第3話:世界を知れ<機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズDAWN>
さてみなさん、今回は年末企画として、鉄血のオルフェンズDAWN第3話をお送りする運びとなりました。
成り行きでGHのMSを交戦する羽目になった暁たち。その後でかつてのGHの英雄ガエリオとの対面でバルバトスを託された真意と一端とともに、宇宙(そら)ひいては“世界”に乗り出す第一歩を踏み出す様をここに描かんとするのですが。
なおくり返しながらもこの作品は、原作オルフェンズをベースに編者の期待と未練、そして出来心で制作された作品だということをご了承ください。
ひとまずはこういったところですので、それでは、ごゆっくり。
マクギリス・ファリド事件の後、傷心のアルミリアは、ジュリエッタをはじめ周りの人々の心遣いで次第に立ち直り、やがてはギャラルホルンに入隊。彼女の指導のもと戦士としても成長していった。かつての純粋さはそのままに。
暁たちとアルミリアの対峙からややあって、並べられたグレイズとレギンレイズの残骸に、たどり着いたガエリオがまず家臣団たちを叱責する。
「まさに失態だな、かつてお前たちはイオクの暴走をたしなめる義務があった。それを怠ったために結局奴を死なせ、クジャン家も断絶の憂き目にあった。そして今お前たちはアルミリアをたしなめねばならなかった。それも怠っただけでも万死に値する。ましてあいつの命を落とそうものなら」
そこまで言われれば家臣たちも何も言い返すことはできなかった。続いてレギンのコックピット内で塞ぎ込んでいるアルミリアにも、
「お前が今でも奴のことを悼んでいるのは分かる。それは俺も同様だ。しかしラスタルが言ったように。奴のことはギャラルホルン全体で戒めとすべきことだ」と穏やかな口調ながら重い言葉でたしなめる。
そして後のことは俺に任せろと傍らの新江に告げこの場を後にする。
変わってロウ社のオフィス。もともとはゴルドン商会支配下の子会社だったのだが、ザックが父の跡を継ぎ~かつて勘当覚悟で鉄華団に入団するも、会社がノブリスの支配から脱したのを機に父から会社を継いでほしいと説得され~、彼の指揮のもと急速に発展し今に至ったのだ。
そのオフィスに佇む暁たち。そこにまずヤマギが、今回の件で使者を用意して交渉に当たりたいとのGH側の応えを伝えた。
続いてユージンは傍らに佇むライドに向かい、今までの彼の活動を問い、ライドも結局鉄華団の肩書きにこだわったと返す。そこにユージンが殴り掛かったと思えば明らかに手加減のそれに続き、反対の拳でこめかみを挟み込む。
「苦労してるのはお前だけじゃねえ、まったく無茶しやがって」と無事に帰ってきたことを泣き笑いで喜ぶのだった。
続いて菊千代の妹雪乃を伴ってメリビットが現れ。未だ警戒する菊千代たちをよそにライドに抱きつき再会を喜ぶ。それにはライドも感じ入り心配かけたことを詫びるのだった。
後日桜農園~桜の死後ロウ社の傘下に入った~にて収穫の手伝いをしていた暁たち。そこに車から降りた車いすの紳士がしばらく舗装された農道を進んでいると、畑から出てきた赤子を拾い上げる。そこに母親らしい恰幅のいい女性が赤子を返してほしいと懇願する。それに続き今度は長身の女性も駆けつける。
「久し振りだな二人とも、ほら、君の子供だ」と赤子をクッキーたちに返そうとする。そこに暁たちも現れる。それに対し紳士も堂々とした態度で向き直る。
「貴様が暁・オーガスか。見ての通り俺は丸腰だ。お前に絞め殺されても文句は言えぬが。お前に理性というものがあれば、話し合いに応じても悪くはないと思うが」
対する暁も「ボードウィン公、ですね。話し合い、というより、先の落とし前なりと受けてもいいのですが」と、そっけなく応える。
その紳士、ガエリオは車いすを直立歩行モードに変形してから暁に近づいて、軽く腹に拳を当てる。
「まずは、一発目ですか」
「いや、これで精いっぱいだ、むしろお前には感謝している。妹の件はできるだけ穏便に済ませてくれたからな」
ひとまずのやり取りの後、ロウ社にて暁たちとガエリオとの交渉を行う。まずガエリオが暁たちに、火星を離れ木星圏での治安維持の協力を要請する。
事実上の追放かと毒づくラッシュをよそに、これもラスタルの意志かと踏んだ菊千代。いずれにせよ暁はひとまず承諾する。その上でかつての事件を受けてアトラたちの名誉回復も望めるかと告げるとガエリオも一応は了承する。
そもそも“事件”はラスタルとマクギリスの対等な抗争だったものを、ラスタルが主導権を握るために前々から半ば敵対していた鉄華団を利用したのち、生き残った彼らを半ば監視下に置いた上で、クーデリアを通じて生活も保障していた。今回の出来事もその次の時代を任せられるかを推し図らんとガンダムを暁たちに託さんとしたのだ。自分に対するもよし、組むもよしといったところで。
また暁本人に関しては“事件”からほどなく炊事係のアトラが男児を出産したことを驚きとともに知り得、間をおかずマクマードが名付け親となり、クーデリアが後見人となったことで、調べた結果三日月との間の子だと判明し、ひとまず監視と保護の対象となった。
ちなみにラッシュはハッシュのまたいとこの息子で、母親の死で孤児になっていたところザックに引き取られた際に正式に名前を付けられたのだ。
