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第3話:継ぐものたち(その2)<機動戦士ガンダム クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のクレイドルエンドは『継ぐものたち』のその2を送りする運びです。
独立部隊の司令官の辞令を受けるキッカ。そこにブライトの手紙をも受けて、あらためて次代への礎たらんとするキッカの決意をここにお送りできることでしょう。それでは、ごゆっくり。
 
ちなみに前回のストーリーはひとまずここに。
第3話:継ぐものたち
その1
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
 
 
誰かの声が聞こえた気がした。
「・・・キッカ、もう起きなさい」
それは遠き日の記憶、これは間違いなくフラウの声だった。
「今日から学校でしょ、起きないと遅刻しちゃうわよ」
朝の陽ざしとフラウの声とで寝覚めかけるも、なかなか起きられない。
「ほら、起きて、キッカ!」
目覚めると、自分は軍の宿舎、今日は長い休養から明け、独立特務部隊の司令官就任の辞令を受ける日だった。
 
ここはナイメーヘンの連邦軍基地。
孤島からの帰還からキッカは約一月の間、休養と療養を兼ねての休暇を過ごしていた。とはいえ休暇と言ってもこれといってやるべきこともなく、基地の施設内、日がな一日図書室で読書に興じたり、トレーニングルームで汗を流したり、時折訪れるクムとの談笑で時を過ごしていたのだ。
 
基地宿舎 午前8時半
辞令を受けるのは午前10時。それまでの身支度を整えるまでたっぷりと時間はある。
少し熱めのシャワーを浴び、髪を整えつつ、先に届けられた義弟ハルキからの手紙の文面を反芻する。
『拝啓 キッカ義姉さん
想えば僕が物心つく前に家を出て以来、おそらくこのお手紙で義姉さんと通じられるかもしれません。
あれから家も多少は困ったこともありましたが、母さんもレツ義兄さんも元気でやっています。
もうご存知のことかと思いますが、先月ノックス中佐が訪れ、義姉さんのお力になってくれると約束してくれました。でもその前にブライトさんとも約束をしてくれたかと思いますが。
いよいよ義姉さんも大佐に昇進され、お噂では軍の特務部隊の司令官として働かれるとか。
あまり無責任な言葉はかけられませんが、無事に帰ってきてください。僕たちが云えることはただそれだけです。
それでは、またお手紙を寄越すことにします ハルキ=コバヤシ』
最後の言葉と同封の家族、真ん中のハルキの姿にキッカも感じ入る。
「必ず、生きて帰らなきゃね、ハルキのためにも、そして・・・・・」
しかしそういえば、前々から時折自分に語り掛けるあの声こそ。先の“あの人”のほかに義弟のハルキだと、今更ながらに気が付くのだった。
そして、赤を基調とした特務将校の軍服に身を包み、鏡を前に立つ。
「キッカ=コバヤシ、大佐、か・・・・・」
一瞬気を引き締めたかと思えば、自分の地位の高さに少し戸惑ったりもする。
 
午前9時50分
自室から出て基地司令官の執務室へと足を進める。その2分後、執務室の扉を前にノックとともに入室を告げる。
「キッカ=コバヤシ、入室します」
「うむ、入りたまえ」
司令の声に応え、扉を開けた先には、デスクに座している司令と傍らに立っているノックスがいた。
「ケント、あなたが先に来てたのね」
「・・・レディを待たせるわけにはいかないのでね」
代わりに司令が応える。改めてキッカは敬礼する。
「・・・失礼しました。キッカ=コバヤシ、只今入室しました」
「うむ」と司令が応え、腕時計を見つつ告げる。
「9時57分か、定時には今少しあるが、今から辞令を伝える。
本日標準時午前10時をもって、キッカ=コバヤシ大佐を特殊任務担当の独立部隊の司令官に任命する。
それに伴い、ケント=ノックス中佐を同部隊の副司令官、並びに強襲揚陸艦タイニーウィングの艦長に任命する」
デスクから出された書類を司令が読み上げ、キッカが敬礼とともに、
「謹んで、承ります」と応える。それにノックスも倣って敬礼をする。
「これで君に対するわたしの任務は終わったわけだが、実はもう一つ、君に渡したいものがある」
と、もう一通の手紙を、デスクから取り出しキッカに渡す。
「・・・これは・・・・・」
それはブライトからの手紙だった。
 
『親愛なるキッカへ、まずは昇進おめでとう。
しかしとうとうこの時が来てしまった。今では言い訳になってしまうが、我々も何もしていないわけではなかった。自分でも最善と信じる路を歩み続けたつもりだった。
それでも今の混迷を抑えることもできなかったのもまた事実。それを押し付ける形となり、心苦しく思ってはおるがそれ以上に期待も抱いている。
その混迷についてだが、先のラプラス事変、直後のフェネクス事変。それらの収束と“彼女”の演説にてスペースノイドとの確執も表面的には抑えられたとは思っている、がそれも心もとなく、やはり最後の決め手が欲しいところ。
もともとは我々の力添えをするために軍人を志したはずだった。しかし直接かかわらなかったのは、厳しい言い方ながらもよかったことだと思っている。今ではそちらの方が、そもそも無能非力の自分と比べ力があると信じている。そして、人が一人では生きてはいけないのと同時に、一人の力では任務はもとより使命も果たすこともままならない。すべては部隊の人員、そして仲間たち。かつてのWBの我々と同じように、必ずはそれらを果たしてくれるだろう。そしてその時こそ、本当の意味での我らの望み。“人”と“人”とが分かり合える刻がくるだろう。
それでは、任務の成功と使命の大成を祈りつつ筆を置きたい。それまで体に気を付けて、ことが終わった暁に無事にフラウたちのもとに還ってほしい。 ブライト=ノア』
 
読み終えるうち、キッカの目には涙があふれ、それを指で軽くぬぐう。
「・・・失礼しました」
「いや、わたしも君と同じ気持ちだ。かつての一年戦争より20年だ。あれ以来戦乱の時代が続き、我々をはじめ人々は出口のない迷路に陥ってしまった。その上での動乱にあの演説だ。これが打開の機会になればと思うが、今一つ心もとないのもまた事実だ」
「やはり、私たちにその力添えをしろということなのですか」
キッカの答えに司令もさらに重く応える。
「それも心苦しい。繰り返すがわたしたち、そう、言ってしまえばブライト大佐やアムロ大尉を含め、彼らも人の英知と可能性を信じつつ平和と秩序のために戦ってきた。事実人々は今までの戦乱にうみ疲れ、中には生きることに絶望している者もいるという」
「そうですね、私も生に疲れたこともありましたが。その反面何とかしてみようと今まで力を尽くしてみました。それを鑑みて先の事件では、生きるということを考える機会を得て。今再びこの場に立つからには人々の生きる道について力を尽くしたいと思います」
キッカの応えに司令も頷く。
「頼んだよ。かつて人の祈りとともに開かれた時代。それが100年の呪いとなり、それがやっと解き放たれのかもしれない。次の時代こそ人の祈りとともにあるか、そのための君たちの戦いでもあるのだよ」
司令自身の祈りを込めた言葉が告げられ、あらためてキッカとノックスは敬礼とともに応える。
「はっ、それでは、キッカ=コバヤシ・・・・・」
「・・・ケント=ノックス・・・・・」
「・・・これより、独立特殊任務部隊の任に当たります」
こうしてキッカとノックスは軍の特殊任務にあたることとなる。まずはクムたち部隊の人員の前での発足式を経て母艦での任務にあたるのだが。

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