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第4話:月で待つもの(その1)<機動戦士ガンダム クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、任務にあたりMSの受け取りのため月に向かわんとするキッカ、その前に新たなMSを受け取らんとするアルセス一党の様をお送りする運びです。それでは、ごゆっくり。
 
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
イントロダクション
第1話:ホワイトベース最後の勇者
(その1)
(その2)
(その3)
第2話:生きるということ
(その1)
(その2)
(その3)
第3話:継ぐものたち
(その1)
(その2)
(その3)
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
 
 
かつてガルマ=ザビの敵討ちの密命を受けたランバ=ラル隊、その中で軍の上層部から従卒として出向した少年兵ジョアンだったが。
「何故です大尉、自分だけ後方に下がれとは」
ラルから直々に後方待機を命じられた。その当時ジョアン自身もまた血気盛んなジオン軍人でもあったのだが。
「この戦い、万が一だが勝てるとは限らんからな、もしもの時にあれを託せるのはお前しかいない」
ジョアンの肩に手を添え、ラルが告げる。
「あれとは、いったい」
「実は俺には一人息子がいてな、ハモンとの子供だ。今はあれの知人のもとで育てられている。彼らがお前を受け入れないやもしれぬ。それでも、お前は見守るだけでいい」
「・・・はあ・・・・・」
「あれが軍人以外の路を進めばそれでもよし、もし軍人を戦士の路を志すならば、その時は、導いてやってくれ」
「・・・は、はっ・・・・・!」
その日以来、ジョアンは日に陰にとラルとハモンとの間の一粒種アルセスを見守っていた。育ての親である夫婦もジョアンのことを気にしていて、一応の距離を保っていた。そしてアルセス自身もやけになつっこい男ジョアンのことを気にしていたが、やがて自分を見守っていたのだなという感もして、ひとまずは受け入れていた。
やがて育ての親の夫婦も相次いで亡くなり、その実子のリッドもそのまま弟分としてアルセスが面倒を見、近隣の不良グループからつまはじきにされていたレトーを仲間に入れて界隈の一大不良グループを気付くに至り、ジョアンが初めて近付いてきた。そしてアルセス自身のぼんやりながらの大志を理解したジョアンの導きで小さいながらも独立した傭兵部隊への旗揚げと相成ったのであった。
 
アルセス一党の“スポンサー”から新型MSが調達されたと聞き、ティクバが格納庫へと足を運ぶ。その前にアルセスが気難しい顔でたたずんでいた。
「ああ、来たか、ティクバ」
「あ、はい、隊長さん」
近付いてきたティクバに応えるアルセスは早速話を切り出す。
「今回追加されたMSについでは、まあ、もともとお前のために用意されたものなんだが・・・・・」
「何か、マズいことでもあるの」
「まことに恥ずかしい話だが、あのMSは俺的に気に入ったのだ。そこで今まで俺が乗っていたケンプファーは、お前が乗ってくれ」
「え、でも、ほんとにいいの」
そもそも居候たる自分が、どんな機体でも文句は言わないが、まさか隊長たるアルセスのケンプファーを自分が乗ろうとは夢にも思わなかったのでそれは素直に喜べたが。
たしかにあの機体、厳密にはどの機体も性能そのものはさして変わりはなかったのだが、やはりケンプファーよりは見栄えがあるから、自分よりアルセスの方がふさわしいと思った。
ともかくも新たに調達されたMSはアルセスが、今までアルセス機だったケンプファーはティクバが乗ることとなった。
「ともかく、お前にも悪いようにはしないつもりだ」
「うん、ありがとう。隊長さんって、まるでミネバ様かキッカ少佐みたいだ」
感謝のつもりでティクバは思わず口に出した。
「よせよ、おだててももう何もやれないな、今はあれで精一杯だ。ああそれから、キッカ少佐じゃなくて、キッカ大佐だ」
返したアルセスも、たしかに結局のところ自分は彼女たちよりもティクバ自身に近いと心の中で思っていたのだが。
 
アルセスとティクバが配備されるMSについての打ち合わせを行っている頃と同じ頃、TWが月のアナハイム向かう準備をしてていたに頃、キッカがライエルと打ち合わせをしていた。
もともとライエルはどちらかといえばノックスの腹心的な存在だが、部隊の人事上キッカの副官というのが正式な立場だった。
それでもキッカの腹心的なクムとのつながりもあり、非公式ながらもクムをキッカを通じて自分の補佐、つまりは次席の副官職のポストに落ち着いていたのだ。そして新たに入ったトーレスには作戦行動の指針たる参謀役をとノックスが考えていて、それに関してトーレスも了承していた。そもそもトーレスも、ブライトからは何も言われなかったが、キッカを守るようにとの意を受けていたのだ。その参謀役というのもその一環ということだったが。
さておきキッカとライエル、ミーティングルームにて何やらの話し合いが聞こえ、ひとまずはそこに向かわんとする。
「・・・そ、そんな、困ります・・・・・」
「・・・そこを何とか、頼むよ・・・・・」
そこではあの大人びた新兵のギルダスがクムに何やら頼みごとをして、クムがその返答をしかねているかに見えた。
「何を、してるの?」
キッカは子供っぽく顔を出す。どちらかは分からないが助け舟のつもりだった。
「ああ、大佐!」
「はっ、大佐」
クムが応えるのと同時にギルダスがすかさず敬礼をする。
「何か頼み事をしてるようだけど?」
こういう言い方も子供っぽいなとも思いつつ問いかける。
「はっ実は、部隊の人事について相談をと。いずれ具申をするつもりでしたが」
「それに関して、クム少尉と話し合っていたようですが」
ギルダスの言にライエルが応える。
「ご承知の通り、自分たち3人が当部隊のMSパイロット要員として着任しましたが」
「そのMS部隊の隊長職を、その、私にと頼まれたんです」
「ここは経験豊富なクム少尉がということで要請したのですが」
少し思案をしたかのようにみえた後、キッカが告げる。
「うん、じゃあ、決まりね」
「た、大佐・・・・・」
「まあ、同じ少尉でもたたき上げのあなたが、卒配のギルダスたちに引け目を感じるかもしれないけど、ものは考えものよ。たしかに引っ張っていくのに自信はなさそうだけど、こういうのは一人が引っ張っていくよりもお互い支え合っていければいいんじゃない。たしかトライスターもそうだったし」
「はっ!」
ギルダスが直立で応える。実はギルダスたち新兵にとってトライスターはパイロットとして一番尊敬する者たちだった。一方でクムにとっても雲の上の存在でもあったが。
「大佐が、そこまで言われるなら、私も、できる限り頑張ってみますが」
「そうね、詳しいことはケントやトーレスさんにも相談するから」
と、クムを伴ってキッカがこの場を後にする。軽く敬礼をするギルダスに、ライエルも一言。
「大佐は常にご自分の器量をはかっていると同時に、僕や君たちの器量もある意味試されているのです」
「はっ」
「ところで僕もMSの操縦に関しては心得がありますから、先輩と相談してそれなりのポストに就いてもいいですが」
「と言いますと、ライエル大尉が隊長職に就かれると言いますか」
「そうなりますね、僕もできる限りやってみましょう」
そんなわけで、キッカの特務部隊のMSパイロット要員はまだ内定段階だが、ライエルが隊長、クムを副隊長、そしてギルダスたち新兵がその下に就くことになる。そうなればジェガン4機だと不足が生じる。そのために付きのアナハイムに赴いてMSについて直談判をするのだ。
 
その月のアナハイム、会長室で一人の初老の紳士、というには少し野生的なその男。新たにアナハイムの会長職に就いた、ウォン=リーだった。今彼の手には1通の親書があった。
その宛名にはとある財団の銘が書かれていた。
やがて秘書が入室し、一つの事項が告げられる。
「会長、ビダン主任が参られました」
「そうか、分かった」
ウォンがそっけなく応える。その秘書がさがり、告げた相手、カミーユ=ビダン。かつてグリプス戦役における英雄たる男を待ち構えるのみだった。

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