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第2話:生きるということ(その2)<機動戦士ガンダム クレイドルエンド>

さてみなさん、今回のクレイドルエンドは第二話のその2をお送りいたします。
とある場所にての謎の一団がささやかな一閃の後に一人の仲間を引き入れるまでのいきさつをこのお話の流れといたします。それでは、ごゆっくり。
 
なお前回のストーリーはひとまずここに。
生きるということ(その1)  
それでは本編をば、あらためてごゆっくり。
 
 
いつの頃からか『アルカディア』と呼ばれたその土地から数10キロ離れたその地の工場跡。
その一団、一人の青年とその取り巻き、それを先導する壮年の男は工場跡の地下の格納庫に足を踏み入れた。外観の廃墟然とした工場跡とは打って変わって現代的な施設に軽い驚きを禁じ得ないでいた青年たちに対し、壮年の男はそこに並べられたMSを青年たちに見せる。
「これが、俺たちが乗るMSということか」
「はっ、これでお父上の望みをかなえることができましょう」
「ああ、ここまでくれば進むしかないな。たしかに軽い気持ちで言っていたが、今こそ新たな時代のために乗り出さなくちゃいけない」
その青年アルセスは幼い頃物心つく前に両親が1年戦争で戦死し、父の知り合いに引き取られ、その間界隈の若者たちを引き連れるようになり、傍から見れば不良グループのリーダーに収まっていた。
そこに現れたのがかつて父の部下だったその男だった。話しようはアルセスと仲間たちとは隔意があるようだが、それなりにアルセスと同じく彼らも面倒を見ているようなのは理解はできた。
「これがそうなのか、しかし・・・・・」
「はっ、詳しい話は後ほどとして、我々もこれで名を上げんとするのです、若様」
「・・・その、それなんだが、みんなと同じく俺もアルセスで結構だ。“親父”のことは俺も承知しているが、まだあんたのボスという柄じゃないからな」
「これも経験を積めばいいでしょう。お父上も度量があって皆を率いましたから、その度量を引き継いでいるならば間違いありませんよ、アルセス様」
「・・・そうだな、まあ先に言ったが後戻りはできないからな」
まずは自分に言い聞かせる青年アルセス。傍らで取り巻きの二人も早速それぞれのMSに乗り込むのだったが。
「しっかし俺たちはザクとドムか。兄貴はともかくおっさんのようにゲルググだったらいいのにな」
「贅沢言うな、性能はどれも同じだ」
男にたしなめられるもののひとまず気に入っている感もあるその若者レトー。多少軽い気質があるサングラスの男である。
「ほんとだ、コックピットは新品っぽいや、僕はこっちの方がしっくりいってるな」
もう一人、まだ子供のあどけなさも残っている少年リッドが操縦席の最新性に感嘆する。もっとも最新の機器系統は操縦席のみに限ったことではないのだが。
ともかく全員が乗り込んだのを見計らい、アルセスがゲルググに乗り込んだ男ジョアンに問い合わせる。
「さて今回の作戦はどういったものかな」
「はい、平たくいえば同志集めということで。これから向かう地区に我らと同じ一団がたむろしているとか」
「とにかく行ってみればのお楽しみってところだな」
ということで、アルセスのケンプファーを筆頭に格納庫の先のトンネルを抜け、告げられた先の地区に向かう。
 
