オリジナル大長編:のび太のからくり城(その14)
いままでのあらすじ
からくり城の中枢の間、大電皇との問答合戦に挑まれたのび太くん、いくつかの問答を問われるがいずれも不合格の評価を受ける。しかし友だちのためにあきらめないのび太くんにさしもの大電皇もたじろいてしまったかに見えた。
そんなとき、彼のタイムパトロール隊の巡視船が乱入してきたのだった。
「やあみなさん、ご無事ですか」
巡視船から現れた隊員ポン。皆があっけにとられた中、ポンが辺りを見回して一言。
「これって、江戸時代の施設だよね、でもこいつは・・・・・」
ポンが中枢の間の状況を把握しかける中、突然下から突き上げられる。
「ちょっとポン、後がつかえてるから早く降りなさい」
ポンを押し退けてリリムも降り、続いてユメヨも降りてきて船から落ちたポンを気遣う。
「大丈夫、お兄ちゃん」
「うーん、なんとかね」
「こちらはタイムパトロールです。時空の乱れをたどってこの機械が元凶と見ました。私たちが来たからにはもう好きにはさせません、観念しなさい」
リリムが誰かともなく衝撃波を繰り出すショックガンを向ける。
「あのタイムパトロールさん、実はカクガクシカジカ・・・・・」
すかさずドラミちゃんが割って入り、クチバシみたいなものを口に付けて何かを口走る。
「・・・なるほど、よく分かりました」
説明しよう、ドラミちゃんが使ったのは『カクシカくちばし』という道具で、話しかけた相手にどんな長い話でも瞬時に相手の頭に伝えることができるのだ。これはドラえもんの『テレパしい』や『ツーカーじょう』と同じだがくちばしの方が使い勝手がいいのは言うまでもない。
「なるほど、このコンピューターが原因なのね、でも、まさか」
「おお、大電皇、また暴れるというのか・・・・・」
「ああ、分からない、ワカラナイ、ニンゲンは、イッタイ・・・・・?」
警報音とともに大電皇が異常な動きを見せ始め、中枢の間も異常に揺れるのだった。
「うわっ、なにこれ、地震!?」
「は、早く逃げなきゃ」
「とにかくみなさんこの船に」
と、ユメヨが巡視船に促しつつ、みんなが船に乗り込もうとしたのだが。
「しかしよ、こんなちっちゃな船にみんな乗れるのか」
「大丈夫ですよブタゴリラさん、さあ早く乗って」
ドラミちゃんがブタゴリラを押し込んで、ようやくみんな乗り込むことができた。
「へえ、中は結構広いんだな」
「みんな乗ったようね、それじゃ外に脱出します」
放送でリリムが告げ、巡視船は異常な振動をみせる中枢の間から脱出していく。
同じ頃、地上の城下町ではお殿様の声が響き渡る。
「皆の者、間もなくこの街に大きな地震が起きる。すみやかに裏山へと逃げ込むがよい!」
実は大電皇がお殿様の声をまねて放送したものだが、ともかく街の人たちは家財を持ち寄って逃げていく。
「あれ、提灯たちが鐘つき堂の中にはいっていくよ」
「そんなことより早く逃げるだよ」
そんな親子のやり取りはさておき、村人たちは裏山へと避難していき、しばらくしてリリムたちの巡視船も地上へと脱出していくのだった。
村人の避難がほぼ完了し、巡視船も少し離れた地に降り立った時、からくり街に大きな地震が起き、巨大な逆ビラミッド、それこそあのからくり城が上空に浮かんでいたのだ。
「何と、大電皇め、これほどのからくりを」
「ま、まだ何かやるっての」
お殿様とのび太くんがからくり城を見上げる。すると城の真ん中に巨大な目が現れそこからあの大電皇の声が響く。
「もう、何もしないよ。僕はこれから空のかなた、宇宙のかなたまで昇って、もう一度人間について考え直すことにするよ。いずれは未来の世界で、君たちの子孫に出会って、答えを出せるかもしれない。
そして忘れないでほしい、人間の科学は自分たちを幸せにするか不幸にするか、やはり人間しだいということだよ。その時によりよい答えが出せれたらいいな」
と、大電皇とからくり城は天高く飛び立っていった。その様子を、のび太くんとお殿様、そしてみんなもただしばらく見上げていたのだった。
しばらくしてから我に返ったユメヨがのび太くんたちに話しかける。
「ところで今回の件は、あのコンピューター、大電皇と呼んでいましたね。それは一体どういうことですか」
「それはねユメヨ、あれこそが奇天烈斉の科学の集大成というわけよ」
そこに英一がたずねに入る。
「待って下さい。みなさんも僕らから見れば未来の人なんですね。まさか奇天烈斉さまをご存知なんですか?」
「ええ、江戸時代の発明家で、死後一旦封印された当時の研究を数百年後に公開して、今の技術に活かされたってことよ」
「それはそうだけど、今回のからくり城の事件は僕のせいかなあ」
そこにポンがカードを手に英一たちに近付いてくる。
「たしかに君がロボットを置いてきたのは事実だけど、ただの忘れ物として僕らもそのままにしたんだ。それでもあの城の件は想定外だったけどね」
ポンのカードを取ってリリムが続ける。
「歴史を変えるおそれがある時に反応するこのカードが今まで反応しなかったってことは、この事件も起きるべくして起きたってことよ。でも・・・・・」
お殿様の方に向いて、リリムがさらに続ける。
「ひとまずこの一件は大地震として処理して下さいね」
「うむ、あい分かった」
ついでユメヨが英一と鶴姫に告げる。
「聞いた話だとこのロボット、コロ助くんといいましたね、先の事件のこともありますのでこの子はもとの時代へと返した方がいいですよ」
「はい、分かりました」
「姫さま、いろいろお世話になったナリ」
「はい、コロ助ももとの時代で達者で暮らすのですよ」
そしてポンがもう一つの機械を取り出してもう一言。
「それではみなさん、名残惜しいですが・・・あれ?」
機械のスイッチを押したがまるで反応がない。そこにドラミちゃんが小声で一言、
「・・・それって、みなさんのことを忘れさせるフォゲッターですね。別段壊れてるわけじゃなく、忘れさせる必要がないってことじゃないでしょうか」
「そういえば、本部長たちが何度もお世話になったと聞いてますから」
「うん、しょうがないなあ、それじゃあ君たち、このことはくれぐれも内密にね」
「はい、分かりました」
ポンも軽く言い渡したが、のび太くんたちはそれに重くうなずくのだった。
こうして、ドラえもんや英一一行を乗せて、巡視船は飛び去っていった。それを鶴姫とお殿様はいつまでも手を振って見送っていった。
「行ってしまいましたね、父上」
「うむ、我らの子孫が彼らと再び出会うことがあればよいがね」
「あんれま、お殿様こんなところに、いち早く避難しただか」
そこに村人の一人が近づいてきて、気付いたお殿様も自分の無事を知らせつつ村の復興について話し合い始めるのであった。
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