしょうか、まあいずれにしても」
すかさずジOが突き進み隠し腕のサーベルを一閃、敵の両足を切り裂き、すかさず武器を持った腕を、ついでにもう片方の腕を切り裂く。
こうして手足を失い、あおむけに倒れたジムにライエルが近づく。
「無駄な抵抗をやめて下さい」
ひとまず降伏を勧告するライエルだが。
「な、何をっ・・・・・」
わずかに言い返さんとする不良だが、ジOの胸部バルカンがジムの頭部を破壊する。
「とりあえずは警告です。投降して下さい」
「わ、分かった、助けてくれ」
「それでは、コックピットから出て両手を挙げて・・・・・」
ライエルの指示に不良が姿を現そうとする。突然、ジOの背中に何かがぶつかり、ジムに倒れかかる。
「ひ、ひいいいい・・・・・!」
ジOの巨体が不良に倒れかかろうとするも、すんででジOの腰のギミックアームが支えとなって、不良は潰死は免れた。
「まだトラップがあったのか、それから彼は逃げたようですね」
「大丈夫ですか、大尉」
上空のリ・ガズイのアレンからの通信が入る。
「ええ、僕は大丈夫です。引き続き調査を続けて下さい」
「はっ」
「まだまだ反応があるようですから、もうちょっと用心しよう」
と、ライエルもこの場を離れる。
その後も不良たちの違法MSは数機が摘発される。
「これも任務だけど、君らが抵抗すれば本当に撃つぜ」とギルダスが構え、
「わ、分かった・・・・・」とMSから降りるや、そこに乗った不良も一目散に逃げだしていく。
「あっさり逃げたな、こいつは大佐に怒られちゃうかな」
と軽い自嘲を交えて同じく安堵の表情を浮かべる。
そしてキッカのニュープラス。今だメインの武装は固まっておらず、サーベルとシールドのみ装備で街中を進んでいた。
「ずいぶん奥まったところまで進んだけど、はたしてどのような罠が隠されているやら」
モニターから辺りを見回した後で、その一角に標準を合わせる。
「・・・たとえば、あの辺りかしら」
そこに頭部バルカンを打つ。そこからビルの壁の一部が倒れたかと思えば天井からがれきの塊が降ってきてさらには地面から鉄筋が針山の如く生えてくる。
「こいつは思った以上に面倒ね」
まさかここまで巧妙かつ執拗な罠を張り巡らせていくとは、たしかに自分たちを意識して張っていったとはいえ。ここまでくれれは単なる不良の悪戯ではすまされない。
「ここのリーダーは相当頭が切れそうね、やはり私が当たらなきゃいけないかな」
その後もキッカはあやしそうな箇所を調べては罠を発動させる。そしてそのうち最後の罠の発動とともに1機のMSが現れる。
「・・・ガンダムタイプか、こいつは極上の獲物だな」
そのMSに乗っているのは、今回のまとめ役の少女だった。この時点お互いの素性を知らないままに対峙することになるのだが。
造船会社では屋上で遠目の戦火を眺めやるレツに数人の社員が避難をせんとしてレツに呼び掛ける。
「おい、なんだかやばくなってきたみたいだから、俺たちもひとまず・・・・・」
「いや、ここは大丈夫だと思う。逃げちゃ悪いからな」
レツは半ばそっけなく応える。その心の奥にはキッカはともかく、カツやハヤトの姿がいることは語るまでもなく、また社員たちもそれを知るすべはなかった。
そこに一人の女性社員が近付いてレツに寄り添うように戦火を眺めやる。それに安堵したのか社員たちもそれに倣って遠目から眺めやる。
「そうだな、あのキッカ大佐だ、なにせあのホワイトベース最後の・・・・・」
別の社員が「おい!」と小声でたしなめるも、
「大丈夫だよ、あいつには迷惑だろうけど」とレツがなだめるように応える。いずれにしても一同は事の趨勢を見守ることにするのだった。
そしてあの女性も、遠くの建物から双眼鏡片手に戦況を見守らんとする。
「やはりあの娘、キッカ大佐と対するか、これも運命なのかねえ、ロニ・・・・・」
自らの今は亡き友だちに語り掛ける如くつぶやきつつ、双眼鏡をのぞき込むのだった。
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