第3話:継ぐものたち(その3)<機動戦士ガンダム クレイドルエンド>
さてみなさん、今回のクレイドルエンドは、いよいよ特務隊の発足式にかかり、大いなる闘いの渦に飛び込まんとする様をお送りいたします。そこには懐かしい顔、そして新たなる力となる若者たちがキッカたちのもとにはせ参じ、頼もしき仲間となることでしょう。
まずはこういったところで、それでは、ごゆっくり。
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第3話:継ぐものたち
その2
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
一台の地上車が基地脇に止まり、そこから3人の兵士が飛び降りる。
「急ごう、まだ間に合うはずだ」
「今日に限って寝坊とは我ながら情けない」
「やっぱり夕べの宴会がたたったのかな」
「エリート部隊だか何だか知らないが、おだてられるんじゃなかったなあ」
「ともかくだ、ここで遅れたら今後の任務どころじゃない、何せそこの司令官は・・・・・」
と異口同音にドックへ至る建物に入っていく。
辞令を受けた後、キッカとノックスは発足式のために新造艦が停泊しているドックへと向かっていた。
「・・・でも、あなたと私とで理想的な人事、といっても・・・・・」
キッカは発足した特務部隊の人員リスト、特に新たに配属されたMSパイロット候補生に目をやっていた。
「・・・俺たちだけでは戦えない、か。まあスタッフをいかに動かすか、そして動いてくれるか、かな」
「たしか残りの人員もみんな入ってくるって話だけど。クムが入ってくれたなら有難いわね。ああ、もちろんライエルもね」
「まったくだ、しかし彼らも期待は持ちたいな」
「ええ、それから、トーレスって、どこかで聞いたかな」
特務戦艦タイニーウィング
かつてのペガサス級戦艦ホワイトベースの流れを組む強襲揚陸艦である。アーガマの要素も組み込んでいるせいか、小さめの翼からその名がついた。
それが停泊している桟橋にクムをはじめとする新たに結成された部隊の人員がいる。
クムはそのTWを見やり、その後でスタッフ全員を見やって何やらを思案しかける。
先日クムは少尉に昇進した。やはり今までの戦果とキッカの遭難に関して部隊の事後処理が評価された結果であった
「よう!」
そんなクムの肩を一人の声が叩いた。振り向くとそこには懐かしい顔があった。かつてのアーガマのオペレーターだったトーレスだった。
グリプス戦役を経て第1次ネオジオン戦役後一時除隊したが、第2次戦役後、ブライトの頼みで軍に復帰し今までオペレーターとして任務にあたっていたのだ。
「トーレスさん、まさかこちらにご厄介になるのですか」
「今度この部隊のオペレーター主任に転属となったんだ。ま、ブライト大佐の頼みでね」
「そうだったんですか」
そのトーレスもまたTWを見やる。
「しかし、この船もけっこういい船だな」
「そうですね、確かに、アーガマの面影があるかも」
とあの時の頃に想いを馳せたりもする二人だった。
戻ってキッカとノックス。艦に向かいつつ、新たに配属される人員について話題を移す。
「ああ、残りの人員も編入されたってことだし、あと新しく人員も補充されるという」
「うん、確か卒配のパイロット候補生が3人と、それに・・・・・」
一方で先の3人は廊下を駆けていく。
「あっちが近道だ」
「発足式に遅れるなんて示しがつかないからな」
「よし、これなら間に合うぞ、司令官より先につけるはずさ」
「ところでその司令官の件は本当なの・・・・・」
「ああ本当だ、なにせあのホワイトベース最後の・・・・・」
と、3人はキッカたちの目の前を通り過ぎんとする。
「・・・君たち!」
ノックスがその3人に呼びかける。それに応じ3人は振り向く。
「はっ、ま、まさか・・・・・?」
「・・・司令官、どの・・・・・?」
「・・・あ、噂をすれば・・・・・」
キッカがレポートに目を通して一言、続いてそのレポートを渡されたノックスが、
「ちょうど君たちの噂をしていた。君たちもまた向かう途中のようだな」
「は、はあ・・・・・」
