戦争を知っているドラえもん:ぼくらの宇宙戦争<本当は怖いドラえもん>
今でこそドラえもんをはじめとする藤子F先生のSF作品は「すこしふしぎ」と評されるけれど、純粋にSF:空想科学の視点から、今回のサブタイトルを踏まえて『宇宙戦争』について考察したい。
一概に宇宙戦争といえば、宇宙から来訪した宇宙人が地球を襲撃し、対して地球人類は一致団結してそれに対するといったシチュエーションがたびたび映画で描かれた。それに関してはF先生もたびたびご覧になったはずである。
とはいえまず結論から述べるに、こういった全面戦争的なシチュエーションは実際描くに際して先生はやはり好きじゃなかったようだ。
たとえば一般短編の『ひとりぼっちの宇宙戦争』にては一人の少年を地球の代表に選び、宇宙人側はそのクローンを差し向けて戦わせる。これが宇宙人の戦争、つまりはゲームとしてとらえられたきらいがあった。勝てば地球を自由に扱え、負ければ潔く引き下がるといった具合に。あくまで局地的な争乱にとどまっていた。
続いて我らがドラえもん、原作短編の『天井うらの宇宙戦争』しかり『未知とのそうぐう機』しかり、大長編の『小宇宙戦争』しかりとやはり日常の片隅にての、言ってしまえば箱庭の中でのハプニングにとどまっているのがほとんどである。もっとも小宇宙戦争の後半では敵味方の本星で本格的な戦争が繰り広げられているが。
あと『天井うら』に関してはやはりパロディを盛り込んでの作りとなっていて、もう一つ『未知とのそうぐう機』はあわや宇宙戦争かとのくだりが目立っているが、やはりドラえもんやのび太くん、そして呼び出された宇宙人ハルバルとのやり取りが終始コントになっているなといった感が強い。
これも言い換えれば、やはり戦中に生まれて戦後の幼少期を過ごした先生としては、本格的な戦争をドラえもんたちが暮らしている日常に持ち込むことはやはり好まず、日常の少しふしぎな出来事として、ささやかな宇宙戦争ならと描いていたと、やはり述べるまでもないか。
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