のび太のジゴクめぐり(その9)<ドラえもんオリジナルネタ小説>
今までのあらすじ
いよいよジゴクの奥地の雪原へとさしかかったのび太くんは、そこで大地に閉じ込められている巨人と出会い、巨人の子供アンタイオスに導かれる。
後に怪物と化した賢者ゲリオンにも導かれ、そこでツミの原因がヒトのイシによるものと教えられ、イシを持つことの大切さを諭されるのだった。
そして奥の奥、ジゴクの氷原を歩いて行くと、そこに巨大な魔像が立ちはだかっていた。
第13章:大魔王
「誰じゃ、人がせっかくいい気持ちで寝ていたのに邪魔をする奴は」
突然、その魔像が言葉を発する。その魔像こそが、ジゴクの底で眠っていた大魔王だったのだ。
「わっ、ナニナニ、まさか、大魔王さん!?」
「いかにも、わしは大魔王じゃ。おお、お前はエンマ大王が言っていた子供か。わしは昔このジゴクを支配していたが、ひょんなことで神様の天罰を受けてここに閉じ込められ、今では家来のエンマが神様の言いつけを守って管理をしておるのじゃ。見ればお前はこのジゴクから出たがっておるのじゃろう。ならばわしの身体をよじ登っていくがよい」
「ええっ、魔王さんの身体を、登るの・・・・・」
「ほれほれ、ここまで頑張ったのじゃ、今さら怖気づいてはいられないぞ、のび太くん」
「・・・・・!」
大魔王の言葉に対して、のび太くんの中に何かがはじけ飛んだ気がした。
「うん、こ、こうなったら、登ってやろうじゃない」
と、大魔王の身体をよじ登る。はじめがむしゃらに登って行ったのび太くんだったが、中腹辺りでペースが落ちはじめ、次第に動けなくなる。
「・・・も、もう、からだが、動かない・・・・・」
意識が薄れていく中、のび太くんの頭の中に、みんなの姿が浮かんでくる。しかし浮かんでくるのはみんな叱ったりからかったりしていたものだった。
「やはり、ここまでかな・・・・・」
と、大魔王もつぶやき、指先がかすかに動いたかにみえた。
しかし突然、のび太くんが再び勢いよく登り始めたではないか。このありさまに大魔王も思わず「おう、おう、おう!」と感嘆の声を上げる。
やがて大魔王の頭のてっぺんに登りきったとき、のび太くんは我に返る。
「何か頭の中が空っぽになってたけど、大魔王さんが何かやったかな?」
と軽く訝る間もなく、目の前に広がるジゴクの山々の雄大さにただただ見入ってしまうのび太くんだった。
第14章:テンゴクへ
ところが次の瞬間、大魔王の身体がすっと消えて、のび太くんはまっさかさまに落ちてしまう。
しかし落ちるのび太くんの足を立派な風格の天使がつかむ。
「よく頑張ったね、のび太くん。これでキミもゲームクリアだ」
「あれ、また天使さん、でもこの声は」
そう、この天使は大魔王の正体の大天使だったのだ。
「うむ、わたしの身体を登って、呪いが解けたということだ。さあ、ゴールのテンゴクまで行くとしよう」
こうして大天使に連れられてゴールのテンゴクへ向かったのび太くん、なぜかそこにはエンマ大王をはじめ、ムシオニやミノスにケルベロス、アクマやユウレイたちやアカオニとアオオニ、さらにはカメキチ、ダツエバ、シーナ、ゲリオン、アンタイオスやホウオウさんらが待ち構えていた。
「おめでとう、のび太くん」
「ああ、エンマさん、それにみんなどうして」
「おーい、のび太くーん」
「あれ、ドラえもん」
そこにドラえもんが現れたのだ。
「これは『冒険ゲームブック』のジゴク巡りゲームなんだ。中級向けだけど、のび太くんのためにスパルタセーフティモードで設定したんだよ、適当にしごかれつつもクリアできるようにね」
「ゲームブックなのはこれで分かったけど、いくらなんでもジゴクに落とすのはひどいじゃないか」
「まあ待ちなさいのび太くん」
「えっ、エンマさん」
抗議しようとするのび太くんにやけに人懐っこい口調で呼びかけるエンマ大王だが、やはり先の迫力を目にしたので一瞬身がすくんでしまう。
「お前さんが悪い子なのかどうかはともかく、このジゴクめぐりをお前さんは見事成し遂げた」
「まあ、俺たちも少しつついてしごいたのだけどな、このヤリはヤリトゲといって、お前さんが先に進むことをやりとげたのはこれのおかげなんだぜ」
ムシオニが代表で述べる。続いて大天使が、
「そしてわたしの身体を登りきったのは確かに君の意志だ。よく頑張ったね」
「それにこのジゴク巡りゲームは僕の仕業じゃないんだよ」
「えっ、どういうこと?」
ドラえもんの告白にのび太くんは軽く驚く。
「とにかくひとまず現代に戻ろう」
「うむ、また遊びにおいで」
「あ、はい・・・・・」
見送るエンマ大王の言葉にビビってしまいつつ、のび太くんたちはゲームブックの外へと出る。そこはセワシくんの部屋だったのだ。
「やあ、おじいちゃん、お疲れさま」
つづく
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