ONE PIECEオリジナル:エピソード・オブW7アフター(その3)
海列車、シフトステーション。そこを預かるココロバーサン。そこには孫のチムニーと角界カエルのヨコヅナが暮らしていた。ことにヨコヅナはフランキーの無事を知り、もう海列車に挑むことはなくなり、今やチムニーたちのよき遊び相手となっていた。
そんなココロたちのもと、とある計画のため調査に出向いたパウリーが訪れた。
「おうパウリー、おめェ副社長が板についてるじゃねェか」
「まあなバーサン。俺も最近忙しいからな、それから、街にいちゃキウイたちがうるせェからな」
「ま、おめェも身を固めりゃおのずと引き立つってもんさね」
「軽く言うなよ、ところであの麦わらたち、お次は魚人島に行くっていうじゃねェか」
さりげなくパウリーが話題を変え、ココロもそれに応える。
「そうだねえ、あそこにゃジンベエがいるから、まあジンベエだったら、ボーヤたちの力になるだろうからねえ」
「おいバーサン、ジンベエっていやあ、七武海じゃねェか。政府側の人間、ああ魚人か、そいつが麦わらの味方になるってのか」
「七武海って言うけどね、あの子はクロコダイルやモリアみたいに私利私欲でなったわけじゃねェんだよ。ひとえに仲間のために、政府に頭下げたわけさ」
「だがよ、そのジンベエも新聞で見たが、まさに海の大親分ってところだ、なんかバーサン、子供のころから分かってるみたいじゃねえか」
「みたいじゃなくて、ガキの頃から面倒見たんだよ。ありゃ今から35年ほど前さ・・・・・」
と、ココロの回想が始まる。
35年前、魚人島・魚人空手道場
そこでは魚人や人魚たちが特有の武術・魚人空手や柔術の修行に明け暮れていた。
そんな中、魚人の子供が壁に吹っ飛ばされる。
「これココロや、子供相手に本気を出す奴がおるか」
師範にたしなめられる人魚の女性。彼女がシラウオの人魚、若き日のココロだった。
「いやね、ジンベエが本気出せって言うから。それでも手加減したつもりだけどねェ」
そして吹っ飛ばされた魚人の子供は、幼い日のジンベエだったのだ。
道場での修行を終え、なかばふて腐れたままの帰り道、街中でたたずむ若者が話しかけてきた。
「よおジンベエ、今日はいつになく不機嫌しゃねェか」
「タイの兄貴か、別になんでもねェよ」
話しかけてきたのは、後の魚人街のまとめ役、フィッシャー・タイガーだった。
「またココロにやられたのか、まったくあいつはおれですらかなわねェからな」
若い時のココロはその美貌もさることながら、その気っ風の良さで評判だった。この日の少し前、酒樽飲み比べで、彼、タイガーも打ち負かされたのだ。
「どうした、女に負けたのがそんなにくやしいのか」
「そんなんじゃねェって、おいらも強くなるため修行しようとココロ姐ちゃんに手合わせを頼んだんだ」
「で、手も足も出ねェでやられたってことか」
と、タイガーもからかい半分でジンベエの額を指ではじいた。するとジンベエは転げ飛ばされて向かいの壁に激突した。
「こおらタイガー、ケンカだったら他でやりやがれ!!せっかく塗り直したのによォ!!」
そこに一人の大男が現れる。コンゴウフグの魚人、船大工のトムだった。
「こおらトム、てめェ仕事ほったらかしてどこ油売ってた!!」
大工が飛び上がり、トムにゲンコツを喰らわせる。
「たっはっは、いやなアニキ、こいつの子守りを言いつけられてなァ」
見ればトムの肩には一人の人魚の子供が張り付いていた。
「この赤ん坊のことか、だがおめェが子守りだなんて珍しいじゃねェか」
「こいつはデン、おれの弟だ」
そのデンはトムの肩に隠れつつタイガーたちを見やる。その傍らで魚人の子供が肩で風切って歩いていた。
「魚人だったら肉を喰えェ!」と繰り返しながら。
「なんだァ、あいつは?」
「あれは近所のガキでアーロンっていうんだ」
ジンベエの言にトムが応える。その傍らで街の人々がその子供について噂話をしていた。
「やだよあの子、あのロクデナシの子供じゃないか」
「それにあの顔立ち、まるで父親そっくりだよ」
「それにあいつ、また女変えたって言うじゃないか」
もちろん、子供には聞いているふしはなく、そのまま通り過ぎていった。しかしなぜかジンベエはその噂話に何やらを感じたきらいがあった。それを見越してか、タイガーがジンベエの背中を叩き告げる。
「とにかくだ、今はこの程度だが、いずれおめェもおれよりも強くなれるぜ」
そして街の真ん中で高らかに宣言する。
「腕に覚えのある奴は、このおれにかかってこい!!強ェ奴がこの魚人街を取り仕切るんだ!!そのかわり、おれについてくる奴は、責任もって守ってやる!!!」
こうして数日を待たずして街の荒くれ者どもをまとめ上げ、フィッシャー・タイガーは魚人街のリーダー格となった。その後に強いものを求め、外界へと旅立っていくのだが。
そしてそのタイガーの様を何やら感慨深げに見やるジンベエの姿があった。
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