はしがきのまとめ<本当は怖いドラえもん>
今回はこの場を借りて本記事『本当は怖いドラえもん』において本当の意味で読める記事をと、今までの記事をまとめた末に本記事を掲載する運びとなりました。そこで当記事に連なるいわゆる前の記事をお送りして本記事に移ることとします。
はしがきと物語におけるドラえもんの歴史
先の記事と繰り返しながらも、そもそもドラえもんのお話の主人公ののび太くんに様々な問題が降りかかり、そのたびにドラえもんに頼み込んではドラえもんが出すひみつ道具の少しふしぎな力と一応の創意工夫で、時には悪戦苦闘しながらも解決をしていくといったものだった。
それに加え初期のストーリー展開を鑑みて、のび太くんが本来悲惨な運命をたどるところを徐々に好転させていくものであった。
そもそもドラえもんの連載は、掲載された小学館の学習雑誌(小学一年生から四年生)の性質上1年完結の展開で、年度末に一応の最終回は各雑誌に記載され、ひとまずの区切りとしたのだが、その後今までのお話が記載された単行本も発売されドラえもんの人気も徐々に高まるにつれ、それから当時の読者の反響から連載を続けられることに相成った。
それでもまた(当時として)本当の意味での最終回『さようならドラえもん』が発表され、これで本当の意味での区切りになるはずだった。
その上で新しい作品で新しい物語を創ろうとしたのだが、どの作品もドラえもんとはさほど変わらずそれら派生作品、中にはポコニャン等ヒット作品もあったが、やはりドラえもんほどの盛り上がりには至らなかった感もあり、そもそもドラえもん以前に活躍した『オバケのQ太郎』から受け継いだ日常の少しふしぎなお話を本当の意味で継承するのはドラえもん以外にないといった結論に至り、以降の『帰ってきたドラえもん』をはじめとしてドラえもんも連載をまた再開する運びとなった。こうしてドラえもんを中心として藤子不二雄(当時)の少しふしぎなお話が続けられる、はずだった。
そのドラえもんのすこしふしぎなお話は、のび太くんがドラえもんのひみつ道具を使いいつも通りの様々な問題を解決しようとするのはいいけれど、ストーリーの幅が広がるにつれ、その問題解決からの悪乗りでかえって手痛いしっぺ返しを食らうお話がちらほらと発表されることと相成った。
これについては6巻以前でも、活躍をしようとしてもかえって失敗するお話はあったが、これは先のオバQが活躍をしようとしてかえって失敗するいわゆるズッコケオチからつながるものであったが、オバQのそれはあくまで活躍をしようとしての失敗で、ドラえもんの場合は掲載している学習雑誌のこともあり、作者の藤子F先生も何か子供のためになるお話を描いてみようといった、悪く言えばお節介の虫が騒いで読者に対するいましめや教訓、しつけ話、とんち話などを中期辺りから描くようになる。しかしどういうわけかそれらのいましめにいたる問題を起こすのがのび太くん一人に集中しがちとなり、こらしめと称して責められていくのも後期になってちらほらと描かれたりもした。かくいう編者もそれらのお話にごもっともと共感しながらもどこか心に引っ掛かる違和感を覚えずにはいられなかった。
そこでもう一度中期辺りの事情を思い起こせば、それらに至るまでの心当たりは思い浮かべることがいくつもある。そもそもストーリーを製作する上での作者の藤子F先生の心情すなわち気持ちについては子供たちのためにユメを送ろうといったことに変わりはなかったとことわっておいて、
まずはいわゆる最終回と連載再開にこぎつけられたのは先に述べたこととして、その後でドラえもんのテレビアニメ化を経た劇場版アニメ制作に伴ってのいわゆる大長編。これはドラえもんやのび太くん、そして仲間たちがふしぎ世界を大冒険していくといった展開だが、本来いじめっ子のガキ大将たるジャイアンとスネ夫がここでは頼れる仲間と相成っていて、それで彼らに対する情も増し、反比例的にのび太くんが問題児的な要素を受けていきがちとなった。
次に中期あたりから準レギュラーになった出木杉くんの存在だけど、彼については後でじっくりと述べたいと思う。
そして決め手になったかもしれないが、長年仕事を共にしていた安孫子元雄先生、すなわち藤子A先生との作品の利権がらみからのコンピ解消もあり、それに伴ったであろう体調の変化もあった。それが内面的な考え方にも影響を受けてしまったといった感があった。
それらの要素から次第にドラえもんにおけるイマシメ話が頻繫かつ深刻化していったことだろう。もともと読者へのイマシメが次第にのび太くんへのイマシメへと移ってしまった具合に。
その結果が日常でのお話においてのび太くんが活躍するどころかかえって失敗するお話、すなわち返り討ちがもっぱらといったお話がもっぱらとなり、またいくらかの読者が「ダメで悪い子」のイメージでのび太くんを見るようになった。
加えて藤子F先生もそれらのお話は必ずしも本意ではなかったと洩らし、それでいてそのジレンマに終わりまで抜け出せなかったきらいがあった。
今でこそ新旧のお話を並列して楽しんでみることができるが、最近になって先生の作品集が発売され、その年代別に読み続けていくうちにそういったある意味暗澹とした思いが呼び起こされる。
そういったいきさつから、いささかひねくれながらもドラえもんのストーリーに関する問題点、ことに主人公ののび太くんの行動と言ってしまえば扱いを中心に挙げつつ、作品に関するレビューをお送りする運びとなったわけである。
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