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銀英伝オリジナル・真ヴァーリモント氏放浪記(その5補足)

フェザーンに到着してからのクラインゲルト子爵嫡孫カールはここ数日不安の極みにあった。

アムリッツァ、リップシュタット両戦役を経て母子ともつつまじく生活をしていた後、遷都後新設される運びとなる幼年学校に入学する運びとなる。

その際に母親の縁からケスラーが後見人となり、宇宙港にて迎え入れられたが、向かった先は憲兵隊本部で、その圧迫感を受けつつも駆けつけた副官から、皇帝がカールを伴って出頭するようにと告げられたからだ。

後日、カールはケスラーとともに仮皇宮へと向かう。

「そう怯えることもなかろうカール、陛下もお熱いところもあるが公明なお方だ。もし陛下のご癇気あらば私がすべて受けよう」

とケスラーになだめられるままに皇帝の執務室へと差し掛かる。

「ウルリッヒ・ケスラー、カール・フォン・クラインゲルト、入ります」

ケスラーが告げる。中では皇帝が長椅子に座していた。

「よく来てくれた、カール・・・ところでケスラー、予に何か言いたそうな面持ちだが・・・・・」

ラインハルトの問いにケスラーとカールはひざまづく。カールの方はややぎこちない感もした。

「はっ、先日の陛下の召集に応じず、私用を優先させたること。ひとえにこのケスラーの責に帰することなれば・・・・・」

ラインハルトは了承の意を込めて、手を上げケスラーの言を止める。その際カールに軽い怯えの表情が顕れた。

「白書の件は副官に伝えた通りだ。卿が陳謝するまでもなかろう。そういえば聞き忘れたことだが、あの白書について検閲や修正は行われたか」

「いえ、私からは何も、ただ監視の者が何やらか言ったことは聞き及んでおりますが」

「そうか・・・・・」

事実上の無検閲、無修正での発刊である。ラインハルトもそのことを了承した。

その上で、ラインハルトはカールに澄んだ笑顔で向き直る。

「さてカールよ・・・・・」

「は、はい・・・・・!」

「ようやく本題に入れるな。さしあたり向かいにかけるがいい」

ラインハルトに勧められカールがケスラーとともに向かいの席に座る。早速ラインハルトが話を切り出す。

「ところで、子爵どのはご壮健かな」

「・・・はい、リップシュタット戦役から程なくして、病に倒れ・・・・・」

「亡くなられたの!?

ラインハルトの驚きにカールも多少怯えつつ応える。

「は、はい、遺言によって、葬儀は家族のみで、行おうとしましたが、領民の方が、こぞって集まり、途中私たちが、場を離れましたが、弔問に訪れた人々が、深夜まで、続いた、ものでした・・・・・」

カールの言葉が詰まったのを見計らってかラインハルトも重くうなずき了承の意を伝える。

「うむ、これほど領民に慕われたのだ。そういえば予に恭順の意を伝え戦役の直後自らの特権を明け渡したとか。予もお悼み申さねばな。とはいえ予も忙しき身ゆえ、御母堂あてに親書の形でお送りするが、それでよいか」

「はい、ありがとうございます」

感謝の言葉とともに、カールのぎこちなさはいくらかほぐれたとラインハルトは感じられた。

その後もカールとの会話をラインハルトは楽しんだ。ラインハルトとしてもカールはあたかも春風に怯える子犬のごとく自分を畏れていることは承知のことであり、それをなだめつつよくよく導いていく。やがては宮内尚書が公務の時間を告げ、会話の終了を惜しむかのごとく席を立たんとする。ふと何やらの考えがラインハルトの脳裏をよぎり、あらためてカールに語り掛ける。

「カールよ、ゴールデンバウム王朝はいざ知らず、このローエングラム王朝にては貴族の爵位などもはや飾りに過ぎぬことは知っていよう」

「存じて、おります」

「ゆえに貴族の特権など望むべくはないが、それも承知であろうな」

「はい、承知しております。それゆえに、私もこの帝国の、一人民として・・・・・」

カールの応えに明快さを覚え、ラインハルトも心地よき口調でそれに応える

「よろしい、カール・フォン・クラインゲルトよ、このラインハルト・フォン・ローエングラムの名において、そなたのクラインゲルト子爵家の家督相続を許そう。ただし、正式な子爵位授与はそなたが20歳を迎えた時とする」

「はっ、ありがとうございます」

カールもケスラーとともに一礼をもってラインハルトを見送る。

こうしてカールはクラインゲルト家の家督と子爵位を受け継ぐことになった。正式な子爵位の授与はラインハルトの生きている間にはなされなかったが、ともかくもカールが二十歳になってそれは果たされたのだった。その後クラインゲルト子爵となったカールは、領内を中心に大小さまざまな事業に従事し、帝国の一人民としてその発展に貢献したとか。

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