それらを踏まえて阿頼耶識の代替システムを研究していたヤマジンに、ヴィダールのデータをもとに改良した疑似阿頼耶識システムをバルバトスらに組み込むようにとも指示し、最近になってGHに身を寄せたトドに送り届けさせたのだ。
そんなラスタルの意志はともかく、ガエリオ自身も個人的に暁の人となり~かつての三日月に対する畏怖がベースとなっている~に共感を覚えていた。
ともかくもガエリオも彼らに対する同情は持っており、できうる限りの援助を約束した。
結局逃げられないとこぼすも、先のグシオンの“声”を思い出し、一応は覚悟を決めるラッシュ。できるだけ二人の手助けをしようと肚を決める菊千代、その際に雪之丞ら家族を案じつつも。
その翌朝、かつての鉄華の碑に、あの時と同じく花を手向けるライド。そこには暁、そして新江の姿がいた。GH自身は立ち入りを禁じてはいないもののユージンたちが自粛をしていたその地。新江の立ち合いは監視の名目でライドたちの行動を容認するといった配慮からだった。そもそも一介の士官に過ぎなかった新江が支部長となったのはマクギリス、そして鉄華団のおかげで、その恩義を反し“事件”で裏切った形を取った引け目もあり彼らを見守るべく今の地位についていたのだ。
「いつかちゃんとした碑を建てられるかな」との暁の声に「それは君たちの勝手だな、たしかに今は少しまずいが」と新江が返す。そしてライドも、
「その時は隅っこに俺の名前を載せてくれるか。しかし今は自分たちの使命ってやつをこなしていこうぜ」
その言葉に暁も改めてうなづく。そのまなざしは乱雑に彫られた“MIKAZUKI”の名に向けられていた。
そしてハコブネからの出港に際し、暁たちが乗り込む船、それは先の“事件”で接収されたイサリビだった。実はアーレス内のドックで保管され、今に至り競売名目でロウ社名義の私船として登録されたのだ。これもラスタルの配慮であることは言うまでもない。訝るユージンに対し、返してもらうなら有難く使わせてもらおうとライドが返す。
乗組員は元鉄華団員のロウ社のスタッフをメインに、まず暁たちとライド、一応の案内役としてトド、一番信用が置けないと案ずるユージンだが、トドも結局はモンタークにおいてマクギリス一派残党を制することができず、身の安全のために半ば賭け同然でGHのもとに身を寄せたのだ。
その他にも菊千代の妹雪乃、火星一の才女とうたわれた彼女もオペレーターとして、そしてヤマギもメカニックとして参加する。
出港に際し、まず暁を見送るアトラ、ついでクーデリアも訪れ、ともに暁に抱きつき、別れを惜しむ。
一方で雪之丞は菊千代に「工場のことは心配するなと、無事に帰って来い」と告げつつ肩で抱きしめ、雪乃もメリビットと別れを惜しむ。ついでラッシュもザックに無理をするなと励まされ、テルマには自分たちの鉄と血の想いを諭される。
さらにはライドのもとに駆け付けたのはヒルメたち元少年兵たちだった。彼らは家庭があり、ライドも今更自分によしみを通じるべきでないと返すも、一応の事情は妻子も知っていて、ことに妻たちは“事件”の際に学校で一緒だったクッキーたちの力になれなかったとの引け目から、せめてヒルメたちには好きなようにやらせようとの配慮で今回の見送りと相成ったのだ。
そして「必ず帰ってくるよ」と暁の声とともに各員が乗り込み、イサリビは再び飛び立っていく。
アーレスでは新江とともにガエリオはイサリビの出港を見届け「新たなる時代の幕開けだな、ラスタル、そしてマクギリス」と言葉をかける。その一室ではアルミリアも言葉なく佇んでいた。
こうして鉄血の志を持った新たなる若者たちが旅立つのだった。
次回、機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズDAWN
“アステロイドの猫”
世の中が大変なら、今こそ私が名を上げる時なのだぁ!
一応のキャラクター設定
雪乃・カッサパ(とりあえずフルネームは未定):雪之丞とメリビットの末娘で14歳(原作最終回でメリビットのお腹の中にいた)。幼い頃より両親の仕事を見て、自分も両親と同じ仕事をしようと志す。その後学校に就学(この時点、火星の就学は義務化はされていない)し、弱冠10歳で現代で言う高等学校レベルまで修了した才女でもある。
クッキー&クラッカー:ビスケット・グリフォンの妹である彼女たちは、兄たちの死後、クーデリア開いた学校に入ることができたが、“事件”の影響で居場所を失い、学校を去ることになる。ほどなくしてアーブラウにて留学の便宜が図られ~事情を知ったタカキがアレジを通じて~二人ははじめ謝絶するも、桜の説諭で地球行きを了承する。
こうして地球で勉学に励むことになる2人~とりあえず偽名を使って~途中桜が世を去るもそのまま地球に居続け、やがて修了時に友人たちに自分たちの素性を告げるも、フウカを通じてそれも了承済みで、暖かく見送られる。
火星に戻り農場の仕事に就くため、ロウ社に雇ってもらおうとするも、もともと所有は桜から彼女たちに移っており、ザックは農場の管理を担うために傘下に入れていたとのことだった。こうして二人は燃料等農産品の生産に従事して現在に至る。
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