お盆企画・エスパー魔美inミノタウロスの皿
注:本記事はお子様には不適切な表現及び少し残酷な表現が含まれております。
さておき今回は、夏休み企画ということで、藤子F先生の名作のひとつ『エスパー魔美』と同じくSF短編の傑作『ミノタウロスの皿』のコラボパロディ小説をお送りいたします。それでは、ごゆっくり。
ある日、いつものように絵のモデルのバイトをしていると、いつの間にやら眠ってしまう。しかし目が覚めるとそこは暗い空間で、マミはそこで浮かんでいた。
「あれ、ここ、どこだろう。まさか、夢の中・・・いけない、早く起きないとパパに怒られちゃう」
何とか夢から覚めようとするも、どうすればいいか分からず、とりあえずは飛ぶことは出来るので(実際飛んでいるかはよく分からないが)辺りを飛び回ることにする。今自分は裸であるのだが、それは気には止められない。
そうこうとしているうちに、何やら白い円盤状の物体を発見しそこへと向かうことにする。
だんだんと近付いていくとそこには人影らしき物体がいた。その中の真ん中の人影がこちらに気付いたらしく招かれるままにマミも急いで飛んでいく。
その円盤は直径5丈、純白磁の大皿であった。
人影は黒と白の牡牛、そして古代ギリシャ風の端正な顔立ちと均整の取れた肢体の女性で、やはり何も着ていなかった。
その皿にマミは降り立つ。それを女性が迎える。
「ようこそ、ミノタウロスの皿へ、私はこの皿の守り人のミノア」
「えっ、ミノタウロスの、ミノア?」
マミの疑問に黒い牛が応える。
「ここは君のいる世界とは異なる空間だ。君の精神はここで実体化したのだ」
黒い牛に続き今度は白い牛が話しかけてくる。
「そ、だからココはただの夢じゃナイんだモォ~」
「そ、そんな、それじゃ、私、いったいどうすれば?」
「まあ、いずれにしてもそんなにあせることナイんだモォ~。それはそうと・・・・・」
白い牛はふとミノアの方を向く。
「そろそろおなか減ってきたんだモオ~」
「ええ、わかりました・・・・・」
と、ミノアは右手を左の二の腕にかけたかと思えば、何とミノアの左腕が肩の付け根からポロっと取れたではないか。しかも鋭利な刃物で斬ったかのごとく切り口は平ら、しかも血は1滴も流れていなかった。
ミノアはその左腕を白い牛に差し出す。白い牛はそれを丸ごと貪り食った。つづいて黒い牛もミノアにすり寄る。
「どうやらわたしも腹が減ったようだ」
「はいはい」
今度は右足を外して黒い牛に与える。マミはそれを呆然と眺めているしかなかった。
求められるままに牛たちに自らの身体を食わせるミノアの姿に、ただ呆然と見守るだけのマミに、ミノアは語りかける。
「驚くのも無理はありません。この皿にて彼らの糧となることが、私に与えられた宿命なのです」
ミノアの言をいまいちつかみかける中、白い牛がマミに話しかける。
「ああ、そういえば君は元の世界に戻りたがっていたネ~、それならミノアに頼めばいいんだモオ~」
言われるままマミはミノアに近づく。左腕と右足がないままにミノアは片足で立っていた。
「あの、ミノアさん・・・・・」
「ええ、分かっておりますよ。それならばこれを食してください・・・・・」
と、ミノアは自分の左胸を取り外しマミに与えた。マミは少しの躊躇の末おもむろにその胸にかじりつく。
すると、マミの目からはとめどなく涙が流れるではないか。しかしマミは涙を流しながらその胸を喰らい続けた。
やがてすべて喰らいつくしたあと、一息ついたマミはミノアの方に向き直る。しかしなんと、ミノアの左腕、右足、そして左胸までもが再生しているではないか。しかしマミはそれには意に介さずにミノアたちに話しかける。
「たいへんに美味しく頂かせてもらいました。おかげで心なし体が軽くなったようで、もうすぐ元に帰れそうです」
ミノアたちを軽く一瞥したあと、さらに続ける。
「それからみなさんももとに戻ったほうがいいですよ、黒柳さんに河内さんにスネ夫さん」
「なんやて!」
「スネ夫言うなぁ!」
一瞬ミノアは顔だけ河内に、白い牛は頭だけスネ夫、否、クチバシだけスネ夫のピエロに戻る。そう、彼ら3人(1人と2頭)は『焼きたて!!ジャぱん』の黒柳、ピエロ、そして河内だったのだ。しかし黒い牛こと黒柳はもとに戻らずやや落ち着いた口調で話す。
「しかしよく我々のことを分かったな、マミくん」
「はい、以前食べたパンタジアのミルクパンと同じでしたから」
ちなみにミルクパンは河内の得意パンだとか。
「まあ、もとに戻ったらまた会うこともあろう。そのときはパンタジアのパンをよろしく」
「あ、はい、こちらこそ」
と言って、マミの身体はミノアの河内たちから離れていった。
気が付けばそこはパパのアトリエだった。
「・・・うん、ようやく戻れたのね」
と、パパの方を向く。しかしパパも絵筆片手にうたた寝をしていて、ちょうど目覚めたところだった。
「・・・あれ、いつのまに眠りこけたかな」
「あれ、パパも寝てたの」
「うん、ところでマミ公、目にゴミでも入ったのかい」
「え、あれ・・・・・」
たしかにマミの頬には涙の跡がはしっていた。やはりあれはただの夢ではなかったのだ。
後日、マミは友達に誘われるままにパンタジアへと向かう。そこでは忙しそうにパンを並べている木下と、傍らで打ち合わせをしているピエロとあのミノアの河内がいた。
改めてこの二人にマミは驚愕とともに口を開く。
「あ~っ、まだ戻っていないんですか、河内さんにスネ夫さん」
その言葉に二人も反応する。
「なんやて!」
「スネ夫って言うなあ!」
まあ実際は元に戻っていないのは河内だけだったが。
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