ONE PIECEオリジナル:エピソード・オブW7アフター(その4)
後に“海侠のジンベエ”とうたわれ、王下七武海の一人に名を連ねる彼も、35年前はまだ未熟な10歳の子供だった。
その日も修行もそこそこに郊外の岩場にたたずむジンベエの姿があった
「あ~あ、おいらもいっぱい修行したつもりだけど、ココロの姐ちゃんやタイのアニキにああまでやられちゃ凹むよなァ・・・・・」
そこに一人の人魚が近づいてくる。その金魚の人魚は小さな体でジンベエの周りを泳ぎ回り一言発する。
「あなたも、強い人のようね。それを、義しいことに使おうとしている・・・・・」
「・・・な、何だ、お前・・・・・!?」
そこにナマズの人魚が近づいてきた。
「こりゃ、おヒイ様に向かって何じゃその口の聞き方は」
「いいのですよジイ、この方の侠気を感じ入り話しかけたのです」
「ふむ、そう言われれば、おヒイ様は生まれながらのカンの高いお方。ところで少年、お主の名は?」
「・・・ジンベエ、ジンベエザメのジンベエ」
「ジンベエですね、私はオトヒメです。どうぞお見知り置きを」
「あ、うん・・・・・」
「ふむ、ともかくお家に帰りましょうおヒイ様、ここ辺りは物騒ですからなあ。それからお主も気を付けるのだぞ」
「うん・・・・・」
というわけで、ナマズの執事、後の左大臣に連れられ、オトヒメは去っていった。
その後もジンベエは修行を真面目に積んでいった。こういったところは律儀なジンベエで、周りも何かと世話を焼くのだった。
「今はおれよりも強くねェだろうが、いずれはおれに代わっておめェがこの街を取り仕切れるぜ」とタイガーが、
「強ェ強ェていっても所詮は女の身だからねェ、いざとなりゃおまえも頼れるようになるさ」とココロが、
「強くなりたいのは僕も同じさ。いずれにしてもあせることはないよ」と友人のアラディンがそれぞれジンベエを諭すのだが。
「やはり“いつか”じゃダメなんだ、本当にオイラが“強い”って認められなきゃ。でもどうしたらいいんだろう」
この日もいつもの岩場にたたずむジンベエがいた。強くなるためにいろいろ考えを巡らせていった。そのうち腕っ節だけではダメだという想いがよぎる。
「そうだ、先にココロの姐ちゃんは魚呼び寄せたんだ、ひょっとすればオイラもできるかな」
ひとまず練習をせんと声を発する。ジンベエの声は決して澄んでいるとは言えないが。子供にしては堂々としたいわゆるバリトンっぽい声色(声:一龍斎貞有さん(北斗の拳の初代バット役他)だった。
さておき何度か試したが一向に魚は寄ってこない。通常魚を呼べるのは人魚だというのが定説なのだが。そのうちいちど中断し再び考え出す。
「うーん、なかなか集まらないなあ。そうだ、姉ちゃんが魚呼んだとき、声が出てなかったな。それなら、オイラも声出さねェように呼びかけたらひょっとして・・・・・」
と、あの時のココロの見よう見まねでいろいろと声なき“声”で試していった。
一方、そのココロは帰りが遅いとの報せを受け、ジンベエを探していた。
もう一方、一人の巨漢の人魚の青年が、一人の兵士を伴って帰途についていた。
「・・・まったく、ネプチューン様も少しは王族としての自覚をなさって・・・・・!!」
「うーん、分かってるんだもん、って、これは!?」
その青年、後のリュウグウ王国国王・海神ネプチューンは慌ただしい魚の動きに何やらを感じていた。
「これは面妖な、何かが起こるというものかもん!?」
「ともかくも調べねばなりませんな」
と、王子付きの兵士、後の右大臣を伴ってネプチューンはその異変の先に向かうのだった。
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