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第二話:生きるということ(その3)<機動戦士ガンダム・クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のクレイドルエンドは第二話のその3をお送りいたします。
第1話冒頭にて遭難し、南の島で雌伏していたキッカがいよいよ助け出されるエピソードをお送りいたします。今回の創作に際し、ジ・オリジンのEDからとあるエピソードが思いつき分にしました。それのイメージで読んでいただければとも思っております。それでは、ごゆっくり。
 
なお前回のストーリーはひとまずここに。
生きるということ
(その2)
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
 
 
ノックスがカルイザワのコバヤシ家を訪れ、今後成すことを確認してから一月後、今彼は南太平洋上の哨戒の任に当たっていた。先の作戦からテロリストの活動も下火になり。ノックス自身もきたる争乱の前触れと感じ、あらためて気を引き締めつつ任務に臨む。しかし自らに課した本来の目的についてこの任は絶好の機会でもあった。そして自分たちが乗る艦にはある人物も乗っていたのだ。キッカが率いたコバヤシ隊に所属していたクムだった。
あの襲撃事件からしばらく経ち、今クムはノックス隊のもとに身を寄せていた。はじめのうちは不安を禁じ得なかったが、キッカの腹心的な存在ということもあり当初より好意的に受け入れられていた。そんな彼女も進んでノックス隊の中に入ろうともした。それに対してキッカはまだ生きているとの想いも大きくなりつつあった。
そんなある日のこと、クムはライエルの立会いのもとノックスとの対面の場を得た。
対面においてまずノックスが話を切り出す。
「君もうすうす感じていると思うけれど、キッカは生きている。近々彼女を迎えようと思うが居所が分からない。そこで思いきって君の力を借りようと思い、こうして持ちかけるんだが」
「あの、それは・・・・・」
ノックスの言から、クム自身にもあの“力”を持っていると踏んで、それを頼りにキッカを探そうというのだ。
「もちろん、無理強いはできない。君の心のままに彼女を感じなければならないからね」
「はい、私も出来る限り、頑張って、いえ、とにかくやってみます」
「すまないな、今現状は穏やかだがそれもどう転ぶか分からない。できるだけ早く、頼みたいな」
ということで、生返事ながらもクムは応え、ぎこちない敬礼とともに部屋を後にする。ノックスとしても即答できる事柄ではないことは承知していてその応えを受け入れた。
「やっぱり、闇雲に想ってもらちは明かないからな。それでもあの力があれば、すぐに探すこともできるけれど。でも、どこにいるんですか、大佐・・・・・」
ガルダ通路の窓から、クムはただ空を仰ぐのみだった。
 
一方のあの南の島、キッカもそれなりの島の生活を満喫しつつ、何かを待っているかに見えた。
自分の使命(みたいなもの)は多少なりとも自覚はしており、その刻(とき)に備え、還るべき場所に還り、今度こそそれを果たす。それが今のキッカの成すべきことではなかったか。しかしどうやって還るのか。それが当面の問題だった。
「助けの来るのを待ってるのもいいけれど、そんな時間もないかもしれない。それなら今自分がここにいることを、伝えられるかな。
でも誰に、どこに。クムあたりに伝えられればいいのだけれど。
それもどうやって、やはりあの時のように“声”を伝えられれば。
でもそんな力、もう残っていないというのに。人は、そう便利になるわけは・・・って、あーっ、これあの時のセイラさんの言葉じゃないの!」
そのうちに思案をするのも面倒になり、カプセルにこもってひと眠りにつく。
その夢の中、水の中に自分がいて目の前にはある女性が姿を現す。その女性は優しい声をかけるのだった。
「あせっては、ダメよ。もうすぐ、迎えが来るから・・・・・」
キッカははっと目を覚ます。
「・・・聞こえた、でもこの“声”は、聞き覚えがないはずなのに、でもどこか懐かしい。あの黒い髪、少し黒い肌。そうだ、あの人の名前は・・・・・」
そう思いつつも、島の夜明け、暁の空に向かい、キッカはもう少し待ってみようと思った。
 
そして後日、クムがブリッジに上がり艦長席に座しているノックスに話しかける。
「あの、中佐」
「やあ、何か分かったかね」
ノックスも軽く応える。先の問いがあいまいなものなのでそう応えるしかなかった。
「はい、大佐がとある島に流れ着いて、そのまま生活をしているような感じがするのですが」
「それは、そこから、近いのか」
「はじめは、わずかですが、時を追って強く感じられます。これも曖昧ですが、およそ10時の方向に」
「10時の方向、ですか」
傍らのライエルも半ば賛同するように応える。
「はい、この辺りは島らしきものの確認はできておりませんが」
オペレーターが確認のため地勢図に目を通す。
「あれから20年だ、海域の地形も変わっているかもしれない。これも任務のうちだから行ってみる価値もある」
ノックスが足組みを外し姿勢を整える。何かを決断するときの仕草である。
「もし見つからなかったら次の手を考えるが、見つかったら君とライエルで調査してくれ」
「はい、ありがとうございます」と、クムも一礼する。
こうしてノックス隊のガルダは、10時の方向に転進する。そこにキッカがいるかもしれないと期待を込めて。
 
キッカが目覚めた時、海の向こうに何かの機影を視界に認めた。それは連邦のガルダだった。そういえば“彼女”が言った迎えが来たのかと思い、そのガルダに向かい、大きく両手を振る。
「中佐、“島”が確認されました。そこに誰かがいます。今モニターに出します、これは、キッカ大佐です!」
オペレーターも映像を操作し、もたらされた現在の状況を半ば興奮気味に告げる。ノックスも頷きつつ指示を出し、クムもライエルとともにドックへと向かう。
こうしてガルダは旋回の末海面に着水し、前面のハッチが開き、移送艇が発つ。そこにはたしかにクムが乗っていた。
キッカにとってようやくその時が来たのだ。永い雌伏の時から今解放されるのだ、島の暮らしはそれなり楽しかったが、自分がいるべき場所に、ようやく戻るのだ。
艇が海岸へとたどり着き、クムとライエルの姿を確認できた。喜びにあふれたクムはともかく、ライエルはいささか恥ずかし気だった。そういえば自分は下着姿に多少軍服の切れ端をまとうのみだったのだ。
そして次の瞬間、大いなる喜びとともにクムがキッカに抱きつく。
「お帰りなさい、大佐!」
「・・・ただいま、クム」
一瞬駆け付けたクムが“あの人”に重なったかに見えた。ともかく、キッカの休暇は、終わったのだ。
 
南の島から帰還し、新たなる部隊の司令官の辞令を受けるキッカ。
新たなる仲間たちとともに新たなる戦いへと向かう。
次回、機動戦士ガンダム・クレイドルエンド『継ぐものたち』
君は、生き延びた先に何を見るのか?

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