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銀英伝オリジナル・真ヴァーリモント放浪記(その5)

各提督の思惑とともに読まれた『ヴァーリモント白書』

いくつもの偶然もあって、ついにはラインハルトのもとにも届けられた。

以前より件の旧同盟の一士官のことは耳にしており、ひとまずは憲兵隊の監視を付ければ良しとした。それが今後の帝国のためとまとめられたこの白書が手に渡ったからにはひとまず読んでみようとおもむろにページを開くのだった。

冒頭の「親愛なる皇帝陛下に捧ぐ」の一文に「ふん」の一言を発しつつ読み始める。

「小生こと、元自由惑星同盟軍少尉、今は帝国辺境部の一人民たるフランツ=ヴァーリモント・・・・・」

まず自分の素性を明かし、アムリッツァの焦土作戦にてのいきさつを述べることについて、先のメックリンガーが評したようにいささか飾ることなく、それでいて怨み言を述べるわけでもないその文に、いつのまにかラインハルト自身も読み入ってしまったのだ。

そのうちにとある一文がラインハルトの目と心をとらえた。

「・・・キルヒアイス、シュタインメッツ両提督亡きあと、小生ごとき一人民が畏れながら陛下をお諌めすること憚り多きことなれど・・・・・」

「予を諌めるだと・・・・・!」

一瞬、激しかけたラインハルトだったが、直後自らを恥じつつ冷静さを取り戻した。しばらくの熟考の末、ラインハルトが口にしたのはまた別のことだった。

「何故シュタインメッツが俺を諌めたことを、彼は知っていたのだ?」

それはラインハルトが第四次ティアマト会戦において血気にはやり突出しようとしたところ、当時ブリュンヒルト艦長だったシュタインメッツが諌めたことをさしていた。

ラインハルトはシュタインメッツの実直さに感銘を受け、辺境守備の任にあった彼を改めて提督の列に加え、彼もまたその恩に応えその命を捧げたのだ。

さておき先の自問は容易に答えを得た。おそらくシュタインメッツはその辺境守備の任にあった中、くしくもかのヴァーリモントと知己を得たのだろう。

たとえキルヒアイスのみが著されたとしても激昂の時間が少し長くなるだけで、最後は心の中でキルヒアイスに諫められるだろうと踏むのだった。

そんないきさつもあり、最大の懸案であった、かつてのヴェスターラントの件はやや抑えた表現ながらも最後の責任はやはりラインハルト自身に帰することをも示唆していった。こればかりは素直に受け入れられる気がした。

いずれにせよヴァーリモントが人民の声を代表し自らに伝えようとする限り、自らもできうる限り応えねばならない。

そのうちにラインハルトは卓上のTV電話に手をかけ、シュトライトに支持を与える。

「・・・ケスラーとブラッケ民生尚書に出頭するよう伝えてくれ」

しかし直後、ケスラーの副官がラインハルトに応対を求めた。

「畏れながら陛下、ケスラー閣下はいま憲兵本部を外し、宇宙港に赴いております」

「何、ケスラーは出られぬのか」

軽く驚きながらも、ラインハルトは事情を問う。

「はっ、古くからの友人を迎えるとか。直ちにお呼びいたしますゆえ・・・・・」

「いや、要件についてはケスラー自身も知っていよう、代わりに卿が出頭するがいい」

「は、ぎ、御意・・・・・!」

副官の返答と同じくして、ラインハルトにふと一つの疑問が浮かんだ。

「待て、ケスラーに友人がいると聞いたが、それは一体どういった者なのか」

「はっ、たしか旧クラインゲルト子爵領より、この度フェザーンに開校する幼年学校に入学をすることと相成り、迎えに上がるとのことですが」

副官の言にラインハルトも一考の後に一言告げる。

「そうか、今の件の後で、その友人とやらに会ってみたい。後でケスラーに取り次いでくれ」

「はっ!」

というわけで、その副官と、ブラッケが執務室に呼ばれた。

執務室にてラインハルトは机上に一冊の本を差し出す。それはかねてから民政省にとっても懸案だった書だった。

「この本は、まさか」

「そう、かのヴァーリモント白書だ、不遜ではあるが不快ではない。まして不敬ということもなかろう」

最後の言葉に重きを置いていたことは二人の耳にも響き渡る。

「この書を著した、フランツ=ヴァーリモントとやらの処遇について、予の見解を伝える。今後も憲兵隊の監視を続けるとして、今後彼の身元は民政省の預かりとし、以後はブラッケの指示に従うよう」

「御意」

そしてその一言も付け加える。

「重ねて申しておくが、彼に確かなる叛意を認めぬ限り、彼に類を及ぼしてはならぬ。彼が人民のために働くと言うのであれば、できうる限り応えてやろうではないか」

「はっ」

ブラッケ尚書と副官はほぼ同時に応答し、異常を皇帝の要件として退出する。ブラッケは後日今後の方針を憲兵総監と話し合うこととして、ケスラーの代理として出頭した副官はラインハルトの要件を帰還したケスラーに伝える。地上車にて要件を伝えられたケスラーの傍らには少し怯えた表情のクラインゲルト子爵の孫カールが座っていた。

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