オリジナル大長編:のび太のからくり城(その10)
いままでのあらすじ
鶴姫のひみつの館に招かれたドラえもん・キテレツ一行はそこでお風呂と宴会で英気を養い、明日の潜入作戦に備えるのだった。
「さてと、今からからくり城へと入るんだけど、やはりこの街に戻っちゃったなあ」
街中に戻ってきた一行はそれぞれ鶴姫に渡された印籠を腰に添えて大通りを歩いている。あの提灯たちは何事もないかのごとく街中を警護していた。
「まさか襲ってくるんじゃないかな」
「大丈夫ですよのび太さん、印籠が発する電波で提灯たちは制せられていますから。さあ、あれが中央の鐘楼、そこが城の入口です」
指さした鐘楼。その石段の反対側に回り込み、鶴姫が印籠をかざすと鐘楼がせり上がり大きな入口が現れた。
「それでは、参ります」
一行が入口に入り、地下の城内部へと足を踏み入れた。
「ここから先は少し長いですが、まず中枢の間で異変を調べ、各自対処いたします」
「結構長く歩くのか、やだなあ、タケコブターでひとっ飛びすればいいのに」
「いえ、不用意な動きは内部のカラクリ兵を動かすこととなりますので。前にも申しましたが城を警護している兵たちはこの印籠も効き目がありません」
「とにかく、歩くしかないよ、のび太くん」
ドラえもんにたしなめられ、しぶしぶ歩くのび太くんをはじめ、一行は中枢の間をめざし歩いていく。
「やっぱり思った通りだ。回廊にはレーザーセンサーがびっしり張り巡らされている」
「感知光ですね。ふむ、これはネズミの入る隙がありませんね」
鶴姫が懐からの神通鏡をかけ、見えない光の帯を見やる。
「大丈夫、ここはこのスモール・ビッグライトスタンドを使えば」
説明しよう。スモール・ビッグライトスタンドとは、手のひら大の蛍光スタンド状を身に着けると、小さくなったり大きくなったりする道具なのだ。
「結構いい道具だなあ、僕のは単品ばっかだから・・・・・」
ドラえもんの愚痴はともかく、一行は光の網をかいくぐりつつ、次の部屋へとたどり着く。
「さて次の間ですが、この板床の間は踏み込むところを選ばなければいけませんね」
と、神通鏡をかけた鶴姫を先頭に、みんな板床のブロックごとについていったが、何故か真ん中ののび太くんが抜け開いた床の一つから落とし穴に落ちてしまった。
「わーっ!」
「ああっ、のび太くん!」
「何と、これは絶えず抜ける板の位置が変わっている。皆、速やかに抜け出しましょう」
と、一目散に板床の間を抜け出したのだった。
「まさかのび太が落ちちゃうなんてな、ついてない奴だな」
「大丈夫かな、のび太くん」
「下の間に落ちたのだから、下りればたどり着くことでしょう。一刻も早く進まなければ」
みんなが鶴姫の言葉に頷き、さらに慎重に先を進む。
一方、落とし穴から滑り管を通ってのび太くんは、やがてはとある部屋へと転がり込んでいった。
「あいたたた、いきなり落とし穴だなんて、でもここはどこだろう」
そんな時、部屋の奥まった所から声が発せられた。
「おう、そちは何者であるか?」
その薄明かりに照らされた部屋の奥には一人のサムライ風の男と、脇には一人の子供が寝ていた。
「ソチ、え~と、ソチはのび太です」
うろたえつつも応えるのび太くんに、男は堂々とした口調で返す。
「うむ、そちもこの牢にとらわれたのであるか」
「あっ、そういえばあなたがオトノサマですか」
「いかにも、そう呼ばれているがの」
男の応えにはっと気付いたのび太くん。やがて一つのことを思い出す。
「それじゃあ、どうしてくれるの、オトノサマがいろいろやったおかげで、未来の世界はいろいろ大変なことに・・・・・」
のび太くんの抗議にオトノザマは今度こそ軽い狼狽とともに返答する。
「待たれよのび太氏(うじ)、それはわしの預かり知らぬことであるが、まさか奇天烈斉どのの発明を使用したことが、そちの言う未来の世界に迷惑災難を引き起こさんとしているとは」
「そういえばどうしてオトノサマも牢に入っているんですか。それにその子供は」
「うむ、最近大電皇の様子が変になって、ひとつ手直しをしようとしたが、いきなり落とされてこの牢にとらわれたのであるが」
「ダイデンノウ?」
「電気を使い、自分で考えるカラクリのことをいうのである。コロ助の電脳器から手がかりを得てわしと鶴姫とでこの城の管理を任せたのだが」
「この城ごとロボットなのかなあ」
「それからこの童(子供のこと)は木手の家の者での、奇天烈斉どのの世話をしていたところ、亡くなって後は当家で面倒を見ていたのであるが」
そうこうしているうちに、その子供が目を覚ます。
「う~ん、あれお殿様、この人もここに落ちちゃったの」
「うむ、この者は未来の世界から我らを救いに来たのび太氏であるぞよ」
「この子が英一さんのご先祖様か」
そのうち何かを思い出したか、その子は泣き出してしまう。
「お家へ帰りたいよう・・・・・」
そんな子供をお殿様は子供をなだめる。
「よしよし英太よ、男児がそうめそめそと泣くものではないぞよ」
「とにかく、ここを出なきゃ、まず僕につかまって・・・・・」
「あ、うん・・・・・」
「うむ、こうであるか」
二人とものび太くんにつかまり、先に渡されたライトスタンドのスイッチを押す。はたして3人とも小さくなっていく。
「これは“縮小燈”、未来の世界ではこのように小さく収まっておるというのかね」
「うん、そんなところです。それじゃあ、鶴姫さんと合流しましょう」
「うむ、あいわかったぞよ」
と、3人は牢屋を後にする。しかし牢屋の中には中に入ったものの重量を計測する計器が組み込まれていて、その重量の変動を感知し、はたしてのび太くんの脱走を割り出したのだった。
つづく
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