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銀英伝オリジナル・真ヴァーリモント氏放浪記(その3)

ラインハルト陣営と貴族連合軍が激突したリップシュタット戦役は当初の予測通り、ラインハルトの完勝に終わった。

その後ヴァーリモントは子爵領にて以前と変わらず、否、日々を過ごしつつかねてからの考えを実行に移すに至る。

朝は領民たちとともに労働にいそしみ、昼は自室にこもり執筆にとりかかり、夜は近隣の酒場で帝国をはじめ情勢について領民と話し合うといった日々を送る。

そんな中彼にとっても捨て置けない情報を入手する。それは戦役の最後期にこの子爵領とさほど遠くない星系に位置するヴェスターラントにての核攻撃事件についての疑惑がそれであった。

「まさかローエングラム公がかの地の核攻撃を黙殺したというのか、いや彼ならばやりかねぬこと、しかしあの当時大勢は公に傾いており、ブラウンシュヴァイク公の妄動は阻止して然るべきではないか、いや・・・・・」

なぜかヴァーリモントは思案を一時止める。たしかに今や帝国を掌握したラインハルトにとってのスキャンダルにも値すること。それにに対しては詳しい事情もあろうが、それに抵触することはヴァーリモント自身の身の危険も伴うこともあった。ともかくも今は深く突き詰める必要はなく、現在の目的である全銀河の行く末についての考察に専念するのだった。

そんな彼にも、ハーゼのほかにもう一人のサポート役を得るに至る。ハーゼと同じく子爵領に流れ着いた青年だというのだ。裏表のない誠実そうな性格で、必要な情報や噂やらを整理してヴァーリモントにしばしばたらしていた。

そんなわけで、それらの情報がヴァーリモント自身も自らの考えを一冊の白書にまとめ上げる一助となったのだが。

 

その夜、その青年が夜道に佇んでいたところ、ハーゼが近付いてきた。手には護身用のブラスターが握られていた。

「さて、何のつもりですか、ハーゼ君、いや、どうやら卿も私の素性に気付いているきらいがありますが」

「ええ、あなたがローエングラム公からの監視役であることはうすうす、いえ先生もあなたのことを」

実は彼こそ、先任の失脚に伴い憲兵総監となったケスラーの当初からの部下の一人で、シュタインメッツの要請でヴァーリモントの監視役を任じられたのだ。

「これもひとえに少尉のため、といっても卿には信頼には値しませんか」

「いえ、かつてのミューゼル先輩、今やローエングラム公たるあの方には大恩があります。かつて私はオーディンの幼年学校にて将来にひとかどの嘱望を得ていましたが、とある事件にて目の障害を指摘され、幼年学校を去らざるを得ず、さらには辺境への流刑同然の身をローエングラム公、正確にはキルヒアイス提督が生活の保護のためこの地を落ち着き先と定めてくれました」

その監視役の青年士官も静かに頷いたのを見計らい、ハーゼは続ける。

「はじめ私も同盟を敵、叛乱軍とした見ていなかったのでしたが、先生のお考えと今まで行動を鑑みて、真に人民のために働いておられると気付き、人が生きるのに帝国も同盟もないという考えにも至りました。公がいずれ同盟を併呑し銀河を統一した後で、帝国と同盟の人民がともに生きるための社会を造るために、先生のような方のお力が必要なのです」

「よく分かりました、あとハーゼ君、卿の誤解を解く必要があります。私が派遣されたのはローエングラム公、ではなくシュタインメッツ提督の要請を受けての憲兵総監のケスラー閣下のご指示によるものです。たしかに今の少尉のお考えには多少の軋轢もあることでしょうから、その意味でも少尉を保護するべく監視の形で・・・・・」

「よく分かりました。では私も銃を引くことにしましょう」

と、ブラスターを懐にしまい込む。両者の対峙は終わり、それぞれの家路につくことになった。

そんな二人のやり取りを知ってか、ヴァーリモントも著書の執筆に思案を巡らせる。

「彼のおかげでヴェスターラントの裏面の秘密を知り得ることができた。やはりオーベルシュタイン参謀長の進言が黙殺の一員となったか。たしかに人民の統制がマキャベリズムの目的でもある。しかし平和な時代へと向かわんとするのに過度の統制がはたして必要となるのか。そもそも公の、帝国政府の側にある彼が、俺にその情報をもたらしたのはどういうことか。

いやいや、早々に結論を急ぐ必要もなかろう。もっと情報と熟考が必要だ、そしてそれに必要な時間も・・・・・」

後に刊行される彼の著書『ヴァーリモント白書』の執筆には、またさらなる時間が必要だった。

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