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禍福のアンバランス<本当は怖いドラえもん>

「人間死ぬ時はプラスマイナスゼロいうけど、僕そこまでいくには、180(歳)まで生きなあかんねん(うろ覚え)」
Mr.オクレ(コメディアン・吉本興業)

この言葉は何もオクレさんのみの事情ではなく、多くの人間にも当てはまるだろう。もちろん裏を返せば幸福に至るにはたくさんの努力が必要でもあることは子供でも理解できる。
それでも幸せになれないのは「努力が足りない」「努力の仕方が間違っている」あるいは「幸福の目標が高すぎる」といった具合で。
さてドラえもんのお話の場合は、安易に幸福を求めようとして、かえって手痛いしっぺ返しを喰らうのはまだ分かる。問題なのは努力をしようとしてもさらに困難が積み重なるという事情である。もっともこれも程度の問題だけどあえてそれは問わない。
前置きはそこまでで、今回はその禍福のバランスについて述べたい。
まず結論として、やはり不運や災難、すなわち禍の方が量的に多いのが自然なのだろう。
さらに素直に鑑みるならば、いくら不幸だと嘆いても、かまってくれている分だけマシだということ、まあそれはそれとして。

『バランス注射』(意訳)
その日も転んだりおカネを落としたりとツイてないのび太くん。
そこでドラえもんは『バランス注射』なる道具で今までの不運を幸運に置き換えようとした。
はたしてある程度幸運が舞い降りたのだが「あまり幸運が過ぎると次は不運がまた降りかかる」というドラえもんの忠告にのび太くんはかえって不安になってしまったそうな。

『サカユメン』
その日も何かと災難だらけの一日だったのび太くん。せめて夢の中ではということでドラえもんも『サカユメン』という薬を出してやる。
これはその日起こった出来事に応じ、それとは真逆の夢を見るというものである。
はたしてその夜は結構ないい夢を見たのだが、翌朝もっといい夢を見ようとさらに薬を多めに飲んでしまう。
しかしその日は幸運な出来事ばかりに見舞われてしまい、その夜は余計に悪夢に苦しむ羽目になったそうな。
~これらのお話は「禍福はあざなえる縄のごとし」という先回の『サイオー馬』のお話にも述べられていた事項なのだけれども、まず後者、このお話は「癒しもいいけれど過ぎればかえってダメになる」という作者の藤子F先生の意見を反映させたもので、これも前述の『いたわりロボット』の巻にも述べている。
さておきお次の前者『バランスちゅうしゃ』にては受けた禍福を「回数」でまとめたもので、やはり「程度」についても融通になるだろうけれどここはあえて考察をしたい。
例えば災難でケガをして、その治療等でいろいろな不都合を被り、その埋め合わせのために、各種の保険などのように莫大なおカネや労力を費やさなければならないこともある。
あと災難に耐えるというのも、大震災やら第二次大戦後の復興等を例示するまでもないが、結局はその人々の心がけ次第だと思う。

あと一つ、災難に絡んだお話について述べるならば、当然ながらほとんどのお話における禍福がF先生の胸先三寸で決まることを指摘したい。そこでこのお話をば。

『不運はのび太のツヨーイ味方!?(空中シューズ)』
その日も何かと災難に陥ったのび太くん。しかしドラえもんは「もっとしっかりしていれば」とはじめ取り合わなかったが、途端のズッコケに根負けしたのか、結局『空中シューズ』を出してやることにする。
それで気をよくしてあちらこちらを飛び回っていたところを、ドラえもんはお仕置きとばかりに『連発型不運光線銃』を発射する。
はたして回りの物に当たったりと散々な目にあい、満身創痍ののび太くんにここぞとばかりに説教をはじめるドラえもん。対するのび太くんも釈然としない中、聞き入るしかなかったそうな。
~とまあ最後ドラえもんの胸先三寸でいらぬ災難に遭い、さらには説教を受けるという。
これが一番極端な例示だろうし、そうそうヒネくれなくても、やはり話の進め方が卑怯だと感じてしまうのだが。
はじめドラえもんを引き止めるにわざわざ扉脇の壁にぶつけさせたり、それからあげくのあの銃である。いくらギャグやら教訓やらと断っても、ここまでくれば流石にイジワルとも受け止められるだろう。
確かにこれが掲載された頃、80年代半ばは、全てがこういった具合ではないとはいえ、お話の中での諸問題の責任や、言ってしまえば業までものび太くんに押し付けた感がある。ともかくこういった具合でこの時期は確かに心には留まるがどこか釈然としないお話が続いてしまった感がある。
そこにもう一つの深刻な問題が起こってしまったわけで。

これについては明日、旧作の再掲となるけれど。

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