その指定された地区にはたしかにMSの一団があった。そこには第一次ネオジオン戦役のMSを中心に、否1機だけは最近のギラ・ズール、しかも袖付きの機体であった。
そのズールのコックピットにリーダー格の男が怒鳴るように呼びかける。
「おい、袖小僧、こちらに何者かが近付いてくるぞ」
「え、何かが近付いてくるって」
コックピットから顔を出したのは、かつてガランシェール隊のギルボア=サンドの息子、ティクバ=サンドだった。
そのティクバがなぜこのような所にいるのかというと、それは2年前のパラオが連邦軍に接収されることとなり、その混乱のどさくさに、袖付きのズールに乗りパラオを脱出。家出同然で地球に降下し、放浪の末彼らに拾われた。当時彼らも袖付きの残党ということで迎え入れようとしたが乗っていたのが子供だったので、ひとまずは素直に仕事や雑用をこなしていることから仕方なく引き取ることになる。その間ジンネマンも行方を探そうとしたがラプラス事変に続くフェネクス事件の混乱でそれどころではない状態が続き今に至り、そのうちにティクバもMSの操縦も上達していつしか彼らにも一目置かれるようにもなったかに見えた。
「ともかくだ袖小僧、お前にもしっかりと働いてもらうぞ」
「あ、はい・・・・・」
返事はしたもののティクバ自身は実戦の経験がないこともあり不安を隠せない。そのうちその一団、アルセスたちが到達した。
まずアルセスが一歩踏み出さんとする。
「アルセス様、危のうございます」
「なに、俺たちも戦うつもりで来たんじゃないだろう」
と、ジョアンの制止をよそに彼らの陣地に近付いていく。
「あー、そちらは我々と志を共にするものと見た、自分はアルセス=ハモ、ぉっと!」
アルセスの勧誘に応えるが早いかいきなり銃撃を始めた一団。しかしケンプファーも跳躍で銃撃を交わす。
「大丈夫ですかアルセス様」
「すまないな、やはり、戦うしかないか」
「なるべく被害は少なく鎮圧しましょう、前にも言った通り同志は一人でも多く集めたいものですから」
「それじゃあ、僕に任せて」
と、ザクのリッドが名乗りを上げる。
「おい、大丈夫か」
「大丈夫だと思う、MSに関してあいつは俺よりも強いからな」
ジョアンの心配をよそにアルセスはこう応える。ドムのレトーの援護で一団に襲い掛かる。さしあたり周りの敵はレトーに任せてリッドは一番強いだろうティクバのズールを狙う。
「あれが一番強そうだな、それじゃあ、殺っちゃうよ」
こうしてザクとズールが対峙する。そもそも一年戦争の骨董品ともいえるザクだったがその機動性と戦闘力はズールのそれを凌駕し、ホーク片手にみるみる圧倒していった。
「そんな、たかがザクなのに、昔のMSなのに」
圧倒されつつもティクバもこのザクはただ者でないことには気づきつつあった。つまりはザクをはじめ彼らのMSの性能そのものは現在の技術を用いたものであったことを。
一方のレトーも他のMSと縦横無尽に立ち回り、着実に手足を切断して鎮めていく。
「ちょっともったいない気もするけど、命には代えられねえからな」
そしてリッドの方も、ズールの手足を切り落として無力化する。その様を遠目で観ていたジョアンが近付きつつ「そこまで!」と呼び掛ける。それに応じて息を整え、ひとまずは戦闘を切り上げるリッドとレトー。引きつつもリッドもズールに呼び掛ける。
「敵討ちのつもりならよしなよ。辺り構わず噛みついてもむなしいだけだよ」
おそらくはトリントンの惨劇のことを言っているのだと思いつつジョアンも頷く。
「くそっ、あいつらにゃかないっこねえ、逃げよう」
「おい、袖小僧はどうする」
「ほっとけ、あいつはもうだめだ」
その一方でMSを打ち捨てて逃げる一団には
「薄情な奴らだな」と吐き捨てる。
続いてアルセスがドムのレトーに指示を与え、ドムがすっかり残骸と化したズールに近付く。そのズールのコックピット内で何やら打ち付ける音がして、何事かと慌ててドムから下りズールの外部スイッチをコンソールで操作する。
「畜生、ちくしょう、ちくしょう・・・・・!」
中ではティクバが悔し紛れに操作版に頭を何度も打ち付けていた、やがてコックピットの扉が開き、それにティクバが気が付くや、そこから飛び掛かるようにティクバをシートに押し付け、不敵かつ真剣な表情でアルセスは告げる。
「お前の怒りと悔しさはよく分かった。だがここからは男の話し合いだ、唾を吐きかけるなり、銃で撃つなりはそれからでも遅くはない」
「・・・あ、は、はい・・・・・」
先の悔しさからの悪態から、アルセスの呼びかけにあっけにとられつつも、その真剣な表情に応えつつティクバもひとまず聞き入ろうとする。
「今のリッドとの戦いで、お前は是非とも仲間に引き入れたいと思ったんだ。どうせなら過去にこだわって今を壊すよりも、未来を創ってみる気はないか」
アルセスの生真面目な呼びかけにティクバも返答をしかねるも、アルセスは続けて告げる。
「俺たちもお前と同じジオンに連なるものだ、だが俺たちはザビ家やダイクン家とは違う、真にスペースノイドが、いや人が当たり前のごとく生きるべき世界を創るんだ」
「未来を、世界を創るって、それ、俺にも、できるかな・・・・・」
「ああ、まずは傷を癒すことだ。本当の答えはそれからでも遅くはない」
アルセスの言にティクバも二つ返事で頷くのだった。

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