ドラえもんとゆかいな仲間たち:ドラえもん物語~藤子・F・不二雄先生の背中~<本当は怖いドラえもん>
さて今回は、ドラえもんをひねくれた視点ながら語る上で見逃せない作品の一つ『ドラえもん物語~藤子・F・不二雄先生の背中~』について語りたく思います。
さてこのドラえもん物語、藤子F先生の元アシスタント、むぎわらしんたろうセンセイが、ドラえもんとの出会いからコロコロコミックにおける藤子不二雄賞に応募してより、F先生のアシスタントとしてともに仕事をしてから、先生が亡くなられて後もそのお仕事を引き継ぐ礎となったいきさつを語ったものでした。
たしかにむぎセンセイをはじめ多くの人々がF先生の志を引き継いでドラえもんを続けられることはファンとしても喜ばしくすばらしいことであるけれど、ここはあえて、いつも通りのヒネくれた視点で述べたい。
そもそもドラえもん物語において、藤子・F・不二雄先生とのお仕事を通じて、先生の趣味や制作理念等を、むぎセンセイが余すところなく描いたことだろう。けれども、
やはり肝心の制作に際してのF先生の心情や苦悩等についてはほとんど描かれず、後半において、ドラえもんという物語をむぎセンセイをはじめ多くのスタッフに受け継ぐ様のみを重点的に描いたのだなという想いがあった。
たしかに人間は「清濁併せ持つ(いいところと悪いところを合わせて持っている)」生き物だけど、F先生はまずは子供たちにいいところを伸ばすために漫画を描いていたし、むぎセンセイもそれを教えたくてあえていいところ、のみを描いたのだろう。その上で子供たちにはそれをベースにしてこれからいろいろなことを学ばせたかったともいえる。その反面原作においてF先生の苦しい胸の内からお話において悪いところが後期に目立ってしまい、いいところがうまく伝わらなかった。たとえば本編83ページあたりか、漫画家はベテランになると(というより連載が長く続くと)制作にクセができるといったくだりと合わさってどうしてもワルいお話を描きがちになってしまうきらいがあった。こればかりは他人任せにはできなかっただけに、どうしても独りよがりになりがちになってしまったのだろう。
それならばというべきか、自分がドラえもんを描いているうちに失ったもの、ことに情熱をむぎセンセイをはじめスタッフ一同に受け継がせたかったのだ。本当の意味で子供たちのための、すこし不思議で面白いドラえもんの物語を。
それにしてもベトナムでの奨学基金が設立されたくだり、なぜかむぎセンセイがのび太くんに仕立て上げられたことは結構ほほえましいといえるだろうけれど、後期の事情を考えればある意味ブラックジョークにもなりかねないと思うのは編者だけだろうか。
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