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インチキ科学と呼ばないで~よい子のクローン講座<本当は怖いドラえもん>

今回はドラえもんにおけるクローンが絡むお話について述べたい。
さて一概にクローンといえば「細胞の欠片から培養してその生物の個体を複製する」というのが定説だったけれと。
もちろんそれについて賛否両論があるけれど、ドラえもんのお話、すなわち未来の世界にてもまあ結構実用的になっているのかと読めてしまう。

それでもその弊害についてもお話の中で描かれているけれど。
ともかくまずはこのお話から。

『ジャイアンよい子だねんねしな』
その日もジャイアンたちにいじめられたのび太くん。そこに偶然未来の世界から送られたクローン製造機にて、手に入れた髪の毛からジャイアンとスネ夫のクローンをドラえもんに内緒で作ったのだが・・・・・。

~まず冒頭ドラえもんが「きみがもっとしっかりと・・・・・」というくだりを述べたけど、それについてまず意見をば、
のび太くんがもっとしっかりしていればいじめられずに済んだか、といえばそれも違うだろう。
結論からいえば、肉食獣が草食獣の気持ちなど分かろうはずがない、ということ。
まあそれらが高じて「いじめられるのはのび太くんが悪いにチガイナイ」という風潮になってしまい、ある意味悪循環に陥ったことになっただろう。
それはさておきこのお話は、いっつもジャイアンたちにいじめられているので、せめてクローンのジャイアンと仲良くしよう。というと聞こえはいいが、とどのつまり現実のジャイアンの代わりにクローンたちを自分に服従させようと(あるいは飼い慣らせようと)したことがマズかった。
結局はクローンたちもオリジナルと同じくのび太くんを蔑むようになり、目論みは失敗してしまった。
これは「自分の思い通りに他人をどうこうとは扱えない」ということで、同じく藤子F先生の作品で『恋人製造法』の中でも、クローン装置を提供した宇宙人から「クローンにも人権があるのだぞ」と主人公を諭したものだ。
それから読み解くに「結局ジャイアンもスネ夫も友達なのだから自分の都合で扱ってはいけない。その2人の人格も尊重しすれば・・・・・」ということに尽きるのだが、それでも説得力が薄いと感じるのは編者だけだろうか?

さてもう一つ、初期のお話にても後のクローンにつながるだろう生命創造にまつわるお話がある。

『人間製造機』
ある日、偶然未来から送られた人間製造機を使い、人体の構成要素となる物質の材料を集めて実際に人間の赤ちゃんを作ってみようとするのだが。それは異様な能力を持つ、ミュータントの赤ん坊を製造する機械で、その危険性をドラえもんに聞かされたのび太くん。その間に件の赤ん坊は生まれてしまったのだが・・・・・。

~このお話が掲載された当時はクローンの概念はまだ知られていなかったのか、まあ人体を構成するたんぱく質等の物質を集めれば人間等の生物を創造できると考えられていたのだろう。
まあ一般的に現在の科学水準でも微生物1個すら創造しえなく、かろうじて既存の細胞から培養し1個の生物を創造、すなわち複製するのが関の山ということで。
さておきその人間製造機は、F先生なりに来るべき科学技術におけるクローン(人工生命)技術の可能性と危険性を、ミュータントの赤ん坊という形で述べたかったのだろうと読める。

まあ結局は人類に対する警鐘ということで、それでいて(この場合は)読者の子供たちへの警告レベルでのメッセージを送ったことだろう。
それは、どちらも最後、何らかの方法で生体からマテリアル(材料)に戻った。すなわち初めからなかったことになったというわけで。結論として科学技術(この場合クローン技術)も間違った使い方でトンデモナイ結果になってしまいますよ。と、先生は言いたかったのだろう。

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