のび太のジゴクめぐり(その5)<ドラえもんオリジナルネタ小説>
今までのあらすじ
ジゴクの番犬ケルベロスに追い立てられ、岩ジゴクの試練を越え、アオオニの渡しで自らのイカリに少し反省したのび太くん。たどり着いたのはさらなるジゴクへと進むアクマの門だったのだ。
第8章:アクマの門
のび太くんたちは巨大なアクマの門にたどり着いた。そこは最初のジゴクの門より一回り大きな門だった。その門を見やってのび太くんは、
しかし門の上から無数のアクマたちが姿を現した。
「何だお前、まだ生きているニンゲンか」
「ここはお前のような奴が来るところじゃないぞ」
「目ざわりだ、帰れ帰れ」
アクマたちは口々にのび太くんをののしり始める。
「こ、この門を入らなきゃいけないのかな」
「当たり前でしょ、でもこれじゃあ、どうにもならないわねえ、ってあれは」
突然天空から天使が舞い降りてきた。
「ランボウはやめなさい、このジゴクでうごめくモノたちよ」
天使が発するヒカリで多くのアクマたちは退散してしまった。さしものミノスものび太くんの後ろにちぢこまってしまう。
「うむ、キミがこのジゴクの底を目指しているのか。もうすぐ門は開くだろう、おそれずに行きたまえ。ジゴクの底にはあの方がおられる」
天使が言うや、ジゴクの門が開く。
「さあ、行きたまえ」
と天使が発した光によってか、のび太くんは門へと入り、その直後、門は閉まっていく。それを心配そうに見守るムシオニ立ちだったが、
「うむ、キミたちの見送りはここまでだ、それは分かっているね」
「はーい」
と天使の言葉にムシオニたちは応える。しかし門を見やって一言。
「しかし大丈夫かなあ、やっぱり頼りなさそうだからなあ」
第9章:釜ゆでジゴク
アクマの門に入り、一人暗い小道を歩くのび太くん。それを抜けると、暗い川のほとりに、小さな子どものユウレイが小石を積み上げていた。その隣には大きな鍋と、一人の老婆が庖丁を研いでいた。
「ああ、よく来たねえ。お前さんが来るのを待っておったよ、わしはこの辺りを取り仕切っているダツエバというおババじゃよ」
「わっ。ええと、ここはどんなジゴク、それにこの子たちは」
「ここはサイの河原じゃ。幼くして命を落とした子供たちがこうして石を積み上げているのじゃよ」
見れば子供たちの積み上げた石の山は、ときどき地面に沈み込みつつも子供たちによってさら積み上がっていく。
「でも、この子たちはどんなワルいことを・・・・・」
「幼くして命を落とすということは、ある意味親不孝なことなのじゃよ。だから今度生まれてくるときに、強い心と体、それに意志を持つようにこうして石を積み上げているのじゃよ。これも修行ということじゃ」
のび太くんの問いにダツエバは神妙に応える。
「修行かあ・・・・・」
このジゴクで苦労している子供たちを想い、のび太くんの心は重い。
「そんなことよりも、まずはお前さんのことじゃ。ここから先は重い空気で身動きが取れない。そこでお前さんの心を軽くせねばならぬ」
と指差した先には大きな釜が煮え立っていた。
「・・・ま、まさか、この釜に入れってこと・・・・・」
と問うや、周りのユウレイが服をはぎ取ってから、のび太くんを釜の中にぶち込んでいく。
「ア、アツ、アヅ、アツイ、アヅイ・・・・・!!」
「ほれほれ、これも修行じゃよ、のび太くん」
と、釜から出ようとするのび太くんをダツエバは杖の先で指先を刺す。
「あいた!」
指先を刺されたのび太くんは、しばらくして大人しく湯につかっていく。それでも熱さに耐えかねて出ようとするたび、ダツエバが杖先で刺す。
やがてほどよくゆで上がったのび太くんはうつぶせで釜から揚げられた。
「いいゆで具合じゃな、もうよかろう。お前たち、服は洗い上がったかい」
ダツエバの呼びかけでユウレイたちはみるみるのび太くんに服を着せていく。
「なんか頭がカルくなったみたい・・・・・」
「これでこのカマユデ地獄はクリアじゃさて、次のジゴクまでは・・・・・」
と、ダツエバが言うが早いかのび太くんはフラフラと針の山に歩いて行く。しかし・・・・、
「イ、イタ、イダ、イタイ、イダイ・・・・・!!」
靴を履いているにもかかわらず、針山の針に痛がりつつ奥へとピョンピョンと進んでいく。
「あれま、あの子針山ジゴクに進んじゃっているよ。あれは思いやりのない奴が落ちるジゴクだってのに、まあ、あの子も改めて思いやりに気づけばいいけどねえ。それから近道にもなるし」
と、呆れつつもダツエバはつぶやく。
つづく
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