「それならば一緒に行こう、ゆっくりと、そして堂々と」
「は、はっ!」
3人は多少固い敬礼で応え、キッカたちが歩き始めると道を開けつつそのまま2人の後についていく。
こうしてキッカたちは艦が配置されているドックにさしかかる。待ち構えていたクムとトーレスたち。後ろの3人、配属されたMSパイロット要員、大人びた男ギルダス、まだ少年の面影がある若者アレン、丸っこい男ウィルがクムたちの列に加わり。発足式に臨むのだった。
「この度特殊任務部隊の司令官を拝命した、キッカ=コバヤシです。当部隊は未だ地球圏を中心に暗躍する不穏分子の取り締まりを中心に、要人との接触を交えて今後の治安維持に努めますが・・・・・」
軽い咳払いで一旦言葉を置き、しかる後話を続ける。
「ここ昨今の政治上、治安上不穏な要素もあり当部隊の任務は軽からぬものもあります。これらの情勢に大きくかかわっている人たちに比べれば我々の背負うものは軽いものがあります。もちろん、あなたたちを軽く見ているわけではないのですが」
その言葉に重きを感じたか、3人は特に気を引き締める。対してクムは先の言に軽く微笑を浮かびかけたが、3人に合わせてか軽く表情を引き締める。
「それでは早速、これからの方針について説明をしましょう」
「はっ!」と、特に三人が返事をする。キッカも内心微笑をしつつ、軽く表情を引き締めて述べる。そこに手を挙げたのはトーレスだった。それは予測したことかと思いつつもキッカも意見を求める。
「トーレス大尉、ですね。何かご意見がありますか」
「先ほど乗艦についての装備を見てきたんですが、ジェガン4機というのもいささか心もとないとは思いますが」
「・・・それは自分も懸念しないでもないですが」
と、軽い挙手とともにノックスが返す。
「現在ではこれが精いっぱいと聞きますが、それについてはお二人にはお考えはありますか」
「一番手っ取り早い方法といえば、月のアナハイムに掛け合ってみるのも手だと思いますが」
「あ、あの、それは・・・・・」
「クム少尉、意見があれば言ってみて」
声を上げるクムにも意見を求めるキッカ。慌てて挙手をするとともにクムも続ける。
「はい、現在アナハイムはメラニー会長の引退と併せて、大株主のビスト財団の撤退もあり。今は会社も規模縮小にかかっていると聞きます。ただ私やトーレス、大尉の知人でもあるカミーユ=ビダン主任なら、話は聞いていただけると思いますが」
「ビダン主任、たしかに会ってみる価値はあるけれど」
キッカが応え、それに合わせ腕を組んだトーレスが返す。
「それに今のアナハイムの会長は・・・・・」
「たしかウォン=リー氏というけれど、そういえばクムとトーレスさんは知っているみたいね」
「ええ、かつてのグリプス戦役で、アナハイムが支援したエウーゴにもたびたび意見を述べるなどうるさい所もありましてね。まあ今は大人しく、いや丸くなったとも、いえますが」
クムも自分の思うところがあるが、ここはトーレスに任せようとも思った。そういえばかつての戦役で衝突したこともあり開発主任のカミーユとは不仲だともキッカには言っていたのだが。
「ともかくもビダン主任の次にリー会長が次の任務のためのハードルということになるわね。でもやってみる価値はあるわ。申請には時間はかかるけれど、当部隊の最初の任務は、これからの任務遂行の簡素化を図るため、月のアナハイム本社を訪れ、装備充実を図ります。それについて何か意見は・・・・・」
トーレスたちは無言で了解を告げる。
「・・・よろしい、では各自準備に取り掛かってください」
「はっ!」
こうして最初の任務のため、各自TWに乗り込み、それぞれの任務に就くべく動き出すのだった。
後日、TWは宇宙に飛び立ち、一路月のグラナダ、アナハイム本社へと向かうのだった。
新たなる力を得るため、キッカたちは月へと向かう。
そして彼女も、かつての希望と再会を果たす。
次回、機動戦士ガンダム・クレイドルエンド『月で待つもの』
君は、生き延びた先に何を見るのか?
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