モノ社会の宿業:出ししぶりの本音と建前<本当は怖いドラえもん>
さて今回は先の記事を少し読み物としての形を整え、タイトルも少しきれいに仕上げて述べることといたします。
繰り返しつつもあらためてドラえもんのお話の流れを述べるに、何かと困難に巻き込まれるのび太くんは、ドラえもんのもとに駆け込み、出してくれるひみつ道具とのび太くんの創意工夫もあり時にはしくじるが様々な困難を解決していくというものである。
しかし時々、その頼みをドラえもんが突っぱねることがある。それは問題解決に取り掛かる際のさらに楽をしようとしての突っぱねから、はじめからあれこれと理由をつけて突っぱねることもある。
これに際しては前者を中心に「ことの理非を教え諭している」のと、毎度揶揄するようで恐縮ながら、横山センセイの言から「あまり安易に頼みごとをするとかえって突っぱねられるのが当たり前」ということにもなるが。
今回はそういったいわゆる“出ししぶり”についていつも通りのヒネくれた視点で述べたい。
まず基本事項としては漫才でいう「ボケとツッコミ」といったシチュエーションだろう。たしかにこれらはまずのび太くんの“無茶”や“甘え”を戒めるというのもごもっともながら。主に後者を中心に結局出すことにして問題解決に動くのがもっぱらで、そのよう意味でも物語的にデフォルメ化したのが本論にての「ボケとツッコミ」の意見となったわけで。
ちなみに前者については『のび太の恐竜(原作短編)』の「鼻でスパゲッティ」のくだりや『オオカミ一家』の「目でピーナッツ」のくだりでのオチがあるけれど。
それに派生して、かどうかはあやしい所だけど、『原料ライト』の巻では、はじめ何かを頼もうとしたときににべもなく「だめ」と言い返すばかりで、『四次元くずかご』の巻ではそのくずかごをみつけたのび太くんを見るや、なにも理由を聞かずにとっととどこかへ行ってしまった。
たしかにこういうのはこれら2話が代表だけど、このように最初から責任放棄のようになってしまったのはいただけない。前者は理由を聞いてから協力して調べて回ったけど、後者は結局のび太くんがいらぬ苦労をして最後にはドラえもんにも事実上意地悪をされてしまった。
それは80年代になって問題に対するのび太くん自身の責任を問いがちになり、いつしかその責任を前に出すのが専らになってしまった。その一環がいわゆるくずかごの巻に至ったといったところで。
さてナンクセはここまでとして一方で良い形でまとまったお話についての代表を述べたい。
『世界の昆虫を集めよう』
この日もスネ夫が世界の虫の標本を自慢するので、何とかドラえもんに頼もうとするも、やはり突っぱねられてしまい、結局自分の力で何とかしようと飛び出してしまう、そこでドラえもんも少し冷たすぎたかなと反省し、ましてジャイアンたちにいじめられるのも何なので、結局は世界の虫を観察するための『昆虫マーカー』と『観察虫かご』を出して協力することにしたそうな。
ということで、一旦は突っぱねるも、ある程度のいきさつを経て結局は助けることにするという、目的によっては前言を翻して協力する。これもいつもながらイヤらしい表現で言えば「苦労したご褒美」という言わせてもらえば多少あざといところもあるけれど。
ともかくもこのように正論と人情を内包したお話こそがドラえもんのお話として支持されているなということになるけれど。
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