はしがき(改訂)と物語におけるドラえもんの歴史<本当は怖いドラえもん>
さて今回はかつて掲載した『はじめに』をいま一度改訂、再掲載するのと同時に、物語におけるドラえもんの歴史をいつも通りのヒネくれた視点ながらもお送りしたく思います。
述べるまでもなく『ドラえもん』は日本が誇る名作コミックのひとつである。
その『ドラえもん』を通じて夢を育み、今を生きる指針とした人も少なくはないだろう。
しかしその反面、オチ的に読者への戒めや教訓、しつけを描いたとんち話も80年代後半になって大半を占めている。かくいう編者もそれらのお話に感じ入りながらもどこか心に引っ掛かる感じを今まで引きずってきた。
それを今になって、編者のひねくれた視点ながら全編においての純粋な批評はもとより、後期作品の問題点を、ひいてはそれらの“教訓”や“しつけ”が本当に今の読者、ことに30代、40代のかつての子供たちに通じたのだろうかということを多少偏見を交えてではるけれど掘り下げていきたい。それからこれは一個人の趣味ということで許容をして、ご興味がございましたらご一読をしていただけたらとも思っております。
ということでまずはこの記事を今回の本題とすることにしましょう。
東京郊外の片隅に住んでいる、ちょっとさえない男の子、野比のび太
ある日彼の家の彼の部屋、机の中から丸くて青い生き物が一人の子供と一緒にやってきた。その生き物は未来の世界のネコ型の子守りロボット・ドラえもんで、一緒にやってきた子供はのび太くんの孫の孫、セワシくんだった。
そのドラえもんは、のび太くんがこれからどん底の運命をたどり、子孫のセワシくん家のビンボーな家庭にも影響を及ぼしているのだという。そこでドラえもんはのび太くんの未来の運命を変えるためにやってきたのだという。こうしてドラえもんとの生活が始まるのだった。
ドラえもんのポケットから出す数々のひみつ道具、未来の世界の科学力の結晶である「すこしふしぎ」なそれらの力を借りて様々な問題を、時には失敗をしながらも解決していったのだ。やがてそのわずかな努力が実を結び、本来はジャイアンの妹ジャイ子と結婚するはずが、あこがれの女の子しずかちゃんと結婚することとなり、それに伴い未来の運命をもよい方向へと変えることができたのだ。
しかしそのドラえもん、本来の目的を果たしたということで未来の世界に帰らなければならなくなったのだ。
帰らないでとせがむのび太くんだが、パパやママの説得で結局別れを告げることになった。それに先立って自分の力でジャイアンに勝とうと勝負を挑むのび太くん、ドラえもんが安心して帰れるようにと何度もやられても必死で喰いつくのび太くんについにジャイアンも根負けして退散していった。こうして自分の力でジャイアンに勝ったのを見届けてドラえもんは帰っていき、時々のび太くんもドラえもんのことを思い出しつつも自分の力でできることから努力をしていこうと心に決めたのだった、のだが。
ドラえもんが帰ってきて後も相変わらずジャイアンたちにいじめられる日々が続き、ヘコたれそうになったとき、ドラえもんの“置き土産”でひとまず仕返しをして退けることができ、さらには道具の効果でドラえもんも帰ってきたのだ。
引き続きドラえもんといっしょに暮らせるということで、喜んだのび太くん。しかしいつしかドラえもんに甘えっぱなしになり、何か困ったことがあれば、ひみつ道具に頼っていろいろみんなに迷惑をかけ、その結果手痛いしっぺ返しを被ることになる。それについて時にはドラえもん自身、はたまたあろうことかジャイアンまでも交じって、何かにつけてやりすぎと見なしてはこらしめのためととっちめていく。
とはいえのび太くんだってたまには自分の行いを省みることだってあるけれど、それに先だって周りの責めとそれにあわせて自分のズッコケがあまりにもキツすぎるので結局どうしてもヘコたれてしまうのだった。
これが連載開始から原作期、つまりは原作者の藤子F不二雄先生が逝去された少し前までのおおまかなお話の流れを述べたものである。
たしかにいいお話やいわゆる痛快なお話だけでなく、教訓を交えたとんち話など、山あり谷ありのお話の数々でもあることだけど、やはり原作の最後期あたりで陰を落としているのだった。
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