ドラえもん・オリジナル大長編:新のび太の海底鬼岩城(予想)その6
次の日、ドラえもんたちは大型の巡視艇に乗って大西洋へと向かうことになった。その前に大法官から公式には自分たちの放免の条件としてエルの監視のもと、旧アトランチス領の軍事施設、通称鬼岩城を止めることをあらためて要請されたのだ。もちろんドラえもんたちは二つ返事で承諾する。
出発に際し首相や大法官をはじめ高官たち、エルの母とルウ、リム、ロドと303号の先輩が見送った。
母「それじゃあエル、くれぐれも体には気を付けて」
エル「大丈夫だよ母さん、必ず帰ってくるから」
リム「がんばってね、エル、それにみなさんも」
ルウ「必ず帰ってきてね」
ルウの呼びかけに静かにうなずくエルだった。
ロド「お、おい、地上人、エルに身に何かあったらただじゃすまないぞ」
先輩「やめないか、エルたちがだめだったら、我々もおしまいなんだぞ。ここはエルたちを信じるしかないのだ」
ロドをたしなめてからドラえもんたちに向かって、
先輩「君たちもくれぐれも気を付けてくれ。おれも君たちを信じているから」
のび太「は、はい・・・・・」
長官「そろそろ、出発しようか」
エル「はい」
というわけで巡視艇は出発する。いつまでも見送る面々の中、最後まで残ったのはルウとリムだった。そして何かにうなずいてからこの場を後にする。
巡視艇は連邦領から太平洋を渡り、地上パナマ領海底の運河洞窟をくぐり、大西洋へと渡るのだ。
長官「この運河をくぐればいよいよ大西洋、そしてかつての帝国領となる」
エル「君たちの自由とひきかえにかえって危険にさらさせることになってすまないと思っているよ」
のび太「それは違うよ、世界が滅びたら僕らもおしまいだもの」
そこにしずかちゃんが入ってきて夕食の支度ができたと告げる。
ドラえもん「今日は最高のごちそうを作ったよ」
しずか「地上の食べ物を味わってください」
と、グルメテーブルかけで作った料理をエルたちも舌鼓を打つ。
エル「うまい、こんなおいしいもの初めてだ、母さんにも教えてあげたいよ」
長官「まったくだ、地上にもいい文化もあるものだな」
のび太「でも、明日もこうしてごはんが食べられるかな」
ジャイアン「よせやい、変なこと言うとメシがまずくなる」
ひとまず夕食を楽しみ、ややあって今回の作戦について改めて聞き出す。
スネ夫「ところでさあ、実はまだはっきりとのみ込めていないんだけど、そのアトランチスの鬼岩城っていったいなんなの」
エル「うん、事の始まりは僕らの先祖が海に逃げ延びてから、今から数千年も前にもさかのぼるんだ。あの後、ムーとアトランチスは激しく争うようになったんだ。
長引く戦乱でアトランチスは戦局の打開のためにとある施設を建造した。それを運用する軍事施設が鬼岩城なんだ。そこから作り出されるバトルフィッシュ等の兵器は敵と認めればとことんまでに破壊する、心を持たない機械の兵隊だ。これさえあれば自分たちが傷つかずにムーを滅ぼすことができるってふんでたんだんだけど、皮肉なことに彼らの矛先はアトランチスの住民に向けられ、まず彼らが滅ぼされた。唯一の救いは時の皇帝が彼らの機能を凍結したから数千年間平穏を保っていたんだ。その間僕たちムーの民は彼らが再び動かないように見張っていたんだ」
長官「ところがここ最近の大西洋における海底地震がきっかけか、その鬼岩城が活動を始めたのだ。彼らが動き始めれば、バトルフィッシュをはじめ無数の兵器が水中空中を問わずこの世界を破壊しつくし、魚や虫一匹、いや草一本も残らない死の世界になるまでその破壊は続くだろう」
ドラえもん「虫も魚も、そして草も残らない、かあ」
のび太「そのポセイドンっていうコンピューターをやっつけなきゃいけないのか」
長官「前にも言ったが、本当にすまないと思っている」
ドラえもん「でも何が何でもやらなきゃいけないからなあ・・・・・」
重い使命の感じるままに巡視艇は大西洋に入っていった。そしてドラえもんたちを出して船は領域を後にする。
長官「それでは成功を祈る、くれぐれも無理はしないように」
エル「はい・・・・・」
船が去っていってほどなくして、遠くから黒い影が近付いてくる。
エル「バトルフィッシュだ、奴らの領域に近づいているからね」
のび太「どうしよう、このままじゃ見つかっちゃうよ」
エル「そこであの帽子が役に立つんだ」
と、ドラえもんのキャンプ帽子に乗り込んでから地中に潜る。
ドラえもん「ここからアトランチスまでこの帽子で見つからずに進められるけど」
ジャイアン「それじゃあ間に合わないぜ、バギーならひとっ走りだろ」
エル「それはまずい。相手は鬼岩城の機械化軍団だ。いつどこから来るかもわからない。目的にたどり着くまで無駄な戦いは避けたい。とにかくゆっくりと安全に進もう」
そうこうとドラえもんたちは、件の帝国領へと進んでいく。
帝国領内へと入り込んでしばらくして、外の様子をモニターに写すと辺りは真っ暗だった。
ドラえもん「へんだな、この辺りはやけに真っ暗だ」
エル「うん、この帝国領は鬼岩城を中心にバリヤーが張られているんだ。それで入ってくるものを迷わせるんだ。それは海上から空まで延びているんだよ」
ジャイアン「なんだかちょっと寒くなってきたな、ハ、ハ、ハクション!」
ジャイアンのクシャミからややあって、何者かが近付いてきた。
エル「あれはまさか、鬼岩城の鉄騎兵。この海域を護っている機械の兵隊だよ。1機でもかなりの戦力だ」
スネ夫「まさかさっきのクシャミで近付いたのかな」
エル「奴らは音に敏感だからね」
のび太「わあ、うようよ集まってきた」
ドラえもん「そうだ、帽子に備えていた『モグラミサイル』」
スイッチを押して、帽子からモグラ型のミサイルが発射された。
ドラえもん「サメなどの危険な海の生き物を追い払うためのものなんだけど。これであいつらの気を反らそう」
「イタゾ!」と鉄騎兵のひとりが叫ぶや、そのミサイルに向かって一斉に突き進んでいく。やがてそのミサイルに追い付きに攻撃していく。
のび太「めった打ちだ、あんなのでやられちゃひとたまりもないよ」
エル「どうやら僕らをやっつけたと思ってそのまま帰っていくのか」
「わあい、よかったあ」
ドラえもん「あんまり騒ぐとまた来るよ」
みんなが危機を回避できたことを喜ぶが、ドラえもんがたしなめる。その一方でエルが一つのことに気付く。
エル「でもこれで、鬼岩城の大まかな居所が分かったよ。そのまま去っていった方向に向かえば」
ドラえもん「今なら大丈夫、このままバギーでひとっ走りだ」
と、ドラえもんがバギーを出そうとするが、
バギー「イヤダ、アンナ怖イトコロ走ノハモウゴメンダ」
走るのを嫌がって、暴れ回るバギー。
ドラえもん「そんな、わがままは許さないぞ」
しかし相手は車、ドラえもんたちを振り払い暴れ続ける。しかししずかちゃんが前に立ちふさがる。
しずか「お願いバギーちゃん、今世界は大変なことになってるの、それを食い止めるために私たちは行かなきゃいけないの。そのためにバギーちゃん、あなたの力が必要なのよ」
しずかちゃんの説得でようやくバギーは大人しくなる。こうして一行はバギーに乗り込みゆっくりと急いで鬼岩城へと向かう。
やがて一行はいくつかの謎の物体を見つける。
のび太「何これ、巨大な十字架?」
ドラえもん「いや、これは飛行機だ、この大きさなら旅客機のしっぽだな。そうかわかったぞ、領内に入ってから奴らに襲われて墜落したんだ。魔の三角地帯の正体はこんなことだったのか」
その他にも、中世の沈没船をはじめ多くの船や飛行機の残骸群をバギーは走り抜けていく。
ドラえもん「よく見ればそこにもここにも、まるで船や飛行機の墓場だ」
やがて一行は海底の廃墟へと向かう。
のび太「数千年前の昔は、ここも大きな街だったんだね」
エル「ここがかつてのアトランチスの首都だよ。ここまでくれば鬼岩城は近いな」
しかしその片隅に沈んでいた1隻の巡視艇に気付く。
エル「待って、これはまさか、ちょっとあっちに近づいて」
と、バギーは巡視艇に近づく。エルが辺りを見渡すと、ややあって欠けたヘルメットが落ちているのを見つけた。ゆっくりとそのヘルメットを拾い上げるエル。
エル「これは、間違いない、父さんのヘルメットだ、鬼岩城のことを調べようとして、父さん・・・・・」
ヘルメットを抱きしめるエル。
のび太「エルくん・・・・・」
エル「・・・うん、行こうみんな、僕らには時間は少ない。一刻も早く鬼岩城を止めないと」
「・・・うん」
と、ややあって再び出発する。大きな岩場を経て、ついに巨大な建造物にたどり着いた。そのまがまがしい建物こそが、アトランチスの軍事施設、鬼岩城だった。
エル「あれが鬼岩城か、ついに見つけたぞ」
ドラえもん「一行も早くポセイドンを止めないとね」
スネ夫「あれ、バギーが震えてら」
ジャイアン「肝心な時に役に立たないな」
ドラえもん「まあいいや、今のうちにしまっておこう」
ということで、バギーをしまい込んでから一行は鬼岩城に乗り込んでいく。
のび太「入口はどこかな」
ドラえもん「それよりも『通り抜けフープ』、これで忍び込もう」
こうして鬼岩城内部に潜入していく。しかしその中枢。制御コンピューターのポセイドンがそれに気付く。
ポセイドン「愚かな小魚どもめ、身の程知らずにこの鬼岩城へと乗り込もうとは、このポセイドンを倒すために来たがそれも無駄なこと、いずれお前たちの滅びの時が来たのだ